新型山手線に搭載されている「CBM」とは? JR東日本とIBM Watsonの関係は?

4月27日に行われた「IBM Watson Summit 2017」の基調講演に東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の取締役副会長の小縣方樹氏が登壇し、山手線の新型車両では新しい視点のメンテナンス・システムが稼働していることに触れた。また、コールセンターではWatsonが最適な回答を提案するシステムが稼働中であることを解説した。




状態ベースのメンテナンス・システム

話題に上がったメンテナンスシステムを同社では「CBM」(Conditon Based Maintenance)と呼ぶ。「状態保全」のスマートメンテナンス・システムだ。
山手線はE235系と呼ばれる新型車両を導入しているが、「今までは時間を決めて(定期的に)メンテナンスをしていたが、今後は状態を見てメンテナンスするように変わっていく」と話した。

従来は点検用の車両が架線と線路設備の状態をモニタリングする装置を搭載して走行する試験運転を行っていた。E235系の山手線では、このシステムを営業車両(実稼働車両)に搭載している。


具体的にはパンタグラフ等が設置されている屋根(ルーフ)部分と、車輪がある車両下部に線路設備をモニタリングする装置をそれぞれ設置、架線と線路の状態をデータ化する。収集したデータはデータサーバに送られ、メンテナンスセンターの現場スタッフに転送され、故障の未然防止に役立てられていると言う。同社では将来的にはメンテナンスシステムにAI関連技術を活用した故障予測を展開していく可能性もあるとのことなので、CBMとAIの連携もイメージしているのかもしれない。
なお、CBMは現状走行しているE235系で既に稼働していて、今後、山手線はすべてこの車両に置き換わっていく予定だ。



コールセンターではWatsonがオペレーターに回答をアドバイス

もうひとつのICT利用がコールセンターだ。JR東日本のコールセンターでは顧客からの質問が多岐に渡っているという。私鉄を含めた鉄道や路線、駅などの案内だけでなく、各種商品、旅行商品、忘れ物、定期券、Suicaなどのカード決済等に関すること、iPhoneとの連携によってiPhoneやiPadなどの操作案内にも、質問は及ぶと言う。

これを効率化するために、Watsonを活用していると言う(試行中)。顧客からの問い合わせ内容をオペレーターとともにWatsonも聞いていて、質問に対する適切な回答の候補を、オペレーターのパソコン画面に次々に表示するしくみだ。
講演では、定期券やみどりの窓口に関する問合わせに対して、オペレーターがWatsonの回答候補を参考にしながら回答していく映像が紹介された。

「交通業界にも100年に一度の波が来ている。新しいモビリティサービスも出現している。鉄道は古い産業だがイノベーションが必要だ。Watsonのような最新鋭のAI関連技術等を積極的に導入して改革していかなければ生き残れない」と締めくくった。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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