NVIDIAとコマツが協業して建設機械やドローンにAIビジョン導入!安全性の向上を目指す
建設・鉱山機器メーカー大手のコマツは、建設現場の安全と生産性を高めるために、NVIDIAと協業してAIを導入していく。東京で開催されているNVIDIA主催の展示会「GTC Japan 2017」において発表した。
基調講演に登壇したNVIDIAの創業者 兼 CEOのジェンスン・フアン氏は「日本が自動車、製造、重工業、医療などの重要な領域で世界的なリーダーシップを取るために、AIは革新的な可能性を秘めている」と語った。
また「日本におけるAI市場は、自動車が10兆ドル、産業が2000億ドル、建設2000億ドル、ヘルスケア700億ドルの規模がある」とし、建設業の中でコマツとの協業に触れた。
コマツがNVIDIAと連携してAI技術を導入する目的は、建設現場全体を可視化し、分析するためNVIDIAのGPUを活用する。プラットフォームは「Jetson」を採用し、建設機器やドローンに搭載し、ビジョンを強化していく予定だ。
GPUを搭載した「NVIDIA Jetson」はコマツの建設重機に搭載され、カメラと通信することで操縦者の視界を助ける。建機の周りにいる人や機械を迅速に認識できる360°映像が提供可能となり、接触や衝突などの事故を防ぐことに繋がると言う。また、Jetson は建機の運転席に設置されているステレオカメラにも使用され、変化する状況をリアルタイムに認識、分析して建機のオペレーターに的確な指示を与えることを可能すると言う。
建設現場によっては危険な場所もあり、昨年は日本だけでも300人近くの死亡事故と15,000人超の負傷者が出ていると言う。それら危険な場所や不整地な現場に重機などを入れて作業する場合、操縦者の視界も限られている。カメラと機械学習による認識技術がこれを補完することで安全性の向上をはかる。
もうひとつはドローンとの連携だ。ドローンのカメラによって、上空から現場全体の監視や作業の進捗状況が確認できる。その可視化と分析を実現するのがAIプラットフォームとエッジコンピューティングの役割となる。
GPUはコマツのパートナーである「SkyCatch」のドローンと通信し、3D画像を収集して地形データを作成し、地形を可視化する。また、IoT管理ソフトウェア企業の「OPTiM」が、現場のカメラから集めた人や建機のデータをGPUで認識し、現場の地形情報に紐付けて可視化するためのアプリケーションを提供する。
実は「SkyCatch」と「OPTiM」は、NVIDIA のインセプション・プログラムに参加しているスタートアップ企業だ。このプログラムはNVIDIAが将来有望なAI企業と認めた企業に参加を促す支援プログラムだ。
今回の主役である「NVIDIA Jetson」はクレジットカードサイズの「AIコンピュータボード」。トヨタ自動車のHSRなど、多くのロボットや監視カメラなど、エッジ側のデバイスに搭載され、AI関連の負荷が高い処理を行っている。
今回の発表はエッジ側で利用するケースが主となるが、将来的には機器の自動制御に加えて、建設現場や採掘現場の高解像度レンダリングや仮想シミュレーションなど、AIの活用の幅を広げていく計画だ。
日本の建設業界は高齢化と熟練工の減少などによる深刻な労働力不足が課題だ。2014年の時点で技能労働者は約 340万人。そのうち1/3にあたる約110 万人が今後10年間で高齢化等により離職すると見られている。
GTC Japan 2017 特集
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。