ソフトバンクグループ傘下のPSソリューションズは、観光地の活性化のため、情報発信や旅行体験をテクノロジーで変革する「Tourism ✕ Tech 地方創生プロジェクト」の開始を発表した。
このプロジェクトは、オラクルやトランスコスモスと共同開発した技術を使い、PSソリューションズが地方とタッグを組んでテクノロジーを活用して地方創生をはかるもの。
第一弾は香川県、瀬戸内海に浮かぶ豊島
「Tourism ✕ Tech 地方創生プロジェクト」の第一弾は香川県、瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)と組んだ。
既に昨日より、豊島の玄関口となる港の交流センターに「Pepper」を観光案内係として配置し、観光客の対応に当たっている。
これまでと異なる新しい取り組みや技術的な要素としては「観光客数を増加させるループ」を導入していることがあげられる。オラクルやトランスコスモスと共同開発した。
「観光客数を増加させるループ」の概要はこうだ。
(1)Pepperが豊島の玄関口で出迎えて観光名所を3カ国語で案内する、(2)観光客は写真をSNSへ投稿、(3)帰りにはまたPepperが玄関口でお別れにアンケートをお願いする、(4)Pepperが記念写真を撮影して観光客の了承を得てSNSへ自動投稿する、(5)SNSに投稿された画像を洗練して公式に発信PR、(6)観光客の写真を見て自分も行ってみたいと思う(新たな観光客の創出)、そんなサイクルを構築していくとしている。
今回のプロジェクトでトランスコスモスは、Pepperにユーモアを交えた演出や多言語対応をさせるなど、国内外の観光客に喜んでもらえるようなUXデザインの設計・実装を担当している。また、Pepperが観光客の記念撮影を行い、SNSに投稿するなど、観光客にとって豊島の良い思い出作りを促進する部分の開発も担当した。
オラクルは、「Oracle Social Cloud」を利用して、Pepperが撮影した記念写真をソーシャルメディアに自動投稿したり、観光客がSNS上に投稿したさまざまな写真を収集、表示、分析する機能を開発して実装している。
豊島はおいしいものの宝庫、眺望も素晴らしい
豊島(てしま)は瀬戸内海の小豆島に近い小さな島。
記者会見では、香川県土庄町長の三枝邦彦氏や豊島「食プロジェクト推進協議会」会長らが登壇して、豊島の状況や観光PRを行った。
瀬戸内海の主要な島々では昨年「瀬戸内国際芸術祭 2016」が開催された。その結果、豊島にも154,000人の観光客が来島した。
その内訳は意外にも半数以上が外国人だと言う。「豊島の島民は外国語に強くないので、三カ国語が話せるPepperが来てくれて安堵した」と言う。「また、ソフトバンクは島に電動自転車や電動バイクを置いてくれるなど、豊島の観光促進に大きく貢献してくれているので感謝したい」とした。
次回の開催は2019年を予定しているため、観光客数の落ちこみがないように地方創生の対策が必要だとしている。
豊島は「食とアートの島」を標榜している。完全に自給自足ができる島は珍しく、白米が取れること、地下水が枯れないこと、320ものため池があり、水の供給が安定していることなどを具体的な理由としてあげた。酪農の島、ミルクの島と言われ、おいしい和牛肉も豊富、海に囲まれているため新鮮な魚介類もあり、瀬戸内海の島々が一望できる海抜330メートルの壇山からの眺望をぜひ見に来て欲しい」とPRした。
記者会見場にはお笑いタレントの二人組み、コロコロチキチキペッパーズも登壇し、Pepperと会話して観光PR、更には地方創生のためのナダル・リバース・エボリューションなどを披露して場内を沸かせた。
コロチキとPepperの様子はこちら
スマートフォン、ブログ、SNSの活用が地方創生ビジネスの切り札
PSソリューションズによれば、2020年までに増加する訪日外国人旅行客の消費金額は4.5兆円といい、外国人延べ宿泊者数は実は3大都市圏よりも地方部の伸びが大幅に上回ると試算している。そこに地方創生が期待できる最大のチャンスがあると言う。
訪日外国人旅行者が出発前にチェックする際、最大の情報源は「個人のブログ」であり、使う端末は「スマートフォン」であることから、今回のようにSNSを活用したシステムが有力なPRツールとなると考えている。一方で地方は外国語対応に欠点があり、Pepper等のロボットを活用した外国語対策とPRが有効としている。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。