クルマが巨大ロボットに変形(トランスフォーム)する!
子どもの頃、アニメの中で夢見た未来が実現した。
身長約4.2m、体重約1.7トンの巨大ロボットの名前は「J-deite RIDE」(ジェイダイト・ライド)。
2人乗りで歩行&移動を実現した人型ロボットであり、かつ、クルマにトランスフォームすることができる世界初のロボット。都内近郊で報道関係者向けに試作機が公開され、除幕式と変形のデモンストレーションが行われた。
巨大ロボットから自動車に変形
「J-deite RIDE」は人型ロボット形態の「ロボットモード」と自動車の形態「ビークルモード」に変形でき、2人まで搭乗できる。2018年4月時点で、2人乗りの歩行と移動ができる人型ロボットであり、かつ、クルマにトランスフォームすることができるものは世界唯一と言う。その巨大な姿は圧倒的な迫力だ。
ロボットモードは時速100mで歩行可能
ロボットモードの状態でも時速100m(実測値)で歩行することができる。発表会では、安全のため歩行のデモは行われなかったが、足踏み(片脚立ち)をするデモが行われた。また、ロボットモードでは歩行のほかに足裏の車輪で移動することができる。理論値ながら時速30kmで走行できると言う。
関節の数は49。頭や腕、腰なども可動できる。操作は内部のコクピットから操縦できるほか、無線による遠隔操縦も可能だ。(関節は腰 1、脚 4×2、腕 4×2、手先 8×2、頭 3、その他 13)
ビークルモードなら時速60km
四輪で走行する自動車(ビークルモード)にトランスフォームした場合、時速60kmで走行できる。これも理論値だが、最高速での走行実験を行う場所を現在検討中のため。テストコースや閉鎖された敷地内で走る姿も見てみたい(発表会では走行でもはなかった)。
メカデザインはガンダムの大河原邦男氏
メカニックデザインには「機動戦士ガンダム」「装甲騎兵ボトムズ」「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」などのメカデザインを手がけてきた、あの大河原邦男氏が協力している。痛快ロボットアニメの傑作「無敵鋼人ダイターン3」を彷彿させる顔や全体の容姿はすごくカッコいい。
その大河原氏からは「やっちまったぜ! 私の仕事はアニメを通して子どもたちの心に夢の種を蒔くことだと理解しています。その夢を花として咲かせてくださった開発者ら皆さんに対して”ありがとう”と言わせて頂きます」とのコメントが寄せられた。
また、変形型ロボットと言えば思い出すのが「トランスフォーマー」だが、タカラトミーからも「同じ変形ロボットを創造するものとしてこれからも応援しています」という応援メッセージが送られている。
■「J-deite RIDE」初公開 除幕式から足踏みデモ
「足踏み」はロボティクスでは二足歩行の基本となる重要な技術だ。足踏みする際に片脚で立つためにバランスが保持されていなければ実現できない。
ロボットから自動車へ、人が乗って再びロボットへ
「J-deite RIDE」は、BRAVE ROBOTICSとソフトバンクグループのアスラテックが開発と制作を手がけている。
両社は以前から「Project J-deite: 神器建造ジェイダイト」を展開。「J-deite RIDE」より小型ながら身長約1.3mの人型変形ロボット「J-deite Quarter」(ジェイダイト・クォーター)は2014年実現、様々なイベント等で公開してきた。
また、同時に4m級で実際に人が乗ることができる今回の「J-deite RIDE」の開発と実現は予告してきたが、その目標が実現した。人が乗った状態のまま変形もできる。
「J-deite RIDE」の変形シーンは下記の動画を確認して欲しい。最初の動画は無人状態でロボットモードからビークルモードへの変形だ。
■ 動画「J-deite RIDE」ロボットから自動車へトランスフォーム
次の動画は、ビークルモードに開発者のふたりが乗り込み、搭乗したままロボットモードへトランスフォームする様子だ。
■ 動画「J-deite RIDE」人が搭乗した状態で自動車からロボットへトランスフォーム
足踏み、ロボットからビークルモード、人が搭乗しての再度ロボットモードへ、この一連の公式動画も入手できたので紹介しよう。
■「J-deite RIDE」公式デモ動画
