「音楽」に特化した音声アシスタント搭載の「スマートヘッドホン」が発表

ヘッドホンなどを手がける音響機器メーカー「モンスターケーブル社」が音声ミュージックアシスタント搭載のヘッドホン「MonsterTalk Voice Powered Headphones」を発表した。同社は、1978年にサンフランシスコを拠点に創業された会社だ。



MonsterTalk Voice Powered Headphones

このヘッドホンの特徴は、ヘッドホンをハンズフリーで音声だけで制御できるということ。仕組みは同社が開発する「MonsterTalk」という音声ミュージックアシスタントを搭載し、Bluetooth経由でスマートフォンとやりとりするというもの。



「Amazon Echo」などのスマートスピーカーはスマートホンで設定を行い、その後は基本的にWi-Fi環境下でスタンドアローンで動く。一方、このヘッドホンはスマートフォンを必要とする。スマホがあれば、Wi-Fi環境下でなくても使えため、移動中も快適に使用することができる。



このMonsterTalk搭載のヘッドフォンは、ClarityHD On-EariSport Freedom V2Elements Over-EarElements On-Ear Headphonesの4機種が対応機種として発表されている。

これらの製品は米国で8月末に発売される予定だ。



MonsterTalkとは?

話は少しややこしいが、モンスターケーブル社は自身でイチから「MonsterTalk」というAI音声アシスタントを作っているわけではない。この会社は音響機器の会社であり、AIを開発しているわけではないのだ。

そこで同社は、アメリカのスタートアップ企業Speak Music社が展開している「Melody」という音声アシスタントにカスタマイズを加え、「MonsterTalk」という名前でヘッドホンに搭載している。

この元となったAI音声アシスタント「Melody」は、音楽の操作に特化した音声アシスタントで、「Play (曲名)」、「Play (ミュージシャン名)」、「Play (周波数)ラジオ」、「Play (アルバム名 ミュージシャン名)」、「Play (ジャンル)」、「Play (プレイレイスト)」などと指示をすることで、音楽再生ができるようになっている。「今の気分」を伝えることでも音楽を再生してもらうこともできるようだ。

この「Melody」の方向性は興味深い。通常AI音声アシスタントというと、なんでも答えることができる「秘書」のようなものを想像しがちであり、そんなものは小さい企業ではなかなか開発することが難しい。SiriやAlexaを作るためには、膨大な知見はもちろんのこと莫大な開発費が必要になるだろう。

一方で、このMelodyのような限定したコーパスによって特化型のAI音声アシスタントを作るという試みは、日本のメーカーにとっても参考になるはずだ。グルメ情報だけに特化したAI音声アシスタント、横浜の情報に特化したもの、ニュースに特化したものなど、使用方法によってコーパスを作り分け、それを適したデバイスに搭載することで大きな価値を発揮する可能性もある。実際にSpeak Music社もこの音楽領域に特化したコーパスを蓄積し続ければ、AmazonやGoogleがそのコーパスや対話のUIを求めて買収するといった道も考えられる。

モンスターケーブル社が同AIを採用した理由も、そのコンセプトとプロダクトが合致したことにあるだろう。



「Melody」は初回利用時にiPhoneまたはAndroidの「Melodyアプリ」をインストールして設定を行う。



その後対応しているストリーミング音楽サービスのアカウントにログインし、ヘッドホンとペアリングすれば、あとはヘッドホンに音声だけで様々な操作が可能になる。

現在対応しているのは、デフォルトの音楽プレイヤーおよび、Spotify、iHeartRadio、nprなどとなっている。



Alexaのような全方位のAI音声アシスタントではなく、このような特化型のAI音声アシスタントを搭載したプロダクトも今後市場に数多く出てくることになるのかもしれない。

僕はこう思った:

ロボスタでは今後スマートスピーカーだけでなく、スマートヘッドホンにも注目していきます。




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中橋 義博

1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。

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