NEDO、AIベンチャー企業6件7社の研究テーマをコンテスト方式で採択
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2017年9月6日、政府の「人工知能技術戦略」を踏まえてAI技術の利活用を推進するために、AIベンチャー企業6件7社の研究テーマを採択したと発表した。57件の応募からデモンストレーションによるコンテスト方式で選定した。今後、販路や調達先、提携のためのマッチング支援をNEDOが実施する。事業期間は2018年度まで。
コンテスト方式で支援する企業を採択したのはNEDOとしては初めて。ただしコンテストといっても、テーマはバラバラだ。審査では、エントリーシートに書かれた実技が実際にできるかどうかを審査したという。各審査委員からのコメントについては10月6日にCEATEC内で行われる表彰式にて一部公開されるとのことだ。
NEDOロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの関根久氏は「今回選ばれたものは基礎技術としては完成しているもの。アプリケーションを重視した」と語った。
多様話者・多言語に対応可能な「End-to-End音声認識AI」
最優秀賞はHmcomm(エイチエムコム)株式会社(http://hmcom.co.jp)「多様話者・多言語に対応可能な”End-to-End音声認識AI”の実用化」。同社は産総研技術移転ベンチャーである。
同社の技術は、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)を用いて方言や高齢者、外国語など多様な話者に対応可能とする音声認識技術。今後の開発を経て事前学習なしで対応できるようにすることを目指し、コールセンターのほか、遠隔医療やホテルのフロントなどに導入していきたいとしている。
病院を訪れた患者が受診すべき診療科を推定
ARアドバンストテクノロジ株式会社(https://ari-jp.com)、株式会社島津製作所は、人工知能による診療科推論等の調査研究というテーマを共同提案。
「対話的診療科クラウドAIシステム」を開発し、病院を訪れた患者が受診すべき診療科を推定することで、患者の待ち時間短縮と医療従事者側の負担軽減、そして病院の黒字化を目指す。
患者はタッチパネルで問診票を入力して、その結果に基づいてシステムが推論を行う。将来的にはタブレットやスマホ対応し、自宅からの遠隔問診、多言語対応UIを開発して海外からの来訪者にも対応する。
スマホで育てるパーソナルコンシュルジュ
SOINN(ソイン)株式会社(https://soinn.com)は、スマホを使って自分専用の人工知能を育てる「AIパーソナルコンシュルジュ」を提案。スマホ内部で完結できるように学習のための計算を軽くした。プライバシーを保護するためデータは手元で管理しつつ、人工知能を育てるものだという。
ユーザーがいつも行う操作を自動化したり、認識機能をアプリケーションに付加することなどを目指す。同社が開発するのはあくまでAIエンジンのみで、具体的なアプリケーション開発は他社と協業で行う。
深層学習でユーザーの質問に直接回答
株式会社BEDORE(ベドア、https://www.bedore.jp)は、人工知能技術を使って企業業務の効率化を目指す。ディープラーニングを使って言葉のゆらぎを吸収、質問を解析、適切な検索語を探して自動検索、ユーザーの質問から直接回答を返す。
まずはクレディセゾンのコールセンター業務で実証実験を行う予定だ。
FAQの自動作成ではなく、直接、非構造化文書から回答を探索して回答することができることがポイントだという。
五感AIカメラで不審者を自動識別
アースアイズ株式会社(http://earth-eyes.co.jp)は「五感AIカメラ」を使って、事件・事故を予防するシステムを提案。
一般的なRGBカメラの情報だけではなく、距離センサーなどを併用することで動きを検知する。
カメラが自動的に怪しい人を検出して警告することで、具体的には万引きなどを発見することができる。「店舗をAI化する」技術だという。
契約書を自動解析して業務をサポート
株式会社シナモン(http://cinnamon.is)は、人間だと専門家でも3日かかる英文契約書の読み込みが人工知能による文書読み取り機能を使って3分で済むという技術を紹介した。
様々な非構造化文書を自動読みとりすることで、ホワイトカラー業務を改善する。CNNのほか、RNN(再帰型ニューラルネットワーク)などを組み合わせて学習を行う。農林中央金庫をパートナーとして実証研究を行う。
今後はベンチャー同士の連携も
コンテストといっても完全にバラバラなので、ベンチャー同士でのコラボレーション等は今後の課題。また出資金額自体は大きくないものの「NEDOプロで認められることはメリットが大きい」とHmcomm株式会社代表取締役 三本幸司氏は語った。ARアドバンストテクノロジ株式会社の武内寿憲氏も「良い技術を持っているベンチャーが良い技術を発信するためには大企業に活用してもらうことが重要」と述べ、そのためにも今回のNEDOによる選定については意義があると語った。
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森山 和道フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!