トヨタやNASAが先行試用、VRの未来の活用法「Holodeck」とは? NVIDIA基調講演で紹介
2017年12月12日~13日、NVIDIAは開発者向けイベント「GTC Japan 2017」を開催した。2日目の基調講演には、創業者 兼 CEOのジェンスン・フアン氏が登壇し「新しいコンピューティングの時代」について語った。
そして、講演の冒頭に紹介したのが「Holodeck」(ホロデッキ:英語読みはホロデック)だった(写真上)。
この「Holodeck」とは・・いったい何なのか?
スクリーンいっぱいにトヨタLEXUSが写し出される。もちろんひと目でCG画像と解るが、光の反射や各部の部品まで微細に再現している。更にそこに登場したアバターはこの自動車をデザインするクリエイターや技術者たち。オンラインでこの共有空間に参加している。
「Holodeck」は2017年5月にシリコンバレーで開催された「GTC」でNVIDIAが発表したコラボレーティブVRのためのプロジェクトだ。デモでは未来のデザインラボを想定している。シリコンバレーの発表ではKoenigsegg(ケーニセグ)のスーパーカーの設計ラボが舞台だったが、GTC Japanでは日本での開催を意識してトヨタ自動車の設計ラボが想定された。とはいえ、実はトヨタ自動車は実際にこのシステムの試験導入に参加している。
3人のデザイナーとエンジニアが、離れた場所からこの空間にアバターで参加。各自の視界にはVRゴーグルを使ったリアルの3D空間が拡がっている。クルマは実際の設計図より起こされたCGなので各部の部品の配置まで忠実に再現されている。
デザイナーは透視して内部の配置を確認したり、ボンネットをはずしたり、クランクシャフトを取り出したりしながら、自分の意見を発言する。エンジニアはそれに対して問題点を指摘したり、技術者としての意見を返す。
計器パネル、通気孔、エンジン部品などの組み込み機器のデザインや配置の状態を確認したり、日中や夜間の運転状況や、天気や道路状況をシミュレートしたり、窓のガラスやダッシュボードがコックピットで光をどのように反射するか等の確認も行える。
従来は模型を作ったり、図面上で推測していたものがVRによって、より具体的に、より簡単に体感によって確認でき、かつ、それを共有空間で他のメンバーとコミュニケーションしながら行える点が新しい。日本国内での別拠点のメンバーや海外とのやりとりでも容易にできるのも特長のひとつだ。
■NVIDIA Announces Project Holodeck
NVIDIAの基調講演はほとんどがディープラーニングなどのAI技術が中心の内容だったが、「Holodeck」はゲーミング技術で培ったCGやVRの延長にある。GPUの描画性能と演算性能をフル活用して実現するもの。
GTC Japan 2017に設けられていた体験ブースは2室用意され、各部屋にQuadro P6000を2枚搭載した、いわば超高性能なVRゲーミングコンピュータが配置され、ネットワークで連携。処理に負荷がかかるCGの処理はエッジ側のコンピュータで行い、クラウドは連携だけを担うしくみだ。ユーザーはHTC製のVRゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)「Vive」を装着して、2室が同じ空間で、コミュニケーションをとりながら協働できる(現状は3人まで同時に共有空間に参加)。
「Holodeck」はデザインラボのほか、学習用やレクチャーなどにも活用できそうだ。
「Holodeck」は先行してアーリーアクセスプログラムが開始され、トヨタなどの自動車メーカーのほか、NASAやKPFなども使用している。リリースは来春くらいを見込む。
GTC Japan 2017 特集
Holodeck 公式ページ
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。