三菱地所は5月31日、日本信号が開発中の自動運転が可能な掃除ロボット「クリナボ」の導入試験の様子を東京丸の内で報道陣に公開した。「クリナボ」は同時に公開したソフトバンクロボティクスの自動運転ロボット「RS26」と比べると本体が小型で幅が小さい。そのため、比較的狭い通路を通ることできるため、小中規模の施設を自動清掃するのに向いている。水洗浄タイプの「湿式」と、「乾式」タイプが別製品としてラインアップされる予定だ。
三菱地所にとって「クリナボ」の導入試験は今回が初めて。しかし、開発元の日本信号によれば、この清掃ロボット自体は既に他の企業で実証実験が重ねられてきている。主に鉄道会社のグループ企業が運営するショッピングモールなどの施設で実証実験が行われていると言う。また、マンションのロビー(エントランス)や通路(廊下)などで使用したい、という問合わせもある。現時点では実証実験と開発をおこなっているところで、発売日や価格は未定。
清掃業界の高齢化と人手不足を解決したい
クリナボは誰でも操作しやすく、人と協業可能な自動清掃ロボットを意識して開発が進められている。清掃スタッフの課題となっている高齢化、募集してもスタッフがなかなか確保できない求人事情が開発の背景となっている。日本信号は信号機や駅のホームドア、自動券売機や自動改札機などの開発や提供を行っている。その関係から、鉄道会社のクライアントが多く、そのグループ企業から清掃やメンテナンスについて、このような要望が寄せられた。そこで、本体を含めてオリジナル設計の日本発の自動運転掃除ロボットとして自社開発することに至ったと言う。
前回の記事で紹介した「RS26」は乗って操縦してルートを記憶するタイプだが、「クリナボ」は清掃スタッフが押して移動するタイプ。ティーチング機能があるので、スタッフが押して移動したルートや地図を記憶するしくみとなっている。
登録できるルートの数は100通り。一度ルートを覚えれば、ボタンを押すだけでルートに沿った自動走行が可能だ。自動走行する速度はある程度は指定することができる。
回転半径が小さいことが特長のひとつ
「クリナボ」にとって「RS26」との最も大きなちがいのひとつはサイズだ。クリナボは本体の幅がスリムに設計されているため、約800mmの幅があれば通行と清掃が可能だ。また、回転半径にも大きな違いがある。「RS26」は回転半径が約3m必要なのに対して、クリナボは1.7mで回転できるため、一般の通路や廊下など、活用シーンは拡がると見られている。三菱地所は、大規模な範囲を一気に清掃するのには「RS26」が優れているが、それより小さい敷地や通路などは「クリナボ」が適しているので、使い分けて有効活用したい、考えだ。
また、人や障害物を避けて清掃できるため、三菱地所では「実証実験を積み重ねて検証が必要だが、クリナボは営業時間内でも自動走行清掃が可能かもしれない」と期待をのぞかせた。
なお、「クリナボ」も「RS26」と同様、壁ギワや柱のキワは掃除することができないので、清掃スタッフが行うことになる。
LIDAR(レーザー)と超音波センサーで周囲を検知して自動走行
LIDAR(レーザー)と超音波センサーで周囲を確認しながら自動走行する。レーザーを使用したセンサーの場合、光とその反射を使って周囲の物体を検知する。光はガラスを通過してしまうため、ガラスのドアや壁、窓を正確に検知できないことがある。そのため、超音波センサーを併用して、ガラスのドアや壁も正確に検知できるようにしている。
走行にはRGBカメラは使用していない。ただし、記録用にはドライブレコーダーを搭載しているので、万が一のときにはドライブレコーダーが撮影したカメラ映像を確認することができる。
スマートフォンに通知する機能も搭載されていて、作業完了時や作業状況を清掃スタッフにメールで通知することができる。
■動画 三菱地所-日本信号「クリナボ」自動走行清掃デモ
■動画 三菱地所-日本信号「クリナボ」人が飛び出して停止&小回りがきくデモ
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。