【動画あり】GPU搭載の自動運転デリバリーロボット「Robby」をシリコンバレーで見た!(第1回) 動くクーラーボックスみたいで可愛い

米カリフォルニア州のシリコンバレーでは自動運転のデリバリーロボット「Robby」が実際に歩道を走行し、主に食料品、雑貨品、パッケージ品などを配達している。オンライン上でオーダーされたものを、レストランや市場、物流センターからピックアップして、今日も人々の家に届け続けている。

Robby Technologies社が開発したデリバリーロボット


ロボスタ読者のためにデリバリーロボットのデモを披露

開発したのはRobby Technologies社。MITのPhDによって創設された。このロボットにはコンピュータビジョン技術とロボット工学技術が使われ、更には人と協調する配慮が盛り込まれている。
これらの技術を根幹で支えているのがNVIDIAの「GPU」だ。
こうした背景があって、Robby Technologiesは「GTC 2018」の展示ブースで自社のデリバリーロボットを紹介した。
Robby Technologiesはロボスタ読者のために、実際に会場付近を移動する「Robby」(以下ロビーと表記)のデモを見せてくれた。

「GTC 2018」の会場の前に自律移動してやってきてくれた。実はロボスタ編集部スタッフのためにスナック菓子を実際に配達してくれた

停めているだけで、どんどんと人だかりができてくる

歩道をほとんど音もなくスムーズに移動する。周囲に人がいると大きく減速してゆっくりと動く。人がいて前進できない時は「エクスキューズ・ミー」と発話して、道を開けてくれるように促す。
では早速、実際にデリバリーロボット「ロビー」が歩道を走行しているところを動画で紹介しよう。

■デリバリーロボット「ロビー」のデモ走行動画


既に自律型デリバリーロボットを実用化

デモの際、Robby Technologiesの共同創業者のふたり、Li氏(CEO)とVenkatraman氏(CTO)が、インタビューに応えてくれた。


また、更にはGPUを使ったロボット開発環境を急加速しているNVIDIA社のシニアプロダクトマネージャーClayton氏にも話を聞くことができた(第2回の記事に掲載)。

編集部

デリバリーロボットの実用化が、シリコンバレーでは既にはじまっているそうですね

Li(敬称略)

はい。私たちのデリバリーロボット開発のプロジェクトは2016年にスタートしました。カリフォルニア州マウンテンビューにあるベンチャーキャピタルのYコンビネーター社の支援をうけて、ここカリフォルニア州で既にビジネス展開をしています。もし、皆さんがパロアルトのダウンタウンへ行くことがあったら、実際に配達している私たちのロボットを見かけるかもしれませんね。

Robby Technology、共同創設者、CEO、Rui Li氏

編集部

どのような業種を対象にビジネス展開をしていますか?

Li

このロボットはさまざまな業種に対応できます。代表的なのはやはり配達業です。食料品や雑貨、パッケージ品等をデリバリーできます。小売業との連携もあります。また、Phoenix Asia(中東、アジアに展開するUAEとHong Kongにオフィスのある会社)のようなコンサルティングとプロダクトサービスを組み合わせた会社も、私達の潜在顧客だと思っています。

編集部

どのようなビジネスモデルを考えていますか?

Li

ロボットはレンタルや販売で企業に導入して欲しいと考えています。その会社や店舗の商品を運搬したり、配達するためのデリバリーロボットとして。


ロビーの特徴と仕様、機能について

編集部

ロビーについて教えてください。どのくらいの重量の荷物を運ぶことができますか?

Li

ロビーには大きさがいくつかあり、13.6kgから36.2kg程度まで運ぶことができます。ロビーの機種によって異なります。

編集部

バッテリーはどのくらい持ちますか?

Li

その質問に答えるのは難しいのです。というのは、地形などの要因によって異なってくるからです。一般的な平地なら、約20マイル以上は走れますよ。30Km以上ですね

編集部

どのような技術でロボットは人や障害物を避けて走っているのでしょうか?

