ルンバでオフィスビルの自動清掃はできる? 三菱地所が自動運転掃除ロボットの実証実験デモを公開 (3)
三菱地所株式会社は、2018年4月より、東京・丸の内エリアにおいて、様々なロボットやAIを段階的に導入することを検討していくことを発表している。その一環として、人手不足の解消と働き方改革を目指し、3つの清掃ロボットのテストの様子を報道陣に向けて公開した。
ひとつは広範囲を効率的に自律走行する大型のスクラバー、ソフトバンクロボティクスの「RS26 powered by BrainOS」。丸ビル付近の地下通路の自動清掃のデモを行った。
ふたつめはそれより小型となる日本信号製の自動清掃ロボット「クリナボ」。新丸ビルの待合スペースなどでテストを行い、中小規模の清掃に向くスクラバーだ。
スクラバーはタイルや石材などの床に適した清掃機器だが、一般企業も含めて多くの事業者が気になるのは、カーペットなどの廊下に落ちているゴミ類をきれいに清掃してくれる自動走行ロボットだろう。三菱地所はユニークなことにこれをアイロボット社の「ルンバ」で対応できないかと実証試験にのぞんだ。
ルンバはオフィスの清掃にも成果を出す
三菱地所はルンバの、家庭用掃除機ではあるものの吸引力(ゴミを吸い取る性能)や自走能力に優れている点に着目した。これを深夜のフロア清掃に活用、社員が帰宅したフロアのゴミ取りを自動化することで、掃除スタッフの軽減をはかりたい考えだ。
そこで三菱地所は、実際に新丸ビルのオフィスフロアにルンバを試験導入し、2週間の実証実験を行った。実験の詳細は、フロアに人がいなくなる深夜の時間帯に、2台のルンバの清掃をスタート、ルンバは充電ステーションから自動的に走り出し、自律走行によってフロア内を清掃、バッテリー残量が少なくなれば自動的にステーションに戻り、充電が完了すると再び自動的に清掃に戻る、という作業だ。その結果、様々なことが解ってきたと言う。
実証実験を行うフロアは、2台のルンバが半分ずつのフロアを担当して1台あたり約137平米、実働3時間31分の清掃作業を行い、朝までに作業を完了して充電ステーションに戻っていると言う(清掃が約2時間、充電時間が約1.5時間)。
ルンバは給湯室に設置された充電ステーションを自律走行で出発し、充電がなくなるとステーションに戻り、90分間の充電を行い、フル充電になると再びフロアに出て、自動的に掃除を続ける。約3時間半の作業でフロア全体の掃除を終えて、朝には再びステーションに戻っている、と言う。
赤外線装置を設置することでルンバが行動する範囲を限定することができる。例えば、トイレや階段など、ルンバが侵入してい欲しくない場所は赤外線装置を置く。また、2台のルンバはフロアを半分ずつに分けて掃除をするが、その境界線にも赤外線装置を置いている。
朝、出社した際にルンバのログを確認することで想定した範囲を清掃したかがわかる。実証実験期間中は、清掃漏れがあるかどうか、ゴミが残っていないかなどを目視で確認した。
アプリはアイロボット社がルンバ用に提供している標準のものを使用し、デモでは往復するだけの設定を指定して行われた(赤外線で入らない場所は指定できるものの、ルートの指定はできない)。ルンバは壁を検知してUターンしながら、ゴミを吸い取っていく。バッテリー残量が少なくなると、充電ステーションに自動で戻り、充電が完了すると清掃を再開する。
■ ルンバによるオフィスビルの自動清掃デモ
ルンバは灯りがないと正確な自走ができないため、深夜真っ暗になる廊下では期待した成果は得られなかったと言う。そこで、日中に点灯している照明の一部だけでもつけた状態で実行させると、自走しての掃除が可能になった。
三菱地所の担当者は「ルンバの清掃範囲は赤外線装置を使って指定が可能ですが、ルートの指定まではできません。そのため、清掃作業を見ていると同じところを何度も掃除したりと、効率的ではないなぁと感じることもありましたが、朝までの清掃作業結果を見ると、”やり残し”もなく、最終的には期待通りの範囲の清掃をしてくれていました。また、ルンバが汚れやゴミがひどいと判断した場合は”集中清掃”として何度も繰り返し清掃作業を行います。それも通知として残りますので朝にその部分を念入りに人が確認することもできます。実証実験では満足いく結果が出ていますので、本格的な導入を検討している段階です」とコメントしている。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。