「J-deite」の名前の由来は「翡翠」(ひすい:Jade)からの造語。このロボットの動力源は実は「J-deite」鉱石の原石と言う。ボンネットの奥深くに埋め込まれていて、変形時に一瞬だけ見える。おそらくここが弱点となるため、変形時に最も危険な時間が一瞬だけ訪れる。なお、内蔵バッテリーはサブ電源として搭載している。
(※いや、動力源の記述はBRAVE ROBOTICSの石田氏によるフィクションです)
いつか見た「ロボットに乗りたい」という夢を実現
BRAVE ROBOTICSの代表取締役 石田賢司氏は「いつの日かロボットに乗ってみたいと思っていた。しかし、いつまでたっても乗れるロボットが出てこない。だったら自分でロボットを作ろう、と思った」と、J-deite RIDEにかけた想いを語った。
ロボット制御システム「V-Sido」
巨大ロボットの制御システムにはアスラテックの「V-Sido」(ブシドー)が使われている。「V-Sido」(V-Sido OS)はいわゆるロボットを動かすための制御ソフトウェアだ。J-deite RIDEの変形だけでなく、足踏みや各部の稼働、歩行/走行の制御など、動き全般に関わっている。V-Sidoを開発したチーフロボットクリエイターの吉崎氏は、経産省関連のプロジェクト「未踏IT人材発掘・育成事業」(以下「未踏」)に採択され、その成果によって経産省から「スーパークリエータ」に認定されている人物だ。
V-Sidoの最大の特徴は30cm程度のロボットアイドル(フィギュア)から等身大のアンドロイドまで、大きさにかかわらず共通のシステムで制御することができるスケーラブル性だ。
日米ロボット対決で注目された、水道橋重工の4m級ロボット「クラタス」にもこの技術が導入されている。
実際にJ-deite RIDEをコントロールしているソフトウェア画面を見せてもらったが、J-deite Quarterと同じシステムを使い、サーボとPLCとの通信等を含めてJ-deite RIDE向けにセッティング変更されたものが動いていた。質量ではJ-deite Quarterの約40倍にも巨大化しているJ-deite RIDEが同じ制御システムで制御できるこの技術が、このプロジェクトにおける開発工数の短期化に関わっていることは間違いないだろう。
また、アスラテックでは遠隔ロボットコントローラー「V-Sido WebConnect(ブシドー・ウェブコネクト)」という遠隔操作システムも開発し、商用化している。例えば「Pepper」や富士通の「ロボピン」などを遠隔から操作して動かしたり会話することができる。この技術と「V-Sido」を連携し、VRゴーグルやさまざまな操縦方法を用いることで、この巨大ロボットを自分の分身のように遠隔動作させることも技術的には可能だろう。
J-deite RIDEは遊戯用変形ロボットとして活用
ロボットの開発には膨大な費用がかかる。現実的にはそれをビジネスに繋げられるかが重要な要素となってくる。「J-deite RIDE」の商用化を計画し、後押ししているのが三精テクノロジーズだ。遊戯機械、舞台機構および昇降機などの設計・製造などを手がけている。「J-deite RIDE」をテーマパークやアミューズメントパーク、イベントなどで活用したいとしている。
早速、2018年4月28日(日)から5月6日(日)まで、ツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)で開催されるイベント「ゴールデンウィーク ドキドキフェスタ ~働くクルマ大集合~」において、5月5日限定ながら一般にも公開される予定だ。
また海外での展開も視野に入れ、今年11月に米国フロリダ州で開催される世界最大級のアトラクション関連トレードショー「IAAPA Attractions Expo 2018」にも出展すると言う。
また、今後はアミューズメントパーク向けの変形ロボット型遊戯機械の本格的な事業化に向け、「変形するゴーカート」や「園内パレードでの変形デモンストレーション」などを活用することを検討している。(下記がそのイメージイラスト)
「J-deite RIDE」の事業化を進めているジェイダイト・ライド有限責任事業組合は、J-deite RIDE に関して協賛企業を引き続き募集している。協賛企業は、展示やプロモーション、イベントでの実演などに J-deite RIDE を活用できるとしている(LLCについては以前のプレスリリースを参照)。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。