オンキヨーのスマートスピーカー「G3」(Googleアシスタント対応)と「P3」(Alexa対応)は、なぜサイズや仕様がこんなに異なるのか?

スマートスピーカー製品を中心に音声アシスタント搭載機器の開発を積極的に進めているオンキヨー株式会社。
前回の記事「【新感覚!】首にかける「AIスマートスピーカー」は自転車でも家事でも使えるウェアラブルスピーカー!「まるで音のヘルメット」」では、スマートスピーカーの新しい利用シーンについてお話を聞いた。今回は、同社のスマートスピーカー「G3」と「P3」の開発秘話を中心に、GoogleアシスタントとAmazon Alexaとの違いなどの話を聞きたいと思う。


2つのスマートスピーカー製品「G3」(Googleアシスタント)と「P3」(Alexa)

アンプやスピーカー、コンポ製品など、高品質な音響技術で知られるオンキヨーは、スマートスピーカー関連製品の開発を積極的に展開している。音声アシスタントの連携にも積極的で、「Amazon Alexa」と「Googleアシスタント」にそれぞれ対応した製品を既にリリースしている。更には独自のAIプラットフォーム「Onkyo AI」に対応した製品の開発も発表。これほど、音声アシスタントのバリエーションを展開しているメーカーはまだ数少ない。

Googleアシスタント対応の「ONKYO G3」(左)と、Amazon Alexa対応の「ONKYO P3」(アマゾンのリンク)。並べてみると、同じメーカーが同時期に開発した製品とは思えないほどデザインに違いがある。G3は木製のメインボディだ。また、音質や機能面でも大きく異なっている。

前回も少し触れたが、既にオンキヨーが製品化している高音質のスマートスピーカーには2機種あり、音声アシスタントに「Googleアシスタント」が対応する製品が「G3」、「Amazon Alexa」が対応する製品が「P3」だ。この2製品、音声アシスタントの違いだけでなく、サイズも仕様も音質も異なる。なぜ、Googleアシスタント対応のスマートスピーカーと、Amazon Alexa対応のスマートスピーカーで、機能のデザインやボディの筐体など、仕様がまったく異なった製品に至ったのか、以前から疑問だった。

異なる音声アシスタントに対応した製品を2つラインアップする場合、ボディや機能は同じものを採用した上で、Alexa対応モデルとGoogleアシスタント対応モデルをそれぞれ製品化した方がプロダクト開発としては簡単で短期間で行えるはずだし、生産も効率的なはずだ。

それなのに、なぜあえて材質や価格、機能、デザインとすべてに異なる2つのプロダクトとして用意したのだろうか?
対応する音声アシスタントと、スピーカーの音質性能や特徴に関連性や相関性があるのだろうか?

これは両方開発しているオンキヨーに聞くべきだ、聞くしかない、と以前から思っていたのだ。この疑問について、率直に聞いてみた。


なぜ「G3」(Googleアシスタント)と「P3」(Alexa)であんなにも仕様が異なるのか

編集部

「G3」と「P3」ではサイズも材質もずいぶん異なるスピーカー製品になっています。仕様も異なります。例えば、私が一番に違和感を感じたことは、「G3」はBluetoothに対応していてスマートフォンとの接続がとても簡単です。スマートフォンを中心に音楽文化を楽しむ最近の若者の傾向を反映した製品だと感じます。また、音質面でも低音が強調されていて、高音質なことが解りやすい。
一方で「P3」は低音もきれいに出ていますが、低音が強調されているというより低音から高音までバランス良い高音質を鳴らしてくれる印象です。「P3」はBluetooth接続に対応していない点も驚きましたが、その代わりなのか「DTS Play-Fi」に対応するなど、多機能さがひとつの特徴になっていると感じました。
この製品コンセプトの違いは、音声アシスタントの違いと何か関係性があるのでしょうか。

宮崎(敬称略)

関係ないとは言えません。
それぞれのプロジェクトがもともと別のものとしてスタートし、それぞれが独立して自由に開発して製品化に至った結果、デザインも音質も機能性も異なる製品になりました。その過程でそれぞれ音声アシスタントの違い、すなわちAmazon AlexaとGoogleアシスタントの違いが反映されている部分はあります。両者はコンセプトや考え方、機能や制約が異なるものだからです。

オンキヨー株式会社 AI/IoT事業推進室 室長 宮崎武雄氏

編集部

興味深いお話です。Amazon AlexaとGoogleアシスタントでは、製品開発においてそれぞれプラットフォーム環境にどのような違いがあるのでしょうか?

