観光地の増加は大きな経済効果を生んでいるが、同時に外国語対応が悩みの種となっている。多国語を話せるスタッフの人手不足もあって、ロボットや小型端末による音声翻訳、即時通訳が可能なシステムの導入が進められている。ホテルの受付や店頭で通訳して欲しい外国語を選択し、観光客がロボット等に対して発話するとその場で音声翻訳した日本語が流れる。スタッフが日本語で回答すると日本語から他国語に翻訳した音声が瞬時に流れて、観光客に回答が伝わるしくみだ。通訳者のかわりにロボットやタブレット、専用の小型端末が翻訳してくれるイメージだ。
近畿日本ツーリスト株式会社と音声認識・翻訳事業を手がける株式会社フュートレックは、ホテルや旅館などの観光事業者向けインバウンド支援ソリューションとして、ネットワーク型音声翻訳アプリ「ToTeMo(トテモ)」と、ウェアラブル音声翻訳デバイス「ili(イリー)」の法人向けサービス「ili for Guest(イリーフォーゲスト)」の2つの製品を9月22日より提供開始することを発表した。
今回のサービス提供において、近畿日本ツーリストは旅行業界でのネットワークを活かし、ホテル、旅館などの窓口として音声翻訳アプリ「ToTeMo(トテモ)」および「ili(イリー)」の取次販売業務を、また、フュートレックは音声翻訳アプリ「ToTeMo(トテモ)の開発と、ログバー社「ili(イリー)」の開発に対する技術協力、業務提携、取次販売業務を請け負う。
なお、現時点ではどちらの製品も日本語、中国語、英語の3か国語対応となっている。
音声翻訳アプリ「ToTeMo(トテモ)」
ホテルや旅館のフロントや店頭に設置したロボットやタブレット端末に話しかけると、約2秒で音声自動翻訳する。
主に観光案内所や宿泊施設など、従業員が施設内での接客場面で利用することを想定して、2015年9月より近畿日本ツーリストとフュートレックでホテル・旅館での実証実験を重ね調整を行ってきた。
通訳(翻訳)できる会話は宿泊や食事、観光、買い物等のシーンを想定した接客会話に特化されており、誤訳がないかを目で確認できるよう双方向翻訳、逆方向翻訳も可能だ。観光客が話しかける端末としてはタブレットやコミュニケーションロボットを想定している。
STEP2:訪日客に希望の言語を選択してもらう
STEP3:マイクボタンを押して会話スタート!タブレットorロボットに話しかける
STEP4: タブレットorロボットから翻訳された音声が流れる
http://biz.knt.co.jp/tour/totemo/
音声翻訳アプリ「ToTeMo」 料金プラン
A Plan | 音声翻訳アプリToTeMoのみ(※Android搭載のタブレット端末が必要) 月額利用料5,000円/1台 初期費用30,000円 |
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B Plan | 音声翻訳アプリToTeMo導入済みタブレット端末 月額利用料8,500円/1台 初期費用50,000円 |
C Plan | 対話ロボット&音声翻訳アプリToTeMo導入済みタブレット端末( ※電源:ACアダプタ(12V 4A)が必要。) 月額利用料29,000円/1台 初期費用150,000円 |
※全てのプランで最低1年は契約/別途、消費税、通信費および送料が発生
ウェアラブル音声翻訳デバイス「ili(イリー)」
通訳者の代わりに専用端末を使うという発想はログバーの「ili(イリー)」でも実践投入されてきた。利用時にインターネット接続の必要がないため、いつでもどこでもすぐに使用ができるモバイル機器だ。翻訳言語の組み合わせも管理ステーションに接続して個別に設定可能な点でも特化している。
ホテル・旅館などの館内だけでなく、利用者が観光で外出する際にも携帯できるので、利便性の向上にもつながり、温泉街の町歩きなど地域を挙げた外国人の受入れをサポートできる。
観光案内所や宿泊施設などで、施設を利用する外国人旅行客に、旅行に特化したワンフレーズ音声翻訳デバイスを貸し出し、旅行客が「ili」の上部のマイクに向かって話しかけると、搭載されたコンピューターが一瞬で言葉を翻訳する。
他にも、ホテルのレストランや客室係のスタッフが「ili」を外国人旅行客の接客時に使うなど「施設利用者への貸し出しサービス」「スタッフのサポートツール」として言葉の壁を越えたスムーズなコミュニケーションが可能となる。
https://iamili.com/ja/forguest/
法人向けプラン「ili for Guest」 料金プラン
月額 | 3,980円(税抜)/ライセンス(1台) |
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初期費用 | 10,000円(税抜)/ライセンス ili管理ステーション費用(税抜) 30,000円 (1契約あたり 1台以上の ili 管理ステーションの申込みが必要) |
※10ライセンス以上を2年契約
今後の展開
訪日外国人旅行客は2016年には約2,404万人に及び、引き続き増加し続けている。
言葉の問題は、外国人旅行客の受け入れ施設で一番大きな課題であり、「外国語対応のスタッフが足りない」「英語以外の対応が難しい」「対応スタッフの人件費や外部委託費、対策ツール費用が負担」といった現状がある。
両社では、同サービスを提供することにより、増加する訪日外国人旅行客および対応するホテル、旅館をはじめとした観光事業者へのサポートを提供していくと述べている。
また、2017年9月21日(木)~9月23日(土・祝)に東京ビッグサイトで開催される「インバウンド・観光ビジネス総合展」に近畿日本ツーリストが出展。ブース番号IB-013 にて、音声翻訳アプリ「ToTeMo(トテモ)」と「ili(イリー)」を体験できるとのことだ。