Pepperが問診して緊急性を判断する「ロボット連携問診システム」の導入がはじまる
ここは耳鼻咽喉科クリニックの待合室。
子供がPepperを見つけると真っ先に近付きます。Pepperも子供が来たことを検知し、問診スタートの画面を表示します。
「僕は問診Pepperです。がんばって応えてください♪」
問診システムの使い方をスタッフが説明する必要もありません。
Pepperのタブレットに表示される質問に多くの子供達はひとりでタッチして応え、最後まで問診を進めることができます。
タブレットには難しい言葉で質問が書かれていたとしても、Pepperは子供が理解できるように平坦な言葉で問いかけます。
予約システムと連携していて、問診が終わるとそのまま予約票が発行され、子供たちは楽しそうにそれを切り取って待合室の椅子で待っている親の隣に座りました。
2016年9月12日、神奈川県藤沢市の「あいあい耳鼻咽喉科医院」はPepperによる「ロボット連携問診システム」を実証実験のために導入したことを発表しました。
「ロボット連携問診システム」は株式会社シャンティが開発したもので、診察を受ける前に記入する問診票を電子化しました。Pepperが問診を行い、結果は自動で予約システムと電子カルテに通知されます。また、緊急性が高かったり、感染する恐れが強いと判断した場合は、ポップアップ画面などでスタッフや医師に注意喚起が行われます。
- Pepperが解りやすく質問して、患者は気軽に回答にすることができる
- 問診票の回答によって以降の質問内容を変えることができるので、より詳しく具体的な内容で問診することができる
- 緊急性のある回答があった場合、受付のスタッフや医師の電子デバイスやパソコンに通知できる(トリアージ)
- 院内感染の恐れのある症状を早期に発見して対応できる(院内感染の抑止)
- 問診の段階で見落としがちな症状を検知して注意喚起
過去の症例や専門医療情報、論文や知見など、独自の医療データベースと連携して問診に反映しています。人工知能(AI)による推論技術も開発中で、最新の医療情報や近隣の幼稚園や保育園などで最近頻発している症例を自律学習するなどにより、トリアージの精度を一気に向上させる予定です(来年実装の予定)。
医療現場でコミュニケーションロボットは何ができるか
ロボットを導入したきっかけを、院長の稲垣幹矢氏に聞きました。
「導入のきっかけは”医療現場でコミュニケーションロボットがどれだけできるのか見てみたい”という気持ちからです。やってみたらPepperは予想よりしっかりしていて、いろいろなポテンシャルを持っていると感じました。もちろん現状ではまだまだできることは少ないですが、段階を踏んで精度を高めていけば、ロボットが医療現場に当たり前に入っている時代がすぐにやって来るかもしれないと思っています」
更に、問診をPepperが担当することについては「問診は診察に必要な情報を収集する最初に行う大切な仕事です。言い換えれば診断のはじめの一歩のところ。それをロボットが担当することには大きな意味があると思います」と語っています。
これまで医療分野ではPepperの導入事例は少なく、あっても会話やクイズなどを行うことで、待合の体感時間を短くするといったレクリエーション用途での使われ方が多かったのですが、今回の実証実験では問診のような診察の一部にロボットが導入されることになります。コミュニケーションロボットは医療現場で何ができるのか。引き続き注目していきたい。
株式会社シャンティ