Li

ロビーはとても安全です。実際の歩道で数千マイル走行させて実証実験やテストを行ってきました。何千人の人とすれ違ったり、一緒に歩いたりしてきましたが、アクシデントはゼロです。
まず、このロボットの技術の特徴はいくつかあります。ロボットには複数のセンサーを内蔵しています。カメラ、LIDAR、IMU、GPS、TRセンサーなどです。それによって、自分の位置を正確に把握することができます。精度はcm単位です。

ロビーの前面。上部に回転するLIDARを装備し、8個のカメラ類や各種センサーがその下に配置されているのが見える。GPSとIMUで位置情報を取得する

LIDARはシングル・チャンネルを採用

また、ロボットは人や車、自転車、犬や猫など、さまざまな物体を認識して識別することができます。そして、それぞれの物体に合わせて、どう対処すべきかをシナリオを参照して最適な反応を行います。道路上に十分なスペースがあれば通っていくし、もし人によって塞がれてしまっているなら「Excuse me」と発話して、道を開けてもらうように促します。開けてもらえばちゃんと「Thank you」と言います。私達は、基本的にロボットが社会の一部として馴染めるようにデザインしています。

■走行路に人がいると「Excuse me」と発話して道を開けてもらう

編集部

走行ルートはどのように指定していますか。ロボットが自分で決めるのか、人間が予め決めたルートだけを走行するのでしょうか。

Dheera(敬称略)

ロボットが決めています。ロボットが道路の情報を管理しています。その町には通りやすい歩道がどこにあって、人通りの多い道はどこなのか、どの道を通れば一番早く目的地に着けるのかをロボットが自律的に判断しています。他の歩行者とどのように関わるかもそれに大きく影響します。

Robby Technology、共同創設者、CTO、Dheera Venkatraman氏

編集部

もしもロボットが通る道が、人ではなくて動かない障害物で塞がれていた場合はどうするのでしょうか?

Dheera

ロボットは道の情報を維持しているから大丈夫です。

編集部

それは自律的にマッピングしていると言うことですか?

Dheera

マッピングとは違います。例えば、ロボットが通る道にはたくさん人がいたとしたら、それを記憶しておいて次に配達するときは混んでいない他の、もっと早く配達できるルートを選んで走行します。それと同様に、障害物があった時はそこを迂回してシステムがナビゲートし、障害物があることを記憶するようにしています。

編集部

どのくらいの段差に対応していますか?

Dheera

明確な数値は明言できませんが、一般の歩道の段差であればたいていは乗り越えられます。問題なのは積んでいる荷物です。食料品やカタチが崩れてしまうものを運ぶことを考えて、段差を避けたルートを選択すべきです。

ロボットの背面には緊急停止ボタンを装備

編集部

このロボットには NVIDIAのJetson(ジェットソン)を内蔵しているのでしょうか

Dheera

ジェットソンではありません。あまり詳しい技術的な説明は避けたいのですが、NVIDIAのGPUの技術は使っています。

編集部

ディープラーニングを使っているんですよね

Dheera

はい、使っています。さまざまな技術にディープラーニングを使っています。どんなアルゴリズムかは言えませんが、デリバリーロボットは小型の自動運転車だとも言えます。だから自動運転車の開発で必要な技術はこのロボットにも導入したり、実証実験を行っています。一つの例としては、人間に対しての対応と、自転車に対しての対応の違いなど、それらをディープラーニングで認識したり、判断したりしています。


日本市場を含めて海外展開も視野に

編集部

日本市場に対してひとことコメントをください

Dheera

はい、このロボットは日本にも合った製品だと思っています。開発や導入はここアメリカから始まりましたが、国際的な事業展開も視野に入れています。

Li

日本では特に高齢化の問題が深刻になっていますね。労働力不足という一面もあります。eコマースの配達業務は毎年約23%もの経済成長があって、アメリカではすでに$300billionの市場です。しかし、eコマースに対する需要に対する労働力の供給には大きなギャップがあります。すなわち、その需要を満たすだけの労働力は充分とは言えません。

