育成するアンドロイドル「U」ってなんだ? ドワンゴとパルコと石黒研究室が共同発表
株式会社パルコ(PARCO)と大阪大学 石黒研究室、ドワンゴは共同で石黒研究室が開発したアンドロイドル「U」(ユー)を育成していくプロジェクトを発表した。
発表会は六本木のニコファーレで行われ、ニコニコ生放送でも放送された。
発表会ではアンドロイドの「アンドロイドル『U』」が登場し、大阪大学教授の石黒浩氏、ドワンゴ取締役の夏野剛氏、パルコ常務執行役の泉水隆氏の3名により、 アンドロイドのアイドル育成共同プロジェクトが紹介された。
石黒浩氏は「ロボットと未来社会を作りたい」と語り、その上で「対話型ロボットの技術で世界を変えていきたい」と切り出した。「対話型ロボットは社会の中で人と関わり合って成長していく、研究室の中だけでは成長できない」として、それがドワンゴやパルコとのプロジェクトを始めるきっかけになったと話した。
アンドロイドル「U」はヒトそっくりのアンドロイドで顔の表情を変えたり首をかしげる仕草をする。この日の姿勢はずっと座ったままで、腕を動かしたり、歩いたりはしなかった。
アンドロイドルは言わば石黒研究室とニコニコ生放送が生んだアンドロイドと言える。ニコニコ生放送には視聴者からのコメントがテキスト文で画面場に流れることで知られている。最初は「U」をオペレーターが操作してこのコメント文に回答することで会話のやりとりのデータを蓄積してきた。これを約ひと月行い、「U」は自然言語対話を覚えていって、自律的に返答ができるようになってきた。
すなわち、ロボットやソフトウェアは石黒研究室が開発したが、会話の部分はニコニコの視聴者たちとの会話によってブラッシュアップされてきたと言える。そして、今後はエンタメ活動を通じて、「U」を更に社会性のある存在へと更に進化させたい考えだ
生対話にチャレンジ
アンドロイドル「U」は実際にどの程度の会話ができるのだろうか。
1000パターンの会話が蓄積されると10%、2000パターン蓄積すると20%の対話に対応できるようになってくると言う。現在は約4000パターンを装備し、40%程度に回答できる技術レベルだが、ニコ生での応対についてはもっと確度は高いと言う。その理由は、ニコ生は視聴者からたくさんのコメントが同時に寄せられるので、その中から応えやすいものだけに回答している。
また、回答のほかに自発的な会話も行っていて、それらを組み合わせると技術的な会話の対応値よりもたくさんの質問に回答しているように見えると言う。応えにくい質問が続いたときは、それらには回答せず、自発的な発話をすることで会話自体は継続しているように感じるからだ。
発表会では壁面に流れる視聴者から流れるお馴染みのコメントから「U」が任意に選んでそれに回答するという内容が公開された(「U」は事前にニコニコ動画のコメントで学習したものだが、この日に入力されるコメントは実際の視聴者からのもので、ぶっつけ本番での受け応えだという)。
「U」は冒頭ではまったく回答せず、会話エンジンがフリーズしていたが、再起動して復活すると、壁に流れるコメントの中からピックアップして回答していった。
■アンドロイドル「U」ぶっつけ本番生対話「ぐぬぬww」
池袋PARCOで「U」に会える
池袋PARCOというリアル空間に「U」がやってきて、エンタメ活動を行うことがパルコとの協業のポイントとなる。
例えば、池袋PARCO内のニコニコ本社のサテライトスタジオで「U」が公開生放送を行ったり、池袋店内でインフォメーションスタッフ(案内役)を行ったり、1日店長を行ったり、イメージガールとしてポスターや大型ビジョンに登場してプロモーション活動を行うことなどが予定されている。
また、ニコカフェの生放送バーカウンターでタッチパネルによる会話体験を行ったり、ニコニコ神社で巫女としてアルバイトを行うなど、リアルありネットアイドルとしての活動あり、アンドロイドのアイドルとして「U」を一緒に育成して欲しいと語った。
石黒教授は最後に、大阪大学が頭脳、ドワンゴがエンタメ、パルコが空間を提供する、三者の協力はアンドロイドルの育成には最適な組み合わせ、だとしめくくった。
Uの部屋
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。