【GTC2018】基調講演で「Holodeck」を使って無人の車を遠隔操縦!観客騒然!自動運転には遠隔操作も必要か

AI技術やディープラーニング分野における世界最大級のイベント「GPUテクノロジ カンファレンス」(略称GTC)が今年も米国シリコンバレーで開催されている。
2日めの朝、27日にNVIDIAの創業者兼CEOであるジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏が基調講演を行った。その中で、既に発表済みの「Holodeck」を大きく展開させて、自動運転車を遠隔操作する機能に繋げるデモを公開した。


「Holodeck」は、フル解像度のVR環境で、離れた場所のクリエイターやスタッフ、デベロッパーが共有空間で作業ができるように考えられたネットワークVRシステム。同僚や友人とのコラボレーションを可能にし、デザインに関する意思決定をより容易かつ迅速にできるようにしている。

Holodeckを使って、クリエイターやエンジニアが共有の空間で自動車を透視したり、部品をばらし受け渡しながら協働できる(詳細は記事「トヨタやNASAが先行試用、VRの未来の活用法「Holodeck」とは? NVIDIA基調講演で紹介」を参照)

昨年のGTCや日本で開催されたGTC Japanでもフアン氏がデモしたことで知られ、トヨタ、日産、ホンダなどがオンプレミスで導入して実証実験をしている。

アバターのドライバーがドライバーシートに取り込んだ様子

Holodeckはこのように、元々バーチャル空間で自動車に乗り込むことできるシステムなので、それを拡張し、遠隔地からHolodeck内のクルマに乗り込み、運転することができる。そして更にそれをリアル社会にある実車と連携することで、操縦者がHolodeckを通して、実車を遠隔から操縦することを可能にしている。

こちらがそのデモの様子だ。

このデモでは特別にHolodeckと、実車のBB8の制御系が連動している。Holodeck上でステアリングを切ると、BB8のステアリングが切られるしくみ(画像はGTC Japan2017のもの)

ゆっくりだが、発進して走るBB8

BB-8のドライバーシートはもちろん無人。遠隔による自動運転が実現している

この後、駐車レーンに行く着くまでの一部始終は下記の動画を参照のこと。

ほんの短い距離で、かつ、駐車場内ではあるが、遠隔操作によって、BB8が無人で動いている様子に観客から歓声が上がっている。

基調講演でデモを行ったフアン氏はこれを「ドライバーのテレポーテーション」と表現した。VRと遠隔操作ロボットを使った「テレプレゼンスロボット」の世界でも、最近よく耳にする表現だ。

なお、ロボスタでは、先月、SBドライブと先進モビリティが開発中の自動運転バスが、ANAとの連携で公道を無人で走る様子をレポートしている。実はこのシステムも遠隔操作のバックアップで動いている。基本は自律だが、遠隔操作によって人間がバックアップすることで、トラブルや事故を回避することは、当面、自動運転車両の強力なオプションになるのかもしれない。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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