次世代のサイエンティストを育てる国際高校生ロボコン「FIRST Robotics Competition」とインターンシップ

今年も高校生による国際的なロボットの競技大会「FIRST Robotics Competition」(FRC:国際高校生ロボコン)が開催されました。FIRSTは27カ国から来た合計9万人の学生たちからなる 3,600以上のチームが頂点を目指す国際大会です。10歳以下のチームで構成されるカテゴリーもありますが、FRCは年齢では一番高い、15~18歳が参加するコースです。日本から出場する場合、大会のクライマックスは、3月21日〜3月27日のハワイ大会(ホノルル)と、それを勝ち抜いたチームが集まるチャンピオンシップ(デトロイト:4月24日〜5月1日)です。

国際的なロボットの競技大会「FIRST Robotics Competition」NVIDIAのブログより


日本のチーム「Indigo Ninjas」は残念ながら敗退

日本からは2014年に結成された「Team 5701 Indigo Ninjas」が参加しました。彼らは以前、ロボスタの記事でも取り上げましたが、日本で初めてFIRST 日本支部の認定を受けたFRC進出チームです。高校生のチームのため、渡航や活動に関する資金をクラウドファンディングで募集し、みごとゴールを達成、資金的にも無事、ハワイ大会に出場することができました。(メディアスポンサーとしてロボスタも参加しています)
Indigo Ninjasはハワイ大会で6勝7敗と健闘しましたが、37チーム中27位、決勝のメンバーに選ばれず、残念ながら最終予選で敗退してしまいました。今後の活躍を期待したいと思います。

2014年に結成された「Team 5701 Indigo Ninjas」

このFRC、ディープラーニングを活用したAI分野で注目されている「GPU」のメーカー、NVIDIA社が同社の記事ブログで関連記事を発表しました。なぜNVIDIAがブログで触れているかと言うと、同社2014年からFRCのイベント・スポンサーとして支援し、また高校生で構成されているいくつかのチームの支援もしているからです。昨年は、ロボットなどの組み込み型コンピュータボード「Jetson TX」シリーズの提供も行ってきましたが、今年は資金的な支援とメンター的な要素でバックアップが行われたようです。Indigo NinjasもNVIDIAの資金的な支援とNVIDIAの従業員によるアドバイスを受けました。
なお、イベントのスポンサーは、Googleやクアルコム、3M、NASAなども名前を連ねています。次世代のロボット工学やAIに関するサイエンティスト、開発者の育成を支援していく、という姿勢がみてとれます。


NVIDIAとFRC

NVIDIAのブログによれば、FIRST 女子チーム「スペース・クッキーズ」 (Space Cookies) も支援しているチームのひとつです。ガール スカウトと NASA から支援を受けているチームですが、そのメンバーのひとり、17歳のグレース・ラム (Grace Lam) さんは米シリコンバレーのパロ・アルト高校の学生で、DIGITS を使った画像分類に関する「Deep Learning Institute ラボ」のリーダーも務めています。また、NVIDIAの昨夏のインターン生でもあると言います。
イベント期間は6週間、その間、ロボットを設計して開発し、ライバルチーム相手に特定のタスクを実行します。グレースさん自身も、そうした時間を過ごしつつ、FIRST に参加する他の学生たちに対しても、NVIDIA Jetson スーパーコンピューターとディープラーニングについて、ワークショップで教えていたと言います。

グレースさんは「NVIDIAでのインターンシップの最中、私は素晴らしいメンターやリソースに恵まれましたが、多くの学生たちは、私と同じような機会を利用できず、ディープラーニングに取り組む糸口を見つけられていないということに気づきました。AI とディープラーニングは、ロボット工学、つまり FIRST だけでなく産業全般にとってきわめて重要です」と話しています。

左:ハワイ大会の様子(「Team 5701 Indigo Ninjas」のブログより) 右:FIRST 創設者のディーン・ケーメン氏が、グレースさんに優秀賞を授与した様子(NVIDIAのブログより)

NVIDIAは、カナダ、チリ、メキシコ、トルコ、日本など、6カ国の104のチームを支援したと発表しています。これは昨年の2倍の実績です。その中に日本のチーム「Indigo Ninjas」も含まれていました。スペース・クッキーズを含む 43 のチームは、ヒューストンとデトロイトで年内に開催される待望の世界大会へと進出することができた、としています。


ロボット開発やディープラーニングに興味のある学生支援プログラム

NVIDIAは今年の夏も、高校生向けのインターンを開催する予定とのことです。国際ロボコンに向けての支援については参加チームに対してNVIDIAと直接アプローチによって実現するようですが、NVIDIAは日本国内でも、高校生を含めて学生が参加できるイベントを定期的に開催しています。ディープラーニングやロボットを勉強したい、という学生はNVIDIAのイベントの最新情報を定期的にチェックするといいかもしれません。
NVIDIAのイベントやFIRSTについては、それぞれ下記のホームページに掲載されています。
また、ロボット関連のインターン制度では「Jetson」開発に関する動画が公開されています。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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