Pepper、サイネージ、ホームページの連携
AW-Inc.社は現在、やましたクリニックに導入したPepperとサイネージの開発、ホームページ制作を請け負っています。AW-Inc.社の事務所は横浜市にあるため、愛知県にあるやましたクリニックのロボットの状況監視やメンテナンスはリモートが中心になっています。更に、今後は顔認証機能もこのPepperに導入する予定です。
運用や今後の開発の方向性などをAW-Inc.社の代表取締役 灘吉氏に聞きました。
編集部
やましたクリニックに導入したPepper、サイネージ、ホームページはAW-Inc.社が開発されていると聞きました。「Smart at robo」を使用しているメリットはどんな点でしょうか?
灘吉(敬称略)
「Smart at robo」はプログラミング技術がなくても利用できることが特徴です。プレゼンテーションなどのコンテンツだけ欲しいという場合は、Smart at roboを導入するだけでクライアント様でも自分で作ることができると思います。
私達のような開発会社が「Smart at robo」を使う理由は、コンテンツが作りやすくて、クライアントの要望に添った開発が短納期でできるからです。フルスクラッチで開発するのと比較すれば、1/3倍くらいの時間でできてしまいます。作業時間が短ければ、それだけ費用も安く提供できるのでクライアント様にもメリットがあります。今回のPepperのゲーム画面なども「Adobe Illustrator」で描いたものを画像データとして保存して、Smart at roboに転送するだけでできてしまうのでとても簡単です。他のシステムと連動したPepperのアプリは、私たちのようなシステム会社が独自に開発していくことになります。
編集部
現時点でやましたクリニックに導入したPepperは、子供用ゲームや歌、小咄や健康情報などを提供しているようですが、コンテンツデータはどこに保存されているんですか?
灘吉
Smart at roboはサイボウズのkintone(キントーン)のデータベースに対応しているので、コンテンツのデータはクラウドシステムのデータベースに保存され、システムもクラウドで動作しています。Pepper単体では持てる情報量も少なく、CPUの能力の課題もありますが、クラウドであれば情報はたくさん持てるし、データベースも使えて、CPUパワー不足の処理速度の問題もないというメリットがあります。
編集部
大型サイネージとPepperの連携を開発されているとか
灘吉
はい。Smart at roboが大型サイネージに対応したので、サイネージとウェブページで待ち時間を表示するように開発中です。サイネージには今後は医療関連の情報を提供することも検討中です。「認知症とはどういうものか」「頭痛のしくみ」など、診察の待ち時間を利用してPepperがサイネージと連携して解説するコンテンツです。
編集部
来院者がどれだけPepperと話したり、触れあったり、Pepper側でもそれらの情報としてログなども収集可能ですか?
灘吉
はい。Pepperは何歳くらいの男性/女性、笑っている/起こっているなどの表情のデータをとっていて、ログとしてデータベースに蓄積しています。ただ現時点ではそのログを次に活用する段階まではできていません。
編集部
Pepperの状態監視やメンテナンスは横浜からリモートで行っているそうですね
灘吉
はい。無線LANを含めて通信さえ確保できていれば、リモート操作でPepperの内部の状態はほぼ解ります。メンテナンスやリブートもできますし、Pepperを取り巻く状況についてはPepperの周囲に広角カメラを設置させていただき、その映像で確認できます。
顔認証に対応し、VRとの連携も可能に
編集部
Smart at roboがグローリー社の顔認証機能に対応しました。早速この機能を活用するとのことですが、どのような用途になりますか
灘吉
顔認証機能は対応がはじまったばかりなので当社でもまだ試験運用の段階ですが、来院した際にPepperが顔写真を撮ってお名前とともにクラウドに登録する機能です。次回来院した際に顔を認識してPepperが名前を呼んでくれるようにすれば、患者さんにより親近感を持って頂けると思います。また、将来「お腹が痛いのは治った?」など、前回来てくれたときのことを覚えていてくれたら嬉しいですよね。
編集部
現時点ではどのあたりに課題がありますか?
灘吉
Pepperの身長の関係で、実は子どもとのやりとりが意外と難しい面があります。例えば、Pepperの内蔵マイクは頭頂部にあるので大人の声は聞き取りやすいのですが、子どもの声は下から聞こえる格好になるので聞き取りにくいのです。また、カメラは額に内蔵されていますが、子どもの顔は低い位置にあるのでPepperの顔の向きの可動範囲の関係で顔認証の際にカメラの画角に入りにくいという課題もあります。これらはM-SOLUTIONSさんと対応を検討しています。
編集部
要望に対してはそれらの対応をしてもらえるものなんですか
灘吉
はい。私達の要望を取り入れてくれて、改良した点をSmart at roboの標準機能への追加等で素早く対応してくれますのでとても助かっています。
編集部
ほかに今後、この診察室に導入したPepperがどのようなことができるようにしたいと良いと考えていますか?
灘吉
今後の目標としては、クリニックが受け持っておられますお子様の集団予防接種や学校や幼稚園での健康診断の際に、Pepperを助手としてイベント的に活躍してもらおうという案も出ています。たくさんの子どもたちの待ち時間に手洗いやうがいの啓蒙を面白おかしくしたり、予防接種の注意点を話したりすると、お子様たちも楽しく聞けるのではないでしょうか。また、今後はSmart at roboがロボット遠隔操作システム「VRcon for Pepper」(アスラテック社)と連携可能になったので、それを活用してPepperと子供たちが自然に会話できたり、風邪やインフルエンザの予防を啓蒙できる可能性もあるかなと、と思っています。
また、先生とは診察時間の効率化のためにPepperを活用できないかとも話し合っています。診察中に患者さんに必ず説明していることを予め待合室や診察室でPepperが先生に代わって解説すれば、それによって待ち時間を減らしたり、一日に診察できる患者さんの数が増やせるのではないかと考えています。
更には、来院した方がPepperとスタッフの一体感を感じられたら面白いのではないか、とも感じています。例えば、受付にPepperに接続したマイクを置いておいて、「××さ〜ん」と呼んだらPepperも一緒になって呼んだり、「お大事に」とスタッフが言うと、合わせてPepperが「おだいじに〜」と声を掛けるなどです。
医療分野で拡がるPepper活用。
取材した日も、やましたクリニックでは活用アイディアがたくさんあがっていました。
ロボスタでは引き続き、今後の展開に注目していきたいと思います。
※この記事の内容はソフトバンクロボティクスのPepperを活用して、開発会社やクリニックで独自に実施しているものです。
※kintoneはサイボウズ株式会社の商標登録または商標です。
※VRconは、アスラテック社の遠隔操作技術を利用したサービスです。
※顔認証機能は、グローリー社の顔認証技術を利用したサービスです。