Dheera

それに日本は道路も整備されているので、デリバリーロボットには良い環境が整っていると思います。

編集部

そうなんですね。ウェブサイトには「ラストマイルをロビーが運ぶ」と書いてありましたが・・

Li

「ラストマイル」と言うのはあくまでコンセプトです。たいていの場合、レストランから消費者への距離というのは2マイル以内なのです。私たちはそれもラストマイルに含めています。どちらかというと、配達の最後の部分をロボットがやるという風に捉えていただきたいです。少ない距離での配達という意味ですね。


デリバリーロボットのデザイン開発で重要なこととは

編集部

開発の上で一番難しかったことはなんですか?

Li

デリバリーロボットを実用化するまでに、いろいろな面で困難はありました。人とロボットの交流もそのひとつです。例えば、ロボットを開発する上で”デザインを決める”というのはとても重要なことです。これはカタチや色のことだけではありません。「どうやって人間と関わるのか」ということです。
もともとのデザインでは歩道の真ん中を歩くことを優先してデザインしました。しかし、そのロボットを見た人々の典型的なリアクションは “ロボットから遠ざかろうとする”ものでした。それはそのロボットに対して「何をするのか分からない」という警戒感からです。それを踏まえて改良したロボットでは動作を変えて、なるべく歩道の端を歩くようにしました。そうやって、人間がもう一方の側の歩道を歩くことが出来るようにしたことで、人とロボットの交流がとてもスムーズになりました。


歩道にいる人達が「私達が中心であり、ロボットは歩道の端を私達を避けて移動するんだな」ということを理解してくれるようになったからです。歩道の端を通るように改良したことで、自転車や車椅子とも歩道上ですれ違えるようになりました。このように “人とロボットの交流” が開発の上で1番難しかったのですが、今ではそれらの問題を良い方法で解決できたと考えています。それに加えて、ロボットが通行する人々に「excuse me」や「thank you」と話すことで丁寧な印象を与えるでしょう。また、安全な速度で動くことも重要です。
盗難に対する対策も行っています。万が一運んでいるものが盗まれそうになったり、ロボットごと盗まれそうになると、アラームが鳴り、ロックしたりします。また、追跡できる精度の高いGPSも搭載しています。そうすることで盗難は簡単にはできないように工夫しています。もちろん、運んでいる荷物の安全も保障することができると思います。
ちなみに、ロボットが運んできたものをユーザーが受け取るには、スマートフォンのアプリで操作できるようにしています。

■誰かがデリバリーロボットに触ると警告音を発する



動画を観ると一目瞭然だと思うが、デリバリーロボットが動いている姿はかわいらしく感じる。人間社会に受け入れられるためには、人間がどう思うかも重要なデザインになる。
自動運転やデリバリーロボットについては、日本では法律や条令、規制などの課題もあり、実用化に向けてはゆっくりと協議が進められている印象だ。しかし、このように実際にロボットが歩道を走る姿を見ると、日本でも同じような光景が見られるのは、そう遠くない未来なのだと感じた。

このデリバリーロボットの技術の一部を支えているのがNVIDIAのGPUだ。続けて第2回の記事では、NVIDIA社のスマートマシン事業のシニアプロダクトマネージャーに、この会期中にお披露目されたGPUやディープラーニングを使ってロボット開発支援が可能な「ISAAC」(アイザック)についても聞いた(第2回の記事はこちら)。

第1回の最後はRobby Technologies社の公式動画を紹介したい。今回の記事を読んだ後でご覧頂くと、特長がより理解しやすいと思う。
(Featured Ayuka Alyson Kozaki)


ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

PR

連載・コラム