「エレベーターを動かし客室へ」品川プリンスホテル導入のデリバリーロボット「Relay」が事前走行の模様を公開

品川プリンスホテルを経営する株式会社プリンスホテルは、本日9月14日(木)、同ホテルが10月2日より導入する客室用デリバリーロボット「Relay(リレイ)」の事前走行の模様を記者向けに公開した。

Relayは、品川プリンスホテルにて、お客から注文があった商品やアメニティを客室まで自律走行で届ける役割を果たす。



デリバリーロボット「Relay」の仕組み

「Relay(リレイ)」を開発したSavioke, Inc.(以下サヴィオーク)は、シリコンバレーに拠点を置く、自律走行型の配達ロボットの開発を行うロボット・スタートアップ。2013年に設立され、その後2014年に販売開始された「Relay」は、現在アメリカを中心にホテル・オフィスなどに幅広く導入されている。インター・コンチネンタルなど大手のホテルも導入しているのだという。



Relayは高さ92cm、幅51cm、重さが約40kgのデリバリーロボット。



上面の蓋を開けることができ、そこには26cm×22cm、深さ37cmの格納スペースが用意されている。ここにお客から依頼のあった商品等を置き自律走行で客室まで届ける。

また格納スペースの中にトレーのようなものを置くことで、高さを調整し、小さい荷物も取り出しやすくなる。重さは4.5kg、容量21Lまでを格納することができるスペースだ。ワインボトルなども入るサイズだ。

上前面には7インチのタッチディスプレイが付いており、ここで操作を行う。エレベーターの待ち時間には、現在エレベーターを待っていることを伝える文言が表示される。



連続走行時間は4時間だが、充電スポットに自動で戻っていくため、24時間稼働するホテルでも問題なく使用することができるだろう。デュアル3Dカメラ、LIDAR、配列ソナー、加速度センサー、ジャイロセンサー、気圧計が搭載されており、下部には安全バンパーが付いている。Wi-FiだけでなくSIMを入れることでLTEでの通信も可能になる。

導入にあたり、まずはホテルのフロアマップをロボットに記憶させていく。多くのホテルがそうだと思うが、各階で大きな形状の違いはないため、形状が似た階はワンフロアをコピーすることで記憶可能だ。

Relayは、記憶させたマップをもとに移動するが、常にレーザーセンサーやカメラは起動させているため、お客とすれ違う際などは避けて通ることができる。SaviokeのRelayはこの避ける技術を含めた自律走行の技術力に定評がある。今回、品川プリンスホテルへの導入におけるシステム開発等を担当した「NECネッツエスアイ」の担当者に、Relayの技術の高さのポイントを伺ったところ「カメラやセンサーで取得した情報をもとに総合的に判断する技術」を挙げた。




ロボットは移動する際に、常にレーザーで周りのものの位置を把握している。人は移動をするので、リアルタイムに場所を把握しないといけない。Relayはレーザーセンサー以外にデュアル3Dカメラで取得した情報を組み合わせて、人の位置情報の把握を素早いスピードで行っていく。これにより、人にぶつからずに移動することができるのだ。



Relayは、無線による通信で、自身でエレベーターを呼んで、乗って、降りることができる。となると、今後導入をしたい企業が気になるのは「うちのエレベーターでも使えるの?」ということだろう。

NECネッツエスアイによれば、Relay導入時に、エレベーター側に手を加える必要がある。今回の場合には、三菱電機のエレベーターだったため、NECネッツエスアイから三菱電機に連絡を入れて、Relayから制御できるように改良をした。つまりエレベーターの制御については、「都度、エレベーター業者にお願いをする」ことになる。

導入コストは明かされていないが、まずは大手を中心に導入が進んでいくのではないかと感じた。



動画で見る、「Relay」の動き


では、Relayはどのような流れで活躍するのだろうか。Relayはまず、①ゲストからのリクエストを受け付けると、②充電スポットからフロント横まで移動し、③ホテルスタッフが商品やアメニティを入れて部屋番号を入力。④するとRelayがエレベーターを制御し客室まで自律運搬し、⑤内線電話で到着通知を送りゲストがドアを開けると蓋をオープン、⑥物が取り出されると蓋を閉じて充電スポットへと戻っていく。

つまり、ホテルスタッフはゲストからリクエストを受け付けた後、Relayにものを入れて部屋番号を押すだけで、フロントから動かずにものを部屋まで届けることができるのだ。


それでは、映像と共に、この一連の動きを紹介していく。

充電スポットから、フロント横まで移動する
ホテルスタッフが依頼されたものをRelayの中に入れ、エレベーターに向けて動き出す
エレベーターに着くと、エレベーターを無線で呼び、到着すると通してくださいという文言と共にエレベーターに乗り込む
お客の階に到着すると、廊下を通って客室へ。Relayが客室の電話を鳴らし、ドアが開くと蓋が開く。荷物を取り出すと蓋が閉まり、5段階の評価をしてくれとお願いする。一番良い評価がつくと、Relayが可愛らしい音と共に、体を左右に振って喜ぶ。

品川プリンスホテルの導入の目的とは?

Relay開発元のSavioke, Inc. CEOのスティーブ・カズンズ氏

事前走行に先駆けて行われた説明会にて、Savioke, Inc.のCEO スティーブ・カズンズ氏は、「2年前に品川プリンスホテルからコンタクトがあった」と明かした。「東京に連れてこれたことが嬉しい。そして、まず品川プリンスホテルに展開できることを大変感謝しています」と続けた。


株式会社プリンスホテルの専務執行役員 東京シティエリア統括総支配人 武井久昌氏

株式会社プリンスホテルの専務執行役員 東京シティエリア統括総支配人 武井久昌氏は「アメリカのホテル業界で革命を起こしていると知り導入したいと考えた」と語った。お客が喜び、SNSでの拡散による来訪客の増加というメリットがある。

今後の展開としては「まずNタワーで稼働させ、お客様の反応や利用状況を元もとに、他のホテルにも展開するかどうかを検討していく」としている。

Relayがお客の誕生日やクリスマスなどにサプライズプレゼントを渡すような宿泊プランも検討していると語った。



もちろんRelayを使うよりも、人が作業をした方が早く、導入費用も考えると効率的だ。しかし、ロボットがホテルの部屋までものを届けに来てくれるという体験は貴重な体験になる。それはきっと、お客の満足度の向上、そしてSNSでの発信やメディア露出による来訪客の増加にも繋がっていくだろう。

Relayは、ここ品川プリンスホテル・Nタワーで、10月2日より本配属となり、仕事をスタートする。

ロボットは今後、ホテルをはじめ、様々な商業施設に導入されていくことだろう。そこで導入の決め手になるポイントは「人より効率的である」もしくは「人を喜ばせることができる」のいずれかになっていくはずだ。


左からSavioke, Inc. CEO スティーブ・カズンズ氏、株式会社プリンスホテル 専務執行役員 東京シティエリア統括総支配人 武井久昌氏、NECネッツエスアイ株式会社 代表取締役執行役員社長 牛島祐之氏

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望月 亮輔

1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。

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