Pepperの質問やトラブル相談にはチャットボット「Emi」が迅速対応!ソフトバンクロボティクスが提供開始

ソフトバンクロボティクスは4月16日、同社製コミュニケーションロボット「Pepper」に関するあらゆる相談に応え、トラブルの解決を目指すチャットボット「Emi」(エミ)を正式にリリースした。
既に2月14日から試験運用を開始し、ここまで改良を重ねてきた。24時間365日対応、Pepperのカスタマケアセンターの窓口が開いていない時間でもチャットボットなら対応できる。試験運用版を利用したユーザーからは「回答が早く得られて便利に使えた」「オペレータに気を遣わずにいろいろ質問できる」と概ね好評だ。
ソフトバンクロボティクスは今後「電話やメールでお問い合わせ頂く前に、まずはEmiにアクセスして欲しい」と呼びかけている。ユーザーが活用すればするほど、回答の精度が向上するためだ。


チャットボット「Emi」とは

Pepperのカスタマサポートを担当するチャットボット「Emi」。キーボードから自然言語で「バッテリーのもち」についてテキスト入力して質問した画面

このチャットボットは、Pepper公式のサポートや製品関連のホームページにポップアップ形式で表示される「チャットで質問する」をクリックしてアクセスすることができる。パソコンやスマートフォン、タブレット等のブラウザで利用する。

Pepperの公式ホームページ。画面右の「チャットで質問する」をクリックするとEmiにアクセスすることができる(直接「https://emi.robot.softbank.jp/#/chatbot」からもアクセスできる

Emiが回答してくれる内容は大きく分けて2つ。ひとつはPepperに関する特徴や仕様に関するお問い合わせ「Pepperに関する質問」、もうひとつは使い方やトラブルに対するサポート系の「Pepperの不具合」だ。

チャットボット「Emi」のトップ画面。最初に「Pepperに関する質問」か「Pepperの不具合」を選択する

「Pepperに関する質問」では日常会話のような自然言語でテキストを入力するとEmiが意図を解釈して回答を返してくれる。一方、「Pepperの不具合」を選ぶと、メニュー選択によって対話を進め、フォーカスを絞り込んでいく「フローチャート方式」が採用されている。注目したい点だ。

■「Pepperに関する質問」の会話例

「Pepperの声は変えられますか?」とキーボードから入力した。「Pepperに関する質問」では質問をテキスト入力する方式が中心だ。

■「Pepperの不具合」の対話例

「Pepperの不具合」では選択肢から選んで対話を進める選択式になっている。

チャットボットEmiの特長、工夫したところ、開発に苦労した点、など更に詳しい話を、開発や運用に携わっているソフトバンクロボティクスの山本氏と礒崎氏に聞いた。


ロボットのトラブルは「質問のしかたが解らない」

編集部

チャットボットEmiについて教えてください

山本(敬称略)

Pepperに関する質問にお答えするチャットボットとして誕生しました。
「Pepperの購入を検討されている」「購入後に使用方法などでご質問がある」「本体やアプリケーションなどでトラブルを抱えている」などのお客様からのお問い合わせに、現在はPepperのカスタマケアセンターのスタッフがメールやお電話で対応していますが、お問い合わせが集中する時などはお待たせすることになってしまいます。
そこで、お客様がお電話やメールでご連絡頂く前に、お客様ご自身でお問い合わせ内容を解決することが出来る窓口を目指してチャットボットの「Emi」を開発しました。幅広い内容の質問に回答することができますので、Pepperのカスタマケアセンターへのお問い合わせの前に、ぜひご活用頂ければと考えています。

ソフトバンクロボティクス株式会社 プロダクト本部 プロダクト統括部 ビジネスプロセス部 ソリューションサービス課 課長 山本力弥氏

礒崎(敬称略)

Emiが広い範囲をカバーできるように、FAQやマニュアルの内容、カスタマケアにお問い合わせ頂く質問などを集めて、集大成のつもりで「Emi」に詰め込みました。そのため、Pepperの初歩的なトラブルからテクニカルな相談まで、非常に幅広く対応できるシステムになったと考えています。

ソフトバンクロボティクス株式会社 プロダクト本部 プロダクト統括部 ビジネスプロセス部 ソリューションサービス課 礒崎智聖氏

編集部

Pepperに関する問合わせは多いのでしょうか?

