タカラトミー「COZMO」の魅力と技術を徹底解剖 ANKI社に聞く「4つの技術とプログラミング」
米国で大ヒットしたロボット玩具「COZMO」(コズモ)が日本に上陸する。
タカラトミーが今年の9月からCOZMOを日本で発売することを発表してからおよそ1ヶ月が経った。その発表を伝えたロボスタの記事も数多く閲覧され、衝撃の大きさを物語っている。発表会の様子やCOZMOの概要はタカラトミーが公式にダイジェスト動画で伝えているので、まだ見ていない人はまずはそれらもチェックして欲しい。
発表会ではAnki社のCEO Boris Sofman氏も登壇し「ピクサーやドリームワークスのアニメーションスタジオ出身者などの人材で開発チームを組んだ」と、COZMOの魅力の秘密を明らかにしている。
■【COZMO】発表会 ダイジェスト(約3分20秒)
COZMOの可愛いさは容姿ではなく仕草や声の表現力。顔には表情があるが、静止画を見ただけではまるで初期の頃のコンピュータ画面のドット絵のようだ。今風のアニメ的な細かな描写による表現は使われていない。しかし、作り込まれた動きと合わさると、まさに生命を感じる仕上がりになっている。
■動いているCOZMOを動画でチェック
もともと、COZMO開発の動機は「SF映画に登場するような可愛いキャラクターを作りたい」というものだったと言う。だからこそ、こんなに生物的で感情移入するロボットが誕生した。
この魅力的なCOZMOについて「もっと知りたい」という読者の声に応え、ANKI社のインタビューを交えて、魅力とそれを支える技術を徹底的にお届けしたい。
COZMOに搭載されている4つの技術
「SF映画に登場するような可愛いキャラクターを作りたい」 その想いを実現するために、COZMOには4つの技術が盛り込まれたと言う。
1.ビジョン&センシング
周囲にある人やモノを認識することができる。COZMOと出会って最初にすることは、ユーザーである自分が誰かを教えること。COZMOはコズモ語を話すのだが、ユーザーの名前を覚えると、COZMOは顔認証して片言の発音で名前を呼んでくれるようになる。これが妙に愛くるしいのだ。
また、COZMOの主な遊び道具であるパワーキューブ(ブロック)も自律的に認識する。COZMOはブルドーザーのような機構を持っているので、このパワーキューブを自力で積み上げてひとりで遊んだりする。もちろん、ユーザーと一対一でパワーキューブを使って遊ぶこともできる。
COZMOはゲームに負けたり、イライラすると独特のリアクションをする。ぜひこの可愛い表現は動画でもチェックして欲しい。
■COZMO「コズモと楽しくゲーム」
ビジョン&センシングは「移動」にも重要な機能だ。自分の位置を理解し周囲をマッピングする。実はここには本格的なロボットの移動にも使われている「SLAM」と呼ばれる技術が使われている。玩具の領域を超えたハイテクな自律移動システムだ。更には机から落ちたりしないように前方足元もセンサーで確認する。
2.アニマトロニクス
生き物感。表情や動き、声で自分の感情を表現することができる。しかもそれが人間っぽくしてあるところが微笑ましい。ユーザーがパワーキューブを高く積むとCOZMOの短い手では届かない。すると「キーッ!!」と声を上げているようなヒステリックな動きでブロックを崩しにかかるのだ。これぞ生き物感。
3.人工知能(AI)
COZMOには人工知能(AI)が搭載されている。ただ、流行りの「機械学習」や「ディープラーニング」といった類の人工知能技術ではない。周囲の環境を認識して、それに合わせて適切な感情を表現しつつ自律的に行動する。
4.インタラクティブ・コンテンツ
COZMOとユーザーの相互コミュニケーションとそれによる遊びを堪能することができる。ゲームや探検モードで遊ぶことができ、SDKや「コード ラボ」(後述)が提供されるのでプログラミングしてCOZMOを自由に動かしたり、海外でも気運が高まっているSTEM(STEAM)教育やプログラミング学習に活用することもできるだろう。
COZMOが「一緒にゲームがしたい」と近付いてきたら、断るのはちょっと難しいくらい、すぐに感情移入していくだろう。
COZMOと遊ぶ楽しさとそれを支える技術
編集部
COZMOとの遊び方、楽しみ方を教えてください
Peter氏
COZMOは約20分の充電でおよそ80分間、遊ぶことができます。
COZMOはあなたをみつけたら「パワーキューブ(ブロック)を使ってゲームをしよう」とコズモ語で言ってくるでしょう。キューブにはカラーのLEDが搭載されていて、認識したキューブは普段は青く光っていますが、COZMOが次のターゲットに決めたキューブは緑色に光ると言う具合に、COZMOとパワーキューブは2.4GHz帯の電波で通信しています。
編集部
COZMOはスマートフォンやタブレットとも通信しますよね
Peter氏
はい、COZMOはそれらの端末とはWi-Fiで通信します。ひとりでパワーキューブを積んで遊んだり、筋トレをしたりして勝手に遊びます。
COZMOはたまに転びます。しかし、転んでもセンサーが自分が転んだ状態なのを検知します。そして自律的に起き上がりますが、起き上がるときにもいろいろな感情表現をしますからぜひ注目してください。
少し可哀想ですが(笑)、COZMOをシェイクして(振って)みてください。リアクションが可愛いですよ。ただし、あなたがシェイクして意地悪したことをCOZMOは覚えているかもしれません(笑)。
また、COZMOに対して同じアクションをしたとしても、COZMOのリアクションはいつも同じというわけではありません。まるで生きているかのようなアニマトロニクスの世界を楽しんでください。
編集部
COZMOにはどんな遊びやアプリが用意されていますか?
