KDDIがモノの感触を体験できる遠隔操作ロボット「テレイグジスタンス」を出展、実用化は来年春を目指す
CEATEC JAPAN 2017でKDDIが展示したテレイグジスタンスは「TELESAR V」。
グローブとヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着した人に同期して、あたかも人の分身(アバター)のようにロボットが動くシステムだ。
テレイグジスタンス・ロボットのしくみ
具体的には、ロボットの目の位置に装備された二眼カメラの映像が遠隔操作する人(遠隔操作者)が装着しているHMDに写し出され、ロボットの耳に内蔵されたマイクを通して、ロボットの周囲の音が遠隔操作者に届けられている。人が顔や手を動かすとロボットが同じ動作をして、人が話した言葉はロボットのそばに設置されているスピーカーから響くしくみとなっている。
特筆したいのは、ロボットが触ったり持ったものの感触がグローブを通して遠隔操作者に伝わることだ。感圧や摩擦センサーによる情報を触覚として伝える技術を活用している。これによって遠隔でもモノの質感や触り心地も感じることができる。
au 5Gの高速性や低遅延性能がこの技術を支援する
KDDIブースでこのシステムが展示されている理由は主にふたつ。ひとつはこのシステムを開発しているTELEXISTENCE社にKDDIが出資しているため。もうひとつは、今後導入される第5世代通信「5G」では、カメラ映像を通信でやりとりする大容量性能と高速性、遠隔操作者の動きを瞬時にロボットに伝える俊敏性(低遅延)が増すため、このような技術の実現に大きく貢献すると見られているからだ。「au 5G」を掲げるKDDIとしてはこのような技術を支える通信の世界を提案している格好だ。
KDDIの広報によれば、「このようなロボットの遠隔操作が実現すれば、外出することが困難な高齢者の方がロボットを通して実際の買い物を楽しんだり、商品を手にとって感触を確認して商品を購入することができるようになるという」
実用化はそう遠くない
このシステムを開発しているTELEXISTENCE Inc.のCEO兼CFOの富岡仁氏によれば、「今回の展示はアカデミック目的で開発したものですが、来年には実際に社会で活用されるサービスとして展開できることを目指しています。このようなロボットが現実に活用されるのはまだまだ先だと想像されている方も多いとは思いますが、私達は近い将来、早ければ来春頃の発表や実現を予定しています」とのこと。
用途はやはり買い物や購入体験を想定しているようだ。
「詳しいことは言えませんが、例えば、遠隔からロボットを操作することで買い物をするなどです。高級な商品はなかなかオンラインショップなどでは販売が難しいですが、このようなシステムを使えば、遠隔から商品を手にとって、手触りや質感を確かめた上で納得して購入ができるようになるのではないかと考えています」(富岡氏)と続けた。
CEATECの開催期間中は、展示ブースではこのテレイグジスタンスによるロボットの遠隔操作を体験することができると言う。また、デモにはロボットが触るために、コップとボールが用意されているのでロボットが持ったり触ったりしたそれらの感触を操作者が体験したり、ロボットを通してコンパニオンとの握手も可能とのことだ。
遠い未来の話だと思っていたロボットの遠隔操作が、ここ数年で急速に身近な存在になろうとしていることを実感する。
CEATEC JAPAN 2017特集
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。