2017年5月30日、「laundroid world 2017」と題した製品発表会が表参道で行われた。「ランドロイド(https://laundroid.sevendreamers.com)」はセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社が、パナソニック株式会社、大和ハウス工業株式会社と共同で開発中の、衣類を折りたたむロボット家電だ。2015年10月に行われたCEATEC Japanで初公開された。
今回、製品版の公開のほか、月額制ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」を展開している株式会社エアークローゼットと、ハードウェアベンチャーの株式会社Cerevo(セレボ)とのコラボレーションが発表された。
同日30日から予約受付が始まったが、これは9月下旬から10月初旬に新たに受注開始する折に優先される権利となる。価格はオープンプライスだが想定価格は税抜きで185万円くらいからの見込み。外装デザインによっても変化する予定。製品の出荷自体の詳細は未定だが、今年度中を想定している。
なお「ランドロイド」は。国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による助成を受けている。
衣服と人の新しい関係を作る機械
ランドロイドはこれまでは「全自動で衣類を折りたたむ機械」という機能を主にアピールしていた。だが、今回改めてそれだけではなく、本体とスマホアプリを使って衣類をオンラインで記録・整理する「オンラインクローゼット」と、衣類の使用頻度の傾向からこれまで着たことがないコーディネートを提案する「衣類コンシュルジュ」などの機能を持つ、新たな機械であると紹介された。いわば「衣類と人との新しい関係を作ってくれる機械」だという。
セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社 代表取締役社長の阪根信一氏はこう語り、「これまで敢えてブラックボックスのイメージ」をとっていたという「ランドロイド」の製品版をアンベールした。
今回紹介されたデザインは4種類。いずれも表面はガラスで、側面に天然木を、そして人の手がふれる操作インタフェースならびにトレイのハンドル部には本革を採用した。家庭のインテリアのなかで上質な家具と共存できるデザインと、新しい製品であるからこそ直感的に使えることが重要だと考えて設計したという。
操作インターフェースには、サークルインターフェースを採用した。午前7時の金環日食をイメージしており、プッシュボタンとLEDインジケーター、ダイヤルで構成されている。
ダイアルは折りたたみが完了すると12時の位置になりピックアップトレイのスライドドアが開く。3時の位置に回すとピックアップトレイのスライドドアが閉まる。衣類を折りたたませるためには最下部のトレイを開けてそのまま入れる。一度におよそ20-30枚程度の衣類を折りたたむことができる。そして7時の位置に合わせると折りたたみ開始だ。
ダイヤルで操作するのは基本動作だけで、細かい設定はスマホアプリで行える。
衣類はおおむね畳めるが、裏返しやボタン留めは不可
折りたたみが可能な衣類は半袖あるいは長袖のTシャツ類のほか、ボトムス、タオルなど。「家庭でよくたたむ衣類はおおむね畳める」という。
逆に、できないことは3つ。ランドロイドには衣類の裏返し機能がない。裏返したまま投入するとそのまま畳んでしまう。だから事前に表に返しておかないといけない。また、ボタン留め機能がないため、ポロシャツくらいならある程度畳めるが、Yシャツを畳もうと思ったら、少なくとも3つくらいのボタンは事前に留めておく必要がある。
もう一つ、いまはできないが将来ソフトウェアアップデートで対応できることとしては、靴下のペアリング機能があるという。靴下をペアリングさせるために機械学習で精度を高めた上でアップデートをかけたいと考えているという。
ランドロイドのトレイは6つあり、タオルやシャツなどアイテム別のほか、家族別などにも仕分けることができる。家族別仕分けモードは一回設定が必要となる。
画像解析、機械学習、ロボティクスを組み合わせて実現
ランドロイドの機能について阪根信一氏は「2005年から12年かけて世界初の技術を作り上げた」と強調した。ランドロイドにはwifi接続機能があり、同社独自の「ランドロイド・クラウド」と接続する。本体のなかの人工知能が随時学習を繰り返しアップデートをしていくだけでなく、クラウドとも連動して、これまで畳むことができなかった衣類も畳めるようなっていくのだという。当初はランドロイドによるおすすめの畳み方しかできないが、将来はたたみ方自体もどんどん選べるようになっていくと語った。
スマホアプリによる「オンラインクローゼット」機能とは「一枚一枚を把握・管理する手伝いをする」、「ユーザーと衣類の日々の関係が見えてくる」ものだという。たとえば「この色の服、もっていたかな」と思うことがあっても、アプリを立ち上げれば一目でわかるほか、持っている衣類のリストから、着ている頻度や時期、長期間着ていない衣類はどれか、また買い替え時期などがわかるという。
Cerevoとの協業で音声認識に対応
ランドロイドは音声認識にも対応する。アマゾンのアレクサやグーグルホームにも対応予定で、今回は株式会社Cerevoのロボティック・デスクライト「Lumigent(ルミジェント)」と連携するというデモを示した。アレクサに対応しているLumigentに話しかけることで、ランドロイドの基本操作を音声認識で行うことができる。
Cerevoの岩佐琢磨氏は、「音声対話機能は相手が知性のあるもの相手だと恥ずかしくない。いまはそのラインを超えた」と語った。
衣類コンシュルジュでエアークローゼットと協業
衣類コンシュルジュ機能については、普段着に特化した女性向けファッションレンタルサービス「エアークローゼット」と連携する。同社は働く女性やママなどを主なユーザーとしている。レンタル自体を目的にしているわけではなく「レンタルという手段を通して、これまでにない感動するファッションとの出会い体験を提供したい」と考えていると株式会社エアークローゼットの代表取締役CEO 天沼聰氏は語った。
「エアクローゼット」は月額定額制で、6800円から。同社は10万点に及ぶ衣類を単品管理している。採寸に関しても一品一品、同社側で再採寸しているという。ユーザーはPCやスマホからファッションスタイルや好きな色味、お悩み登録などをしたら、数日経つとプロのスタイリストが選んでコーディネート提案する3着の服がボックスで郵送されてくる。返却期限はなく、気に入ったら購入も可能。忙しい人であっても、ファッションを楽しめる。
衣服ブランドからは新規顧客獲得やブランドポジションチェンジや認知向上が期待できる。顧客側からはパーソナライズされた最適化された衣服との出会いが期待できる。なお3つのうち一つは、ユーザーが普段は選ばない色の服や、選択する色だがデザインが変わったものなどを「チャレンジアイテム」として入れることで、これまでにないファッションとの出会いを創造しようとしているという。
ランドロイドとは、まだ具体的にどんなデータをやりとりするかは決めていないが、ユーザーも含めて互いに利になる形でのビジネスを展開する予定だ。
ランドロイドは、今後もプロジェクトパートナーを募集するという。なお、誰もが考える洗濯・乾燥機能との一体化を目指したオールインワンタイプなどについても研究開発は進めているが、まずは折りたたみ特化型の普及を目指す。当初は高価格になるが、基本的にはシンプルな機構なので、将来的には自動食器洗い機くらいの価格帯にできると考えていると語った。
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森山 和道フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!