Peter氏
例えば、COZMOとブロックを挟んで向き合って、パワーキューブが同じ色に光ったときだけタッチしてください。COZMOがタッチするのが早いか、あなたの方が早いかで勝負するゲームです。あ、ただし赤く光った時はタッチしてはいけません。赤のときにタッチしたらそれはお手つきになりますから注意してくださいね(笑)。
いわゆる早押しゲームだ。こんなに小さなロボットと向き合ってゲームで勝負する体験はそうそうないが、真剣になること請け合いだ。COZMOは相手が初心者と見るや手加減してくる。それなのに負けてしまったときの悔しさは・・もう言葉にできない。
現在、パワーキューブを使ったゲームは3種類用意されている。今後、アップデートとともに増えていく予定だ。
COZMOを操る / プログラミング学習
Peter氏
COZMOにはカメラが搭載されていて、周囲の状況は常に映像で確認しています。タブレットやスマートフォンを使って、COZMOが見ている世界をユーザーも一緒に見ることができます。知っている人の顔をみつければ個人を識別しますし、犬や猫などのペットを見れば、ちゃんとペットとして認識します。今、COZMOがパワーキューブを認識しましたよ。
編集部
周囲の認識はカメラが中心になっているんですね
Peter氏
人と動物、モノは画像で認識します。キューブの認識は画像と通信を両方活用しています。また、画像認識ではナイトビジョン機能もあり、暗闇でも認識できます。ユーザーはパワーキューブを持ち上げたり、キューブを探して移動する、いわゆるラジオコントロールのようにCOZMOを操作することができますが、操作しているときもCOZMOのキャラクター性を楽しむこともできます。試しにバック(後進)させてみてください。とても可愛いCOZMOの一面が見られるかもしれませんよ。
プログラミングアプリ「コード ラボ」
Peter氏
最近のアップデートでCOZMOをプログラミングして動かすことができるアプリ「コード ラボ」が追加されました。プログラミングの経験がない人でもすぐに使えるように、コード ラボはドラッグ&ドロップを中心にしたスクラッチタイプの操作画面を採用しています。COZMOに特定のアクションをさせたり、言葉を喋らせたりできます。COZMOには1000を超えるアニメーション(アクション)が登録されていますが、現時点ではそのうちの15くらいのアニメーションが「コード ラボ」で選択できます。喜んだり悲しんだり、そんな感情表現をさせることもできますよ。
「コード ラボ」は子どもを含めて、スマートフォンやタブレットが操作できれば直感的にプログラミングし、COZMOに動作させることができるアプリだ。インタビュー時は「Hello」などの英語ベースで話しをさせて楽しんだ。ただし、COZMO語なのではっきりとした英語では発音しない。9月にタカラトミーから発売される際には日本語対応も予定されている。もちろん「コード ラボ」アプリも日本語化される予定だ。
なお、SDKでは顔の認識するだけでなく、笑顔などの表情を認識することができる。例えば、COZMOが移動して人をみつけたら近づき、笑顔を認識したら、それに応えてCOZMOも喜びを表現したり、「Hello」と言うなどのリアクションをプログラミングできる。
Peter氏
「コード ラボ」では楽しみながら学ぶ方法も用意されています。例えば「COZMOを4つ前に進めるのはどうプログラミングしたらいいでしょうか? 」といったクイズ形式の課題が用意されていて、それに応えたり、解答を見ることでプログラミングを学習することができます。
COZMOは世界的に有名なアニメスタジオ出身者がアニメーションを設計しただけあって、実に巧妙に考えられた複雑に動きをする。しかし、コード ラボでは、その複雑なCOZMOの動きがシンプルなドラッグ&ドロップ画面で可視化され、子供たちがプログラミングを通して表現を楽しめるように工夫されている。
インタビュー時は一列のアクションを順次実行していくものだけだったが、今後のアップデートではふたつ以上の列で動作を同時に実行したり、ループしたり、列をジャンプするような進化も予定されている。スクラッチ風のインタフェースが印象的だ。
COZMOは360個のパーツで構成され、160万のソースコード、1000以上の感情表現が登録されている。
サウンドクリエイターの存在も重要だ。COZMOの動きにはBGMや擬音などのサウンドギミックが多数使われているが、オリジナルミュージックの時間は実に42分間に達する。これほどの膨大なデータがこの小さなボディの中に凝縮されている。
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