メルセデス・ベンツ展示イベントで3台のPepperを活用、新機能「SMSアプリ」でアンケート収集

湘南平塚ららぽーと(神奈川県)では7月8日と9日の2日間、メルセデスの最新モデルを展示するイベント「メルセデス・ベンツが ららぽーとにやってくる」が行われた。

展示を行ったのは株式会社ヤナセで、ヤナセ湘南支店の出張展示会イベントという位置付け。イベント会場には3台のPepperが配置され、呼び込みやアンケートの案内をしていた。そのうち2台のPepperは、7月10日より「Pepper for Biz」で標準機能として利用できる「SMSアプリ」機能を活用したしくみが取り入れられていた。


イベント会場には計3台のPepperがそれぞれ異なる業務にあたる

今回は現場の様子とともに、Pepperをイベントに導入したヤナセの担当者に経緯や狙いを聞き、更にSMSアプリで得た成果(アンケート回答数)も具体的にお伝えしたい。


自動車展示イベントで活躍する3台のPepperの役割

1台はユニフォームを着た呼び込み専用のPepper。ひときわ大きな音量で「アンケートに答えたり、Facebookページに登録すると、ヤナセやメルセデスのグッズがもらえるキャンペーンを実施している」ことを伝えていた。この日のアンケートの記念品はメルセデスの特製タオル、メルセデス・ファンなら特に嬉しい一品だ。

呼び込みを担当するPepper。イベント会場は明るい雰囲気だ

もう1台のPepperはSMS機能を使って、ヤナセのFacebookページへの登録を推進。ユーザーがスマートフォンなどのモバイル端末の電話番号をPepperのタブレットに入力すると、すぐにスマホにショートメッセージ(SMS)が届き、そのメッセージをタップするとFacebookページの紹介が表示される。ユーザーが「いいね!」ボタンを押せばいわゆるお友達登録が簡単に完了するしくみ。


電話番号をPepperのタブレットに入力すると、Facebookページの紹介と「いいね!」ページがその場でスマホに届く

3台めのPepperはアンケートページに案内する役割を担う。これもユーザーがPepperのタブレットに電話番号を入力することで、ショートメール(SMS)が届き、そのメッセージをタップしてアンケート画面にジャンプする。

タブレットに電話番号を入力すると、スマホにショートメッセージで、アンケートページへのリンクが届く



SMS機能とは

Facebookページの紹介と、アンケート収集のPepperにはソフトバンクロボティクスが本日(7月10日)からリリースを開始する「SMS」機能が使われている。

SMSとはいわゆるケータイ電話でよく利用されていた「ショートメッセージ」や「ショートメール」のこと。電話番号を宛先にしてメッセージが送れる機能だ。しかし、スマホでは短文のコミュニケーションにはLINEなどの利用が主流となったため、ショートメッセージはあまり利用されなくなっている。とはいえ、多くのスマホで変わらず利用することはできる。
この機能を活用し、スマホの電話番号をPepperのタブレットに入力してもらうだけで、スマホに案内通知をSMSで送信し、ユーザーに面倒な作業を強いることなく特定のページに案内することができる。

スマートフォンのショートメッセージに届いたご案内。これをタップすると・・

案内通知をタップすると様々なページにジャンプさせることができる。ヤナセの例では1台のPepperが「Facebookの紹介と登録ページ」に、もう1台は「アンケートフォーム」のページにジャンプさせるしくみだ。

Facebookページの紹介と「いいね!」登録ボタンが表示される。「いいね!」すれば作業完了。スタッフから記念品がもらえる

個人情報にもいろいろあるが、アンケートで電話番号を収集するのは難しい。売り込み電話などを嫌う消費者心理があるからだ。しかし、Pepperが相手なら意外と教えてくれる傾向にあるようだ。
また、ヤナセの場合、顧客が入力した電話番号はSMSを送信するためだけに使い、保存もしていないとのこと。アンケート内で顧客が許可した情報だけを収集するポリシーとなっている。顧客にとっては安心な姿勢だと言えるだろう。

■Pepper for Biz 「SMSアプリ」

Pepper for Biz 「SMSアプリ」
Pepper for Biz追加機能「SMSアプリ」


ヤナセに聞く、Pepperをイベントに導入した理由

以前も、ヤナセは3台のPepperを顧客サービスに活用したことがある。仙台支店の移転一周年記念で既存顧客を招待した際、来場プレゼントの抽選を行うPepperが会場を盛り上げた。そんな経験もあって、今回のイベントにPepper起用が繋がっている。

「前回は既存のお客様へのサービスにPepperを活用しましたが、今回は新規のお客様との出会いにPepperが活用できないかと検討してきました。当社ともベンツとも関わりのなかった方達に興味を持ってもらうためのきっかけとしてPepperを配置しました」と同社 営業統括本部の長谷井氏は語る。

株式会社ヤナセ 営業統括本部 営業推進部 販売企画課 長谷井寛之氏

長谷井氏はロボットの先進性に加えて、業務でもロボットに触れておくことが重要と考えている。「自動運転車やロボットが職場に入る未来が来ると言われていますので、個人的にはロボットのことを少しずつでも知っておきたいという興味があります。Pepperを使ってお客様に楽しんで頂くだけなら、もう簡単にできる段階に来ていると感じています。次はロボットをどこまで実際の業務に活かせるかということで、ソフトバンクさんとそれこそ車座になってブレストからはじめ、ようやくここまでできたなと感じています」(同氏)と言う。


前述のように顧客がPepperのタブレットに入力した電話番号は収集していない。その理由については「お客様に入力して頂いた電話番号はあくまでSMSを送信するためだけに使用しています。通知後のアンケートで個人情報を入力して頂き、その情報については当社で保存させて頂き、今後のキャンペーン情報などをお送りすることをお客様に許可して頂くしくみをとっています」とする。

実はこの発想は、ショールームなどに新規で来店した顧客に書いてもらっているアンケートを基準にしている。紙のアンケートの代わりに顧客にはウェブで回答を入力してもらうが、その入口をPepperが担っているだけであり、Pepperは電話番号を収集するためのものではないという考えだ。

いわば、Pepperは初期のアンケート等の収集を自動で行うことかできる。今までスタッフが初期対応していた時間を、クルマに興味を持った顧客に対してより詳しい説明にあてることができるため、効率性が向上していることを現場は実感しているようだ。


気になるアンケート集計数は?

アンケートの集計はスタッフがリアルタイムで確認できる。
イベント初日、取材した時点で、朝の2時間弱だけでPepperはアンケートを既に9件獲得していた。Facebookの「いいね!」をもらった数はもっと多いだろう。

2日間のイベントを通して、Pepperがどれくらいの成果をあげられたかが気になるところ。集計結果を教えてもらった。2日目はFacebook「いいね!」を募集していたPepperもアンケートに切り換え、2台体制で実施。その結果、Pepperが顧客にSMSを配信した数は133件、アンケートの回答総数は99件だった。

その成果とは別に、イベント会場には家族連れやカップルなど、多くの人がPepperの呼びかけに足を止め、耳を傾け、ある人はPepperと記念写真を撮り、ある人はアンケートやFacebookページに登録して景品を手にしていた。その笑顔もまた第二の成果とも言えるだろう。



※ 撮影にあたり、顔が確認できる一般の方には撮影した旨をお話しし、許可を頂いて掲載しています。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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