SBI生命保険株式会社は、生命保険業界初の取り組みとして、近畿大学とAIを活用した「がん遺伝子パネル検査」に基づき、患者に最適な抗がん剤治療法を提示する体制を構築。
2018年夏から、近畿大学医学部附属病院は治療中のがん患者を対象にAI(コグニティブ・コンピューティング・システム)を活用した「がん遺伝子パネル検査」の実施可能性を問う研究を先行実施し、SBI生命は同研究にかかる費用を支援することで、同検査にかかる高額な費用を保障することができる、新たな保険商品の開発に向けた研究を開始することを発表した。
「がん遺伝子パネル検査」は、患者一人ひとりの微小ながん組織または血液から遺伝子情報を解析して、その人に最適な治療法を診断するもの。がんの標準治療が効かなくなり使用できる薬がなくなった場合でも、効果が期待できる薬物治療を見つけられる可能性があるという、遺伝子検査技術。
近畿大学医学部ゲノム生物学教室では、「近大クリニカルシークエンス」プロジェクトとして全国に先駆けて同検査に取り組み、これまでに1,000件以上のがん組織サンプルの遺伝子解析を実施してきた。
「がん遺伝子パネル検査」は、近畿大学医学部附属病院だけでなく国内の一部医療機関ですでに提供されているが、現在のところ保険診療ではなく、検査費用や検査後に薬物治療を受ける場合の費用が高額で、多くのがん患者が利用するには社会環境が整っていないという大きな課題がある。
全国に先駆けて「がん遺伝子パネル検査」を実施してきた近畿大学医学部とSBI生命は、この高額費用負担という課題に対して、保険商品化(相互扶助制度を活用すること)による費用負担軽減がソリューションになると考えた。
なお、同社は、個人が特定されないよう近畿大学医学部附属病院で匿名化された情報のうち検査を実施したがん種、年代、性別などの情報、および遺伝子解析などの費用や検査所要日数の情報のみを受け取っており、がん患者個人の機微情報、がん遺伝子解析結果や診断結果の情報は一切受け取っていないとのことだ。
具体的な取り組み内容
今回の取り組みは、近畿大学医学部ゲノム生物学教室のプロジェクトである「近大クリニカルシークエンス」にAIの技術を取り入れることで、電子化された2,000万を超える論文情報をはじめ、がん腫瘍部分の遺伝子変異や生命のメカニズムに関するAIの膨大な知識情報を活用して、患者一人ひとりに適した抗がん剤とその標的となる遺伝子を解析するというもの。
経験豊富な遺伝子解析の現場の医師と、情報処理能力と作業時間の効率化というメリットを持つAIが連携することで、より最適ながんゲノム医療の提供体制を構築した。
これらの解析では腫瘍遺伝子の変異を見つけることにより、もし、ある特定のがん遺伝子の変異があれば、その特定がん遺伝子を標的とした分子標的治療を選択できる可能性があり、がん患者によりよい治療法の機会を提供することが可能だ。そこで対象となるがん患者に以下の流れで受診する。
受診の流れ
2.インフォームド・コンセント(患者の自主的な同意)取得
3.確定診断を受けた病院より主要部分の遺伝子検体を取り寄せ
4.次世代シーケンサーとAI(コグニティブ・コンピューティング・システム)で遺伝子解析実施
5.担当医が患者に説明
※同取り組みで解析を行う遺伝子は「がんの病変部分の遺伝子」であり、通常の「親の体質が子に伝わる遺伝子」とは異なる。
同社は、生命保険業界初となるこの取り組みによってがん治療に革命を起こすべく、人工知能や保険商品を活用するためのノウハウを研究して、がん大国の日本にゲノム医療を一日も早く普及させ、一人でも多くのがん患者の生存率を改善できる社会基盤づくりに貢献すると述べている。