株式会社富士経済は、今後拡大するとみられる住宅分野、業務分野、エネルギー分野において、AI技術の搭載機器やAI技術を活用したサービスの動向について国内市場を調査し、この結果を同社発行の報告書「住宅・業務・エネルギー分野向け人工知能(AI)・IoT導入実態/市場規模予測調査 2017」にまとめた。
※調査結果の一部の数字は四捨五入のため合計と一致しない場合がある。
住宅分野、業務分野、エネルギー分野における注目市場
今回注目市場として、AI搭載機器は「スマートスピーカー」と「業務用コミュニケーションロボット」、AI技術の活用サービスでは「省エネサービス」があげられた。
スマートスピーカー(AI搭載)
AI搭載のスマートスピーカーはGoogleやAmazon、LINE、他にも年内の発売を予定している企業もみられ、製品投入が本格化している2017年度の国内市場は20万台、18億円が見込まれる。
2018年度以降も電機メーカーやオーディオ機器メーカーによる製品開発と市場投入が積極的に進むとみられ、市場拡大が期待されている。
同社は、”従来のオーディオ機器としての利用に加え、家電操作やオンラインサービスなどの機能が利用可能になることから、これまでスマートフォンとアクティブスピーカーをワイヤレス接続して音楽鑑賞に利用していたユーザーからの切り替えも進む”とみている。
業務用コミュニケーションロボット(AI搭載)
また同社は、”業務用コミュニケーションロボットのほとんどはIoT対応機だが、現状ではAI機能はクラウド側にもたせる製品が大半であり、AI搭載機は一部。しかし、簡易な内容への即応には機器本体のAIでの処理が求められるため、今後は本体にAIを搭載したロボットの普及が進む”としている。
ロボットは受付・案内用途や介護用途などで需要が増加している。接客・案内など実際の業務に取り入れることで、省人化や集客効果を狙うものだ。また、ロボットとの会話は利用者の心理的ハードルを下げるため、情報収集が容易になる点も導入メリットであり、マーケティングやサービス開発への利活用も期待される、としている。
ビジネスシーンにおけるプレゼンテーションや教育用途など、常に新たな利用方法の模索と様々な実証実験が進む中、特に、介護福祉施設は有望用途のひとつとなっていて、慢性的な人手不足対策としてだけでなく、コミュニケーションによる利用者のトレーニングや精神的ケアの一端を担うことも期待されている。
業務・産業向け省エネサービス(AI活用)
同社は「業務・産業向け省エネサービス(AI活用)」について、下記のように分析している。
▼ 業務向け
複数拠点の一元管理が容易に行えることから、物販店舗や飲食店舗を展開する事業者でサービスを利用するケースが見られる。クラウドサーバー上でのエネルギー見える化や省エネコンサルティングだけでなく、コンサルタントによる電力コスト削減のアドバイスや従業員などの意識改革を図るセミナーの実施など、エネルギー使用状況に合わせた省エネ提案によって、顧客層が広がっている。
同一施設の経年変化や類似施設との比較分析に機械学習を用いることで、専門コンサルタントによる訪問診断費用などを大幅に削減できる可能性がある。また、中長期的には従来のASP型省エネサービスの付加価値として、こうした機能が徐々に標準化されていくと予想される。
▼ 産業向け
産業施設では、中小業務施設と異なり、生産設備が多様化していることや、頻繁に生産ライン・生産品目・生産量等の変更が行われることより、AIを活用して学習した運用パターンや省エネ制御のノウハウをほかの施設に応用することが難しい。
また、個別施設の運用パターンを学習すること自体、数年程度を要することが多いため、汎用サービスとして本格的に商用化されるのは2020年以降で、導入施設も限定的になるとみられる。
調査結果の概要と同社の見解
▼ AI搭載機器、AI活用サービスの国内市場
この調査によれば、AI搭載機器の国内市場は2017年に27億円を見込む。IoT対応機は標準化が進展しており、今回対象とした3つの分野向け機器市場の5割以上を占めているものの、AI搭載機はまだ一部となっている。
今後は、AI搭載のルームエアコンや家庭用掃除ロボット、住宅用蓄電池などが普及していき、特に、住宅分野向け機器ではスマートスピーカーやHEMS、業務分野向け機器では業務用コミュニケーションロボットでAI搭載機の市場投入が進み、2025年に市場は2017年見込比68.9倍と予測している。
AI活用サービスは、2017年から業務・産業向け省エネサービスや太陽光発電O&Mサービスの一部で商用化されている。
サービス事業者にとっては競合サービスとの差別化や高付加価値化が訴求でき、また、ユーザーにとってはデータ解析の自動化や省力化による業務効率化や人的コスト削減が図れることから、中長期的にAI技術は様々なサービスで導入されていくと同社はみている。
AIを活用した業務・産業向け省エネサービスや太陽光発電O&Mサービスを中心に採用率が高まり、市場は2025年には2017年の見込値と比較して169.0倍を予測している。
調査対象
機器本体に専用のAIチップを搭載し、音声認識、自然言語処理、画像認識、映像認識、データ解析などによる機械学習や推論機能をもつ住宅・業務・エネルギー分野向けの機器15品目と、クラウドサービスもしくはローカルシステムにおいて、AIチップ及びAIプラットフォームを利用し、機械学習や推論機能を活用して提供するサービス5品目の市場について調査し、その動向を分析した。
住宅・業務・エネルギー分野向け機器 | ルームエアコン、家庭用掃除ロボット、スマートスピーカー、テレビドアホン、家庭用屋内監視カメラ、HEMS、住宅用太陽光発電システム、住宅用蓄電池、エネファーム、パッケージエアコン、業務用コミュニケーションロボット、業務用監視カメラ、BEMS、非住宅用太陽光発電システム、非住宅用蓄電池 |
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住宅・業務・エネルギー分野向けサービス | 家庭向け省エネサービス、業務・産業向け省エネサービス、VPP/DRサービス、ホームセキュリティサービス、太陽光発電O&Mサービス |
https://www.fuji-keizai.co.jp/report/index/111705859.html
株式会社富士経済