【医療ICT×ロボット】北里大学がロボホンとテレプレゼンスロボットを使った在宅向け健康啓発システムの実証実験を開始!シャンティが共同開発

北里大学と株式会社シャンティは、ロボットを活用した在宅向けの「健康管理・健康啓発アプリ連動ロボットシステム」の実証実験を10月31日から開始しました。
骨や関節、筋肉、神経等が衰えて「立つ」「歩く」といった動作が困難となるロコモティブシンドローム(症候群)の患者とその予備軍を対象に、シャープ製のロボット型携帯電話「RoBoHoN(ロボホン)」を使用した啓発システムや、医師や理学療法士が遠隔で操作するテレプレゼンスロボット「kubi(クビ)」を使って体操の様子を確認するシステムです。

ロボホンが体操の解説と啓発、スコアと履歴を管理してくれる

ロボホンとロコモ体操を行う実証実験の様子(写真提供:シャンティ)。高齢者自身が自宅で機器のセッティングを行った(自身で使用開始できるかどうかも実証実験に含まれる)。

遠隔操作ロボット「kubi」を使い、医師(理学療法士)と会話をしながら自宅でロコモ体操を行っている様子(写真提供:シャンティ)。


骨や関節、筋肉、神経等が衰えるロコモとその予防体操

ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)は、40歳以上の日本人が3人に1人が疾患の予備軍といわれています。進行すると筋肉や骨、関節などの運動器に障害が出て、歩行や日常生活が困難な状態になる、と北里大学 医療衛生学部教授で整形外科医でもある高平尚伸教授は警鐘を鳴らし、健康を促進するために「ロコモ検診」とロコモ予防体操「ロコトレ」を推進しています。

シャンティは高平教授が考案したアルゴリズムを活用し、ソフトバンクロボティクスのロボット「Pepper」と「NAO」を使い、「ロコモの問診」と「ロコトレ」をロボットが行う「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」の実証実験を2016年に北里大学と共同で行いました。このシステムは、日本整形外科学会公認のロコモ度テスト「ロコモ25」を基本にした医学的根拠に基づくものです。

北里大学で行われた「体操評価付き健康啓発ロボットシステム」のロコトレ実証実験の風景。3Dセンサーが姿勢をチェックすることができる。関連記事「医療分野でロボットが活躍する未来 〜北里大学病院がPepperを活用した健康啓発システムを実証実験〜シャンティが開発

このシステムの特徴は、問診と体操をロボットと一緒に行うだけでなく、3D映像を撮影するセンサー(Kinect)と連動し、被験者の足腰の関節の曲がり具合や角度など、体操の姿勢を識別してチェック、正しい姿勢のアドバイスを行うことも特筆点です。
このシステムは医療機関向けに2017年12月より販売開始される予定です。


在宅向けの健康管理・健康啓発システムの実証実験もスタート

今回、同社が発表した「健康管理・健康啓発アプリ連動ロボットシステム(在宅向けのロボットシステム)」はこの延長となるプロジェクトです。ロコモ体操を病院だけでなく、在宅でも継続していくためのロボット活用の健康啓発ソリューションです。
神奈川県のさがみロボット産業特区「2017年 ロボット実証実験支援事業」のひとつに採択され、2017年10月31日から北里大学の協力もと、高齢者を対象に、在宅での実証実験がはじまりました。

実証実験の説明会の様子

ロコモやその予備軍と診断された場合、「ロコトレ」が有効と考えられていますが、在宅でも定期的に体操を継続していくことが重要です。従来は「書籍」や「DVD」を患者に配布し、それを見ながら体操することを推進してきましたが、書籍やDVDでは継続することが難しく、継続を啓発するための支援としてロボットの活用が考えられました。

こうして北里大学とシャンティは、ロボットを活用して在宅でもロコトレを継続できるシステムを2種類開発し、今回の実証実験を行う運びとなったのです。2種類のシステムのうつひとつは、シャープ製のモバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」を使います。


ロボホンが体操を啓発、履歴を管理

使用するのはロボホンとタブレットです。ロボホンは予め設定された時間がくると高齢者に「ロコトレ」を行うように声掛けを行います。また、ロボホンは体操を効果的に行うためのアドバイスも行うので、ひとりで体操を続けるよりもモチベーションを向上させることが期待できます。

体操の姿勢はロボホンの内蔵カメラで撮影し、体操の姿勢や曲げる角度などをチェックします。

体験者が体操する様子をロボホンが写真撮影し、体験者自身が姿勢を確認することができる

ロボホンが姿勢を評価してスコアを表示します。

ロボホンが体操の姿勢などからスコア付けを行い、モチベーションの継続をはかる

体操を行った記録とスコアがログとして保存され、ログ情報を医師に送信することができます(プライバシーの保護のため、実証実験では体操の画像は送信しません)。

体操の記録はログとして保存し、医師や理学療養士に報告することができる

システムはロボホン、タブレット、そしてシャンティが独自に開発した医療向けIoTプラットフォーム「SOAR(ソア)」の3つで構成されています。接続ケーブルや電源ケーブル、テーブルタップ(コンセント)は接続した状態でセットとなっていて、高齢者が自宅に帰ってコンセントに接続、スイッチをオンするだけで利用可能になるように配慮されています。

■ロボホンによる「健康管理・健康啓発アプリ連動ロボットシステム」(動画)




遠隔地から医師(理学療法士)が体操の様子を確認

もうひとつは医師(理学療法士)がテレビ電話のしくみを使って遠隔からロコトレを行う様子を確認できるシステムです。テレプレゼンスロボット「Kubi」(クビ)を利用したもので、遠隔診療にも繋がるシステムと言えそうです。

遠隔操作ロボットを活用し、テレビ電話のように医師(理学療法士)の前で体操を行うことができる

タブレットをKubiに接続することで、医師はカメラの角度などを自由に変えながら、体験者が体操を行う様子を確認することができます。体験者から見ると、タブレット画面上には医師の顔とKubiのカメラが写している自分の姿が映像で表示され、その画面を通じて医師と会話しながら体操を行うことができます。

遠隔操作ロボットで医師(理学療法士)と会話できる

医師と直接コンタクトをとるしくみなので、体験者は在宅でも確実に体操を継続することができます。もちろん姿勢についても、医師からのアドバイスや評価としてその場で受けることができます。

■遠隔操作ロボットによる「健康管理・健康啓発アプリ連動ロボットシステム」(動画)



北里大学は、今回の実証実験によって、筋力や歩幅の変化などロコモ度診断による効果を見るとともに、書籍、DVD、ロボホン、遠隔ロボットを使った場合の、在宅での継続性についても成果を確認していく考えです。

シャンティはさがみロボット産業特区の「2017年 ロボット実証実験支援事業」において、このシステむとは別に「ホロレンズを使った調剤薬局支援システム」も採択されていて、藤沢市の薬局で実証実験を行っています。同社は「ロボットと共に 未来をみる」をテーマに、高齢化社会での医療介護現場の人材不足問題、 高齢者や患者への快適な暮らしをロボットと共に支えていく社会を目指すとしています。今後は医療現場にロボットが浸透することで、比較的簡単な作業が自動化され、医師や看護師は重要な業務にあてる時間が増えることが期待されています。

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ロボスタ編集部

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