Cerevo岩佐氏が語る、Alexa対応家電が急増している理由 #alexaday2018

神戸市にて開催された「Alexa Day 2018」に、株式会社Cerevo 代表取締役の岩佐琢磨氏が登壇した。Cerevoは、スマート家電を開発するハードウェアベンチャー。ネットに接続された”役に立つ”デバイスだけでなく、アニメ・サイコパスに登場する特殊銃「ドミネーター」や、攻殻機動隊の「タチコマ」など、アニメに登場するメカを開発するなど、ワクワクを提供してくれる会社だ。


「ハードウェアビジネス側から見た音声認識家電の現状とこれから」と題して行われた本セッションでは、AlexaなどのAIアシスタントの対応家電が急増している理由について触れた。

岩佐氏が冒頭で「スマートスピーカーを持っている人?」と尋ねると、150名ほどの会場で90%の人が手を挙げた。しかし「その中で電球をHueにしている人?」と尋ねると10%の人しか手が挙がらなかった。

岩佐氏はもう一つ質問を続けた。「洗面台の鏡を3年以内に買い換えたという方はいますか?」この質問には誰も手が挙がらなかった。そして岩佐氏は「ここにチャンスがある」と続けた。


岩佐氏

「テレビを買い換えたいなと思っている人いますか?」と尋ねればボロボロ手があがりますよね(実際に会場の1割が手を挙げた)。4Kにしたいとか、何か理由があって買い換えたいと思っていると思うんですよね。では、脱衣所の洗面台の鏡はどのようなきっかけで買い換えようと思うのか。普通は割れたか家を建て替えるタイミングしかないじゃないですか。それが、このAlexaなどのVoice対応が買い換えのタイミングになるんじゃないかと思っています。「まだ4K対応じゃないの?」のように、「まだ音声対応じゃないの?」と。

大事なのは「この製品いいなー」となることです。今は、友達の家の洗面台を借りた時に「なんかすげーな」とは思わないわけですよね。でも、声で操作ができるようになって、「Alexa水出して」で水が出たり、「Alexa今日のニュース教えて」でニュースが鏡に表示されたりしたら、「ちょっといいなー」ってなるかもしれないじゃないですか。どうも2020年くらいまでに、身の回りのものが音声認識対応になるんじゃないかと思っているわけです。いわゆるAlexa対応、Google Assistant対応。実際に、家電業界の中の多くの方々が、そこを見据えています。

パソコンやスマホからスタートした音声対応が、照明やスマート便器、スマートミラーなどのあらゆる製品へと広がって、2018年に様々なものが出てくるんじゃないかなと思っているんです。



では、なぜこのようなAlexaなどの音声対応の製品が急増しているのか。その理由を、岩佐氏はこう語った。


株式会社Cerevo 代表取締役 岩佐琢磨氏

岩佐氏

Alexa対応家電と言うと、ASK(Alexa Skill Kit)対応家電とAVS(Alexa Voice Service)対応家電の2種類がありますが、今年のCESではASK対応の家電が山のように並んでいました。

ASK(Alexa Skill Kit)対応とAVS(Alexa Voice Service)対応

○ ASK対応とは?
ASKに対応した家電とは「Alexa Skill」を使って操作ができる家電のこと。Philips Hueなどがこれにあたる。製品内にマイクやスピーカーなどを埋め込む必要がなく、あくまで「Alexa、○○して」と声をかけるのは、Amazon Echoなどの外部デバイスとなる。

○ AVS対応とは?
AVSに対応した家電とは、それ自体にAlexaと呼びかける家電のこと。AnkerのEufy Genieなどがこれにあたる。デバイス自体にマイクとスピーカーをもたせる必要がある。

なんでASK対応家電がドバッと出てきたのかというと、スマホアプリから操作ができる家電が特に2014年くらいからたくさん出始めたことに由来しています。

従来型家電からスマート家電にするためには高いハードルがありました。本体にマイコンを入れないといけなかったり、セキュリティをきちんとする必要があったり、ネットサービスを立ち上げないといけなかったり、アプリも作らないといけなかったり。ただ、2014年くらいにはそのハードルを越えてしまったので、家電メーカーの多くは自社製品専用のスマホアプリを持っているわけです。

つまり、ASK対応をするには、自社のアプリにつないでいたところをAlexaにも繋げてしまえば良いだけの話なんです。お客さんからすると、スマホアプリと音声操作には雲泥の差があります。アプリを使うのは面倒だったけど、音声でできるとなると急に「すごい!」となるんです。もちろん技術者からすると全然大きな差ではないことはすぐにわかるんですけどね。

スマート家電で進めてきたものを、一気にAlexa対応にしました。だからバーっと増えたわけです。

スマホのOSはどのバージョンまで対応したらいいかとか、不具合が発生したらどうしようとか。そんなビビリモードになっている大きな会社さんも、何か問題が発生した時には「Alexaが悪い」と責任の一端をなすりつけられる(笑) ハードウェアメーカーさんとしては非常に使いやすいんです。つまり、然るべくして広がっているんです。

一方で「AVS対応」はなかなか難しいと思います。どの方向にマイクアレイをいれるのかによって音声認識の精度も変わりますし、音声出力の質も問われます。生半可には対応できません。



ここで会場から「音声対応する上で適しているものはどんなものか?」と質問が飛んだ。

岩佐氏

僕は、距離感が大切だと思っています。照明とかはまさしく適していて、大体の部屋では電源まで数メートルありますよね。4m先にあるコタツの電源を切るために、わざわざスマホアプリを操作して消すくらいなら歩いて消しにいくよってなっていたところが、「Alexa、コタツ切っておいて」とか「Alexa、もしコタツがついてたら切っておいて」とか言えるようになる。スマホと音声は全く違います。一方で、身につけるものは音声対応が便利になるとは限りません。音声での操作よりも、自分で触った方が早いとなるからです。


まとめ

・ASK対応家電の急増は、数年前に広がった「スマート家電化」がもたらしている
・AVS対応は簡単ではない。音声認識の精度や音声出力の質も求められる
・デバイスの音声対応を考える上で大切なことはデバイスとの距離感。家の中で数メートル離れているモノは音声対応が受け入れられやすい

関連サイト
株式会社Cerevo

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