LINEが「音声アシスタントAI」市場に殴り込み、ライバルは「Amazon Echo」と「Google Home」。Gateboxの買収も発表

LINE株式会社は、スペインのバルセロナにて開催されている世界最大のモバイルカンファレンス「Mobile World Congress 2017」のキーノートスピーチにて、クラウドAIプラットフォーム「Clova(クローバ)」と、それを搭載したデバイス群の発表を行った。


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「Clova」は、LINEとNAVERの共同開発プロジェクトとして研究開発が進められている。日本だけでなく、アジア圏で導入が進められ、メッセンジャーアプリとしてトップシェアをもつLINEが培ってきた「チャットをベースとしたコミュニケーション技術」と、韓国の検索ポータルNo.1のNAVERがもつ「検索技術」、両者が持つ「豊富なコンテンツやサービス」、「数多くのユーザーベーストビッグデータ」により、「量・質ともに兼ね備えた学習データを使用することができる良質でスマートなAI」だという特徴を持っている。

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このClovaを搭載した製品として、アプリ「Clova App」、および、初の自社デバイスとなるスマートスピーカー「WAVE(ウェーブ)」の発売を初夏に日本と韓国とで予定している。話しかけると音声で会話をしたり、ニュース、天気・占い情報、コマース、カレンダー、翻訳などのコンテンツ・サービスや、音声で家の電気のオンオフなどを行うホームコントール、音声専用コンテンツとして読み聞かせなどができるオーディオブックなどが利用できるようになり、今後LINEが事業を展開する他アジアの国や地域に提供範囲を拡大していく予定だという。


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また、2017年冬には、ロボットのような見た目をしたスマートディスプレイ「FACE(フェース)」もローンチされる。これまではソフトウェアを開発してきたLINEが急速にハードウェアを攻めてきているが、この背景にはインターネット・PCからモバイルへと時代が変化していったように、「次は目、鼻、手、口、耳といった五感を通じたAIにパラダイムシフトする」という考えがあるようだ。


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今回発表された「Clova」の中核は、「Clova Interface」と「Clova Brain」という2つで構成されている。人間の五感にあたるのが「Clova Interface」であり、その中の耳と口にあたるのが「Clova Voice」だ。「Clova Voice」では、音声認識と音声合成などを行う。五感の目にあたる「Clova Vision」では、画像認識や顔認識などを行うといい、今後は耳・口・目以外の5感に対応していくと話す。

そして、頭脳部分である「Clova Brain」は、NLU(Natural Language Understanding/自然言語理解)や、Dialog Managerなどで構成される「Clova Conversation」を中心に、より自然な言語翻訳処理を行う「NMT(Neural Machine Translation)」、ドキュメントやコンテンツなどを推薦する「Recommendation Engine」などで構成されている。


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そして、これら「Clova Interface」と「Clova Brain」には、デバイスやアプリケーションを繋ぐための「Clova Interface Connect」、「Clova Brain」の機能を拡張していくための「Clova Extension Kit」が準備されており、ただのAIではなくこれらを「プラットフォーム」として運用していく意図がはっきりと見て取れる。

「Clova」搭載のスマートスピーカー「WAVE(ウェーブ)」のライバルは、明らかに「Amazon Echo」と「Google Home」といえるだろう。「Amazon Echo」は、同社のAIである「Alexa」をプラットフォーム化することに成功しており、今年1月に開催された「CES2017」ではあらゆるプロダクトにAlexaが搭載され、会場の至る所で「Alexa!」という呼びかけ声が聞こえてきたという。LINEが狙うのはまさにこのようなプラットフォームである。「Amazon Echo」「Google Home」は、まだ日本語や韓国語に対応しきれておらず、アジア圏でLINEがトップシェアを誇るメッセンジャーアプリであることを鑑みると、アジア圏をLINEの「WAVE」や続く「FACE」が牛耳っていく可能性を秘めている。

「Clova Interface Connect」とつながるデバイスやアプリケーションおよび「Clova Extension Kit」とつながるコンテンツやサービスは、まずは自社開発のものから開始し、次にパートナーとの共同開発、続いてサードパーティーへの開放を計画している。アジア圏で、アマゾンやグーグルに先駆けてエコシステムが構築できるかが鍵になりそうだ。



「Gatebox」開発のウィンクルを買収

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LINEは、今回の発表と同時に、ソニーモバイルコミュニケーションズ、タカラトミーとのパートナーシップを発表。そして、ロボスタでもこれまで情報を追いかけてきたバーチャルホームロボット「Gatebox」を展開している株式会社ウィンクルの買収を発表した。

Gateboxは、好きなキャラクターと一緒に暮らせる世界初のバーチャルホームロボットだ。価格が29万8,000円にも関わらず、5日間で200体、1ヶ月で限定販売分の300体を売り上げるなど、日本のみならず世界中でファンがいることで知られている。今回の買収により、さらに注目を集めることだろう。買収額は非公表。同社は連結子会社としてLINE傘下に加わる。


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左から、「Google Home」、「Amazon Echo Dot」、「Amazon Echo」

このように、LINEは自社でハードウェアを開発するだけでなく、パートナーシップや買収を通じて、あらゆるデバイスへの「Clova」導入を進めていくことだろう。

アマゾンエコーもグーグルホームも、日本への展開が開始されていない。そのうちに、LINEがどこまでプラットフォーム化を推し進めることができるか。スピード感が成否を決めるといっても過言ではないかもしれない。

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ロボスタ編集部

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