アマゾン、グーグル、Facebook、IBM、MicrosoftがAI研究の組織「Partnership on AI」を設立! 各社のAI技術をまとめてみた

Amazon、Google、ディープマインド(Google)、Facebook、IBM、Microsoftは、日本時間の本日、将来のAI研究と開発のための非営利団体「Partnership on AI」を設立したことを発表した。

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既に公式ホームページがオープンしていて、トップページには「Partnership on Artificial Intelligence to Benefit People and Society」という文字が掲げられ、「Partnership on AI」の最新情報を閲覧することができる。

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Partnership on AI

ホームページによれば、組織のゴールは「AI研究におけるベストプラクティスのサポート」「AI研究のオープンなプラットフォームの構築」「AIの理解を深めること」の3点としている。

AI技術が人と社会のために公正に利用されることを目指し、AI研究のための技術、手法、プロセス、活動などを効率的に進める方法(ベストプラクティス)の研究、そしてその研究内容はオープンに公開していくこと等をあげている。

また、エンジニアだけでなく、学者やAI研究者、ユーザーグループなどからの参加も促し、アメリカ人工知能学会(AAAI)やアレン人工知能研究所(AI2)などの非営利の研究グループともAIに関する話し合っていく予定だ。

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各企業からの参加メンバーも豪華だ。Facebookからは、Deep Learningの専門家でありFacebook AI Research Labのダイレクター、Yann LeCun氏が参加(代表メンバーはホームページで確認することができる)

またホームページによれば、「現在のAI技術は、医療、教育、製造、ホーム・オートメーション、運輸等の業界など、生活の多くを改善し、変革する大きな可能性を持っている。「Partnership on AI」の設立メンバーは研究、ベストプラクティスの開発、透明性の他水オープンな対話や議論を通じ、この可能性を最大限に引き出し、多くの人々に価値をもたらすAIへと発展させたい」としている。




IT業界のトッププレイヤー各社が持つAI技術は?

この豪華な顔ぶれから、AI界の「銀河系軍団」や「アベンジャーズ」などと呼ぶ人もいる。創立メンバー各社はエンタープライズ分野にも特化した技術やサービスを持つトッププレイヤーが名を連らねた印象だ。更に、AI技術の研究センターを持ち、その部門からキーマンが参加している。

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AI技術はいろいろな分野で実用化がはじまっていて、今回の設立メンバーの取り組みも様々だ。市場では競合している分野も多い。簡単ではあるが、それをおさらいしてみた。



ホーム・アプライアンス

Amazonは海外で大ヒットしている「Amazon Echo」で会話ができるホーム・アプライアンスの市場を切り開いた(既存の製品分野に当てはめるとすればAIで会話ができるスピーカーだ)。これにはAIアシスタントが重要なキーになる。これに対抗する格好でGoogleは「Google Home」を発表した。


AIアシスタント

自然言語で会話ができるAIアシスタントはスマートフォンではアップルの「Siri」やGoogleの「OK!Google」(Googleアシスタント)でお馴染みだ。この精度を上げるのにAI技術を導入している。AmazonはEchoに「Alexa」(ウェブでも公開中)、MicrosoftはWindows10などに搭載している「Cortana」、IBMはIBM Watson等で活用している。日本語会話の認識技術としては適切なコーパスで学習したIBM Watsonの精度も評価が高い。



機械学習

AI活用による功績はディープラーニングなどの導入で機械学習分野においてめざましい。今回の発表で名を連ねているGoogleのディープマインドは、囲碁で人間と勝負した「Alpha Go」を開発した企業だ。あの衝撃は記憶に新しい。Alpha Goにはディープラーニングや強化学習が使われている。
Googleはディープラーニングのライブラリ「TensorFlow」(テンソルフロー)をリリースしたり、無人の自動運転車に利用する技術を含めて、AI研究では一歩リードしている印象だ。ただ、機械学習は現在のAI関連のキーポイントになる要素技術であり原動力になっているので、IBMやMicrosoft、Facebookらすべての企業が注力している。


画像認識

画像認識分野はディープラーニングの成果が最も顕著に表れている分野だ。FacebookやGoogleは投稿された写真に誰が、何が写っているのかを瞬時に解析しようとしている。画像認識コンテストにおいてディープラーニング技術を使ったチームの台頭がここ数年続いて注目させているが、Google、バイドゥ、Microsoftが熾烈な争いをしている。Microsoftの「ResNet」はGoogleを破ってチャンピオンに輝いた実績がある。画像認識率においては既に人間の能力を超えているとも言われている。


テキスト解析とAIチャットボット

Facebookはディープラーニングを使ったテキスト解析エンジン「DeepText」を開発中だ。また、Facebookはチャットボットに注力することを発表していて、「Facebook M」は精度向上を目指している。チャットボットに関しては同様にGoogleはAI搭載メッセージアプリ「Allo」を発表、日本ではお馴染みの「りんな」開発のMicrosoftも余念がない。
ビジネスでの実用化の面でリードしているのはIBM Watsonかもしれない。IBM Watsonは自然言語で書かれたテキストを解析して処理することはもちろん、メールやメッセージから感情や性格をも分析する能力も持ちはじめている。



コグニティブコンピューティング

IBMのWatsonはクイズ王を破って有名になったコグニティブコンピューティングだ。自然言語で人間のクイズ王と渡り合ったのだから、インパクトは大きかった。現在、医療分野やコールセンターへの導入が始まっている。Microsoftは「Azure」(アジュール)で同じくコグニティブコンピューティングを推進し、IBM Watsonを猛追する構えだ。どちらの企業もビジネスエンタープライズ系のサービスを基盤として持っている。


レコメンドエンジン

商品をいろいろ勧めてくるレコメンドエンジンは時にうるさく感じるが、AIによって適切なものへと進化しようとする試みが繰り返されている。Amazonのレコメンドエンジンはオンラインショップでは大きな成果を上げたことは承知のとおりだが、GoogleやFacebook、Microsoftはチャットしているときでも適切な商品やサービスをAIが提案できる技術を開発している。MicrosoftはAzureでもレコメンドエンジンを利用できる。

今回の設立は、これらの技術を持つIT企業のビッグネームが創立メンバーとして組んだことになるが、人工知能研究はトヨタ自動車やテスラなどの自動車業界でも盛んに行われている。もちろん、家電業界なども熱心で、IT業界以外からの参加動向も気になるところだ。この組織が今後のAI研究を大きく牽引していくとも思えないが、今後の動きには注目していきたい。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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