規制改革ベンチャーのCTO対談と銘打って、株式会社メドレーとSBドライブ株式会社の各CTOが登壇、対談するイベントが6月21日、東京で行われた。
メドレーの事業のひとつは「オンライン診療」。聞き慣れない言葉だが、スマホやPCで診察が受けられるオンライン診療アプリ「CLINICS (クリニクス)」とそのサービスを提供している。ビデオ通話(ビデオチャット)を使って医師の診療が受けられる、いわゆる遠隔診療を実現するシステム。診療予約は24時間スマートフォンから可能で、導入医療機関は約500にのぼる。
他には、医療介護業界の課題を解決を目指すオンライン医療事典「MEDLEY」を展開する。医療事典は500人を超える医師たちによって作られている。また、医療介護の求人サイト「ジョブメドレー」、クチコミで探せる介護施設の検索サイト「介護のほんね」も運営している。
一方のSBドライブはロボスタでも何度か取り上げてきたが、ソフトバンクとヤフー、自動運転技術の研究・開発を行う先進モビリティの合弁会社で、自動運転バスの開発・推進に注力している会社だ。今年3月には沖縄で日本初の公道でのバスの自動運転の実証実験を行っている。
メドレーは医療業界特有の様々な規制が、SBドライブは道路交通法やクルマ業界のさまざまな規制が、事業の取り囲んでいるが、それを少しずつ切り拓き、新しい技術で新風を吹き込もうとしている。それを踏まえ、規制産業に切り込み、社会を変革するサービスへの取り組みについて語った。
規制産業に切り込む2つのベンチャー
株式会社メドレー 取締役CTOの平山宗介氏によれば「以前は遠隔診療は離島やへき地に限られていた。しかし、2015年8月に厚生労働省からの事務連絡によって都市部を含む全国に拡大できることが明示された。更に2016年11月に未来投資会議で遠隔診療が活用しやすい環境を作るよう、首相が方針を示したことも後押しとなり「CLINICS」は順調に伸びている。現在、約500の医療機関が導入してくれている。中には「オンライン診療をはじめました」と積極的にアナウンスをはじめてくれているところも多い」と言う。
SBドライブ株式会社 CTOの須山温人氏は「今は車両が世の中にないので結果として作っているが、SBドライブは自動運転の車両を作る会社ではなく、自動運転車両をコントロールするシステムやユーザーへのサービスを提供していく会社。自動運転バスに対するアプローチも自動車メーカーとは異なる。自動車メーカーは街中でも高速道路でも、どこでも走れる自動運転車をめざしている。まずはオートクルーズや自動ブレーキなどの運転者支援といった現実的な方向から導入をはじめている。しかし、我々の自動運転バスは低速で、決まったルートだけをはしる公共交通であり、遠隔監視システムを導入し、人間が自動運転車を支援するしくみを導入する」ということを強調した。
印象的だったのは、「規制で縛られた産業に切り込むのは大変だが、今まで規制で守られてきただけに、市場の規模がとても大きいので、やり甲斐がある」と強調したことだ。須山氏はフォード社がCES 2016で公表したグラフを引用し、グループ会社のソフトバンクが主戦場にしている「移動体通信」、更には「クルマの販売」と比較し、SBドライブが取り組んでいる「交通サービス」の市場規模がいかに大きいかを紹介した。
また、自動車には様々な課題があるが、自動運転の実現によって、「交通事故の原因の90%以上がヒューマンエラーであること」「過疎地を中心にした移動の不自由による(俗に言う)買い物弱者の問題」「運転中の時間を別のことに使うことでの効率化」などに触れ、自動運転の実現に対して社会的意義があることにも触れた。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。