山本

ロボットがまだ浸透していない機器だからだということに起因していると思いますが、携帯電話やスマートフォン等に比べて、Pepperの場合はユーザーの方からお問合わせを頂く頻度は高いと感じています。ロボットは電源の入れ方をはじめとして、使い方に関する質問や「故障かな?」と感じたときの対処方法がわからないというケースが多いのでお問い合わせも増えてしまうと考えています。

編集部

「Pepperに関する質問」と「Pepperの不具合」ではチャットボットの会話方式が異なるようですが、これはどのような理由からでしょうか。

山本

「Pepperの不具合」では選択式でトラブルシューティングを行うフローチャート形式を採用しています。
ロボットのサポートでとても独特だと感じているのは、「なんと言って質問していいかわからない」「質問のしかたがわからない」というお客様の声が多いことです。使い慣れた製品とは異なり、ロボットの場合は、操作上のトラブルなのか、ソフトウェアの不具合なのか、ハードの故障なのか、お客様には推測すらできないと感じることが多いようです。
また、専門用語も多くて質問がしにくいという状況が少なからずあります。トラブルの状況をお伺いするには、状況をメニューから選択していく方が、お客様にとって最も使いやすいのではないかと考え、トラブルシューティングではあえて自然言語対話式ではなく、選択メニュー式でデザインしました。お客様の状況を選択式の問いから選んで頂くことで、トラブルとその解決策を迅速に絞り込みます。




動作ログからトラブルを推測

編集部

トラブルシューティングでは、他に特別な工夫や機能が導入されていますか?

山本

Emi の最大の特徴は、Pepperの行動ログを解析し、ロボット個々の状況に応じた解決案をご提案できる点です。
「故障かな?と思ったら」では「Pepperの状況を確認する」というボタンを用意しています。Pepperはインターネットに接続されているとき、Pepperの状態をログとしてサーバに定期的に送信しています。ログ解析に同意いただいているお客様に限って、それをチャットボットが参照することで「Pepperにハード的なトラブルが発生する可能性を検知した」とか、「稼働時に最後に使ったロボアプリはなんだったか」「どのようなお仕事を行っている最中にダウンしたのか」など、トラブルの原因を予測して解決するためのヒントを得ようとするしくみです。

「Pepperの状態を確認してからトラブルシューティングを行う」を選択した画面。Pepperの個体を識別するための「RobotID」を入力することで、Pepperのカスタマケアセンターがログを参照してトラブル解決に役立てることができる

礒崎

Pepper for Bizでは以前から「スマートロボメンテナンス」サービスのひとつとして、ログを解析して故障の予知・予測なども行っています。その知見が今回のチャットボットにも活用されています。例えば、Pepperが起動しない場合でも、前回シャットダウンするときにどのようなロボアプリが動作していたか、故障に繋がる予兆はなかったか、といった情報がログから見つけられる場合もあります。また、起動する途中でとまっていてなかなか起き上がってこない、といった状況の場合も今の状態のログが送信される場合もあり、とても有効な情報になります。




自然言語処理はGCPのDialogflowを活用

編集部

自然言語会話はどのようなシステムを使っていますか?

山本

「Google Cloud Platform」の「Dialogflow」を使っています。システムの構築期間は1ヶ月強で開発を行いました。開発の初期にトラブルシューティング部分はフローチャート式を採用すると決めたので、会話システムの選定にそれほど時間をかけずに済みました。自然言語処理の細かな性能よりも、小回りが効いて短時間で開発できる点を重視して「Dialogflow」を選択しました。基本的な会話の精度が高いので、開発はトラブルシューティング部のコンテンツの吟味により注力することができました。

編集部

最も苦労した点はコンテンツの吟味ですか?

礒崎

大変でした(笑)。チャットボットではできるだけ広い範囲をカバーできるようにすることを前提にしています。まずはFAQやマニュアルの内容、カスタマケアにお問い合わせ頂くよくある質問やオペレータが使うために作っている資料をフローチャートに組み込みましたが、カスタマケアではフローチャートに不足があっても人間が判断して補完して対応しています。つまり、ベテランのオペレータの頭にある各自の経験と知見もすべてテキスト化し、フィードバックした上でEmi用のコンテンツとしてイチから作り直すことが最善だと判断しました。短期間でそれを行うことが一番大変でした。その結果、使ってみて頂けるとお解り頂けると思いますが、非常に幅広いご質問に対して対応できるシステムが実現できたと思います。




利用者へひとこと

山本

Emiはまだリリースしたばかりなので、ようやくスタート地点に立ったところです。AIは使って頂くほど精度を上げることができます。「どんな質問でも構わないのでまずは使ってみてください」とお願いしたいと思います。ご質問頂ければ、皆さんが困っていることが私達も多く把握できて、今後の拡張に繋げることができます。サポートの情報は定期的にアップデートしていきますが、システム自体もお客様に対してよりよいものに常に改善していこう、とスタッフ一同、取り組んでいます。

礒崎

試験運用版をご利用頂いたユーザー様からは「回答が早く得られて便利に使えた」「オペレータに気を遣わずにいろいろ質問できる」とご評価の声を頂き、とても嬉しかったです。私はEmiの最大の特長は「チャットボットなので気軽になんでも話しかけられること」だと感じています。なるべくお客様の操作や質問を考える負担をなくすように選択式を多く用いています。また、ログを解析して解決案を提案することで、よりパーソナライズされたご提案もできるので、みなさん、ぜひ利用してください。


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ロボスタ編集部

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