「AI白書 2017」を読めば、人工知能の情報をキャッチアップできる
7月20日、人工知能の今を網羅した「AI白書 2017」が角川アスキー総合研究所より刊行された。「ディープラーニングが、すべてを変えた」というキャッチコピーにもある通り、昨今話題のディープラーニングの話を軸の一つに据えて、人工知能の今に迫った一冊だ。
このような「白書」と呼ばれるものは多くの人に敬遠されがちだろう。私も「小難しくて読みづらい」「役所が書いたような文体で頭に入らない」などのイメージを持っている。ただ、このAI白書は、もちろん文体は堅いものの、データや図表がところどころに散りばめられていて、読みやすいものだった(一部を除き)。
第1章「技術動向」、第2章「利用動向」、第3章「制度的課題への対応動向」、第4章「政策動向」という章立てになっており、それぞれが興味深いものだったが、特に第2章「利用動向」の中でも「産業別の利用動向」が面白かった。約30ページに及んで、各分野でのAIの利用動向を事例と共に知ることができる。日本や米国のみならず、ヨーロッパの各企業の事例も集められている。新薬開発へのAI活用の事例、セキュリティ・詐欺特定にAIを利用する取組例などの各分野ごとの事例を知ることができ、これらが表にまとめられているため、非常に読みやすい。大手の取り組みからベンチャーの取り組みまで幅広く情報収集することができ、今後AIを使って何かをしたいと漠然と考えている方にとっては有用なデータになるだろう。
正直、このAI白書をすべて読む必要があるかというと、そういう訳ではないと思う。私自身飛ばし飛ばし読んでしまったが、文系が苦手な数式も一部出てくる。ビッグデータの統計モデルや、ディープラーニングの演算の基本計算などはもちろん知っておくことに越したことはないが、ビジネスマン全員が知るべきこととも思えない。一方でマクロな技術動向や、利用動向などは一人一人のビジネスマンが頭に入れておくことで「AIの活用法」を考えるきっかけにもなるはずだ。
特に「人工知能は今なんで注目されているんだろう」「ディープラーニングってどのように使われているんだろう」など、情報のキャッチアップが間に合っていないと感じている方にとっては、手に取るべき一冊と言えるかもしれない。
第1章で眠くなってしまった人は、第2章から改めて読み進めて欲しい。それ以降を読むだけでも、十分価値ある一冊と言える。