宮崎

例えば、Googleアシスタントでは、アプリとして「Actions on Google」を使うことが前提になっています。利用できるアプリに制限がありますから、サードパーティは”スマートスピーカーの開発において音質以外で差別化する機能や要素が出しにくい”というのが実状です。一方、Amazon Alexaではサードパーティの持つ技術を盛り込む要素が大きいと言えます。Amazon Alexaで使えるアプリ、つまりスキルの場合はサードパーティのアプリやサービスと連携することかできるからです。
「P3」はおっしゃるとおり多機能な製品です。例えば、Wi-Fiに対応して「Play-Fi」というマルチルームでも楽しめる機能も入れています。これらの多機能を活かすためにはAmazon Alexaのしくみの方が適していたということです。

河村(敬称略)

マルチルーム機能は、北米を中心に「複数の部屋で共通の音楽をかけましょう」というニーズを具体化したものです。「P3」はこの機能に対応することを前提に、マルチルームで高音質を楽しめる小型のスピーカーという視点で開発した製品です。「Play-Fi」でスマートフォンのスピーカーとして利用できるため、Bluetooth接続の機能は入れませんでした。
一方、Googleアシスタントと連携すると「Play-Fi」を使うことができないので、「G3」はワイヤレスBluetooth対応スピーカーとして、手軽にご利用頂けるように開発し、その上で高音質を追求しました。こうした背景から、Googleアシスタントと連携して、かつ気軽に使えて高音質な小型のスピーカー製品という位置付けに仕上がっています。

オンキヨー株式会社 開発本部 開発技術部 部長 河村文昭氏

八木(敬称略)

デザイン上もそれぞれ連携する音声アシスタントを反映したものになっています。Googleアシスタントの場合、Google Homeに見られるように、複数の白いLEDが点灯する構成が基本ルールとなっています。「G3」はそのようにLED配置をデザインに組み込む必要がありました。

白いLEDがGoogleアシスタント対応製品のしるし

「P3」にはデザインの制約はなかったものの、青いリング形状のLEDを採用してAmazon Alexaらしさを出しています。

「Onkyo P3」は青いリング状のLEDがAmazon Alexa対応らしさを醸し出している

こうした背景もあって、スピーカーが重視する音の要素を共通化する必要もないし、開発の過程ではそれぞれ独自に開発していった方がむしろ早かったということですね。

オンキヨー株式会社 AI/IoT事業推進室 副室長 八木真人氏

宮崎

「P3」の低音域が強いのは北米の人が好む音質を意識しています。「G3」は世界的に評価されるように低音から高音まで全域を意識して仕上げています。すなわち、音声アシスタントに合わせて機能を設定したり絞り込んだり、音声アシスタントに合わせてデザインを施したり、それぞれの機能を追求した結果として、別の特色を持った製品に仕上げたのです。



スマートフォン世代の若者にとっては、スマートフォンの外部スピーカーとして簡単にワイアレス接続できるBluetoothスピーカーはお馴染みの機器になりつつある。「G3」は、まさにそのような使い方が可能な製品と言える。一方、「P3」はBluetoothには対応していないものの、「Play-Fi」に対応していることには大きな意味があると言う。それは・・

宮崎

ユーザーが「Play-Fi」で音楽を楽しむ大きな理由のひとつが「ハイレゾ対応」です。Bluetoothでは仕様上、最上位の規格のみしかハイレゾ音源の再生には対応できません。一方、Wi-Fiをベースにした「Play-Fi」は、ハイレゾ音源の再生を高クオリティのままで楽しむには有利だと言えます。CD音質のクオリティを超える”「ハイレゾ」音源(楽曲)に対応して欲しい”というユーザーの声に応えるためにも「P3」はPlay-Fiに対応している意味があるのです。
また、最近はレコードプレイヤーが一部のユーザー層でブームになっていますが、Play-Fi対応のレコードプレイヤーを買ってきて接続し、マルチルーム機能で再生して楽しむといった使い方も人気が出ています。このように「P3」はオーディオ活用機器として高機能・多機能な製品になっていますので、「G3」とは違いがあるのはむしろ、ラインアップとして良いものになっていると感じています。



まとめると「P3」と「G3」は、それぞれの開発チームが独自に開発したできた製品であり、ソフトウェアやサービス提供の自由度が比較的高い「Alexa」対応の「P3」は高機能なdts Play-Fiを実装できた。それはハイレゾ楽曲の再生にも対応するシステムだ。こうした背景もあり、P3のテイストは米国市場を意識したアメリカンサウンドチューニングとなったようだ。野太い感じの低音が魅力だ。
一方の「G3」は、Googleアシスタント環境ではソフトウェアやサービス提供の自由度が比較的低いので、Play-Fiには対応できず、手軽にスマートフォンと接続できるBluetoothワイアレススピーカーの側面を持った。音質はどちらかというとヨーロピアン・サウンドのスタイルで、楽器やボーカルの音もはっきりさせつつ低音を心地よくパンチを聞かせている。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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