北里大学病院でPepperによる「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」の実証実験を実施! 医学的な視点で捉えた体操指導ロボットとしては初

11月24日、北里大学病院(神奈川県相模原市)の本館1階けやきサロンにおいて、「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」の実証実験が行われました。

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「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」は歩行や移動に障害をきたす「ロコモティブ症候群」を問診により発見したり、予防体操の促進を行う

中心となってこの実証実験を実施したのは、北里大学 医療衛生学部教授で、整形外科医でもある高平尚伸教授と、システム開発会社の株式会社シャンティ。
高平教授は「ロコモティブシンドローム」(略称:ロコモ)の権威で、シャンティはPepperを活用した「ロボット連携問診システム」等、ロボットを活用した医療ICT開発で実績があります。

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実証実験を行った北里大学病院の「けやきサロン」は、ソファー等が用意された誰でも利用できる憩いのスペース。病気・からだについての図書閲覧が可能で、インターネット利用も可能(Pepperは画像右で実証実験の稼働中)



ロボットが会話でコミュニケーション

実証実験では、高齢者などを対象に、まずはソフトバンクロボティクス製の生活支援ロボット「Pepper」(ペッパー)が問診を行います。Pepperが発話で質問した内容に、体験者がタブレットで回答、アンケート結果から「ロコモ」予備軍かどうかを判定(簡易診断)します。
このように、ロボットが会話でコミュニケーションをとりながらロコモの重度判定を行うところがこのシステムのひとつめの特長です。

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ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(症候群)とは骨や関節、筋肉、神経等が衰えて「立つ」「歩く」といった動作が困難になり、要介護や寝たきりになってしまうこと、または、そのリスクが高い状態。40歳以上では、日本全国の3人に1人が推定対象者と言われている



医師考案のアルゴリズムが、正しい姿勢で体操ができているかを判定

ロコモ予備軍と判定された場合、Pepperは体験者にロコモ予防体操「ロコトレ」を提案します。ロコトレには「スクワット」と「片脚立ち」があります。
体験者がPepperのタブレットに表示された動画に沿ってロコトレを行うと、センサーが体験者の体操の動作を測定し、「ヒザの角度に注意してください」など、効果的で正しい姿勢で体操を行うためのアドバイスをロボットが行います。

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体験者の姿勢を「Kinectセンサー」が3D映像で撮影、その画像を高平教授の考案したアルゴリズム(特許申請済み)とディープラーニングで機械学習したシステムが解析し、正しい姿勢でできている場合はチャイムでそれを知らせ、正しい姿勢に改善した方が良い場合は正しい体操の方法をロボットが的確にアドバイスします。
主催者によれば、医師が考案したアルゴリズムを使って、医学的な視点で体操を指導するロボットシステムは初めて。これがこのシステムのふたつめの大きな特長です。

今回の実証実験では、Pepperが問診と案内役を担当し、小型の二足歩行型ロボット「NAO」(ナオ)が体操のお手本とアドバイスを行うという、2体ロボットの体制で行われました。

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ロボット実証実験支援事業

今回の取り組みは、神奈川県「さがみロボット産業特区」の活動のひとつとして位置付けられています。県は生活支援ロボットの実証実験の企画を全国から募集し、採択した企画の実施を支援する公募型「ロボット実証実験支援事業」を推進しています。2016年度はこの実証実験を含めて13件が採択されました。

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前述のとおり、「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」は、ロボットが体操を医学的な視点で判定して指導するシステムとしては初の実証実験となります。
この日は、ロコモ度を簡易的に判定し、ロコモ体操が適正に実施されているか判定・指導する「ロボットによる健康チェックとアドバイス」の実験を行い、「Pepper」とコミュニケーションをとりながら正しく操作することが可能か、体操評価機能が適正に働くかなどについて検証が行われました。

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翌日の25日は、モニターを10名ずつ4つのグループに分類、それぞれ異なる手法(「書籍」「DVD」「人(理学療法士)」「ロボットシステム」)によって体操指導を実施した結果、体験者がどれだけ正確に体操を行ったかを判定することで、ロボットシステムによる体操指導の有効性を検証する予定です(一般には非公開)。

これらの実証実験を経て、ロコモについて多くの人たちに広く認識を拡げるとともに、体操によって予防できることを広く啓発していく考えです。
また今後は、ロコモ度の判定機能を強化し、体操の種類を増やすことが予定されています。さらに将来的には、医師が指示をした運動療法や体操療法をロボットが指導したり、継続して運動を続けるための支援ツールとしての活用を目指しています。

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写真は向かって右から学校法人北里研究所の知的資産センター 佐藤修氏、株式会社シャンティの山下咲良氏、今回の実証実験の中心的な役割を担った北里大学 医療衛生学部教授 高平尚伸教授、株式会社シャンティの宮沢祐光氏、渡邊宏氏

なお、ロボスタでは「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」について、更に詳しい情報や高平教授のインタビューをまとめた記事を、近々掲載する予定です。
ぜひお楽しみに。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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