東京・港区に本社を置くKii株式会社は、Hamburg Port Autiority(ハンブルグ港湾局)と協力して、大気汚染削減のパイロットプロジェクトを実施した事を発表した。
局所的な大気汚染が課題となっていたハンブルグ港において、港湾局とKiiが2016年3月よりIoTクラウドプラットフォームを用いたパイロットプロジェクトを実施。汚染の測定と汚染源となっている船の特定が可能であることを示した。
〜複数地点の局所的大気汚染及び汚染源の測定をIoTで実現〜
ハンブルグ港の課題は局所的な大気汚染
ハンブルグ港は、最寄りの海である北海からは100kmも内陸にある、エルベ川に面した河川の港湾。 海の港湾と違って港が市街地の真ん中にあり、しかも国際港湾であるために世界各国の船が出入りして効果的な排気規制ができないため、水面近くの陸地の大気汚染が課題となっている。
船による大気汚染は局地的に起こり、多数のセンサーを多地点に設置する必要があるが、有線接続や専用システムを前提としたこれまでのやり方ではコストがあわず、モニタリングは実現できていなかった。
しかし、IoTとクラウドを組み合わせれば、初めて実現可能なコストで実施できる可能性があり、かつ、細い水路が内陸部にあるという港湾の地理的特性から、大気汚染発生の時刻と場所から汚染源である船も特定できる可能性がある。
また、既存の船舶用の位置情報システムではすべての船の位置情報を詳細に記録できないため、実際にはリアルタイムに監視することが重要だが、IoTでこれも実現できる可能性があり、これらのことを実証するため、パイロットプログラムが行われた。
汚染の測定と汚染源の特定が可能に
2016年3月にHPAは二酸化硫黄、二酸化窒素とPMをハンブルグ港のさまざまな地点でセンサーを用いて記録することを目的としてIoTパイロットプロジェクトを開始。
このプロジェクトの技術支援はIoTの専門企業であるKiiが行い、大気汚染監視装置のメーカーであるAQMeshも協力。屋外用大気汚染測定センサーとしてAQMeshの無線・電池式のものを用いた。
汚染の測定値は3ヶ月以上の期間、KiiのIoT クラウドプラットフォームによって一箇所に集約され、分析しやすい形にまとめられた。
HPAが港湾の中の複数地点で大気汚染を分析することや、様々な環境センサーの機能を試すことが可能になり、結果として、接岸中のクルーズ船に地上から電力を供給するなどの多数の対応策を考案。大気汚染を測定するだけでなく汚染減を特定することによって、ハンブルグ港の大気汚染を軽減する新たに考案された方法を試すことが可能になった。
さらなる分析のための環境整備
このパイロットプロジェクトにおいて、センサーは港湾の中のまず3箇所の異なった地点に設置された。センサーは二酸化窒素、二酸化硫黄、PMの排出を検出すると共に、温度、気圧、湿度のデータも記録し、すべての記録されたセンサーデータは、センサーに無線接続されたgatewayを通じてKiiのIoTクラウドプラットフォームに送信。プラットフォームを用いて、結果はわかりやすいwebのダッシュボードに表示され、HPAの従業員がAPI(Application Programming Interface)を用いて分析できるようになった。
※API : あるコンピュータプログラムの機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約や関数、命令の集合
「このIoTパイロットプロジェクトは我々にとって大きな成功だった。我々は、大気汚染に関する数多くの指標、すなわちPM2.5やPM10、時には大気の100億分の1の量しかない二酸化窒素でさえも、測定することができた。Kiiのプラットフォームは様々なデータを統一的な方式で集め、分析しやすい形にまとめてくれた。」
「このIoTパイロットプロジェクトでは、我々は複雑なプロジェクトを迅速に安価に実行可能であることを示しただけでなく、ハンブルグ港での大気汚染のリアルタイム測定の可能性を示すことができました。我々のIoTソリューションで陸路と海路の重要なポイントにおいてセンサーを設置し、リアルタイムでの可視化と分析が可能になりました。ハンブルグでKiiは、港湾や都市がIoTを用いていかに効果的に大気汚染を監視できるかを示すことができたと考えています。」
Kii