スマートフットウェアを開発する株式会社no new folk studio(nnf)、株式会社NTTドコモと共同で39Meister事業を運営する株式会社ハタプロの39Meisterチーム、LPWA関連機器開発を行う株式会社グリーンハウスは、nnfが開発したシューズ向けのIoT標準モジュール「ORPHE CORE」をLPWAに対応させることで、運動能力や健康状態と密接な関係にある「歩き」や「走り」に関するデータを携帯回線に依存せずに伝送して解析を可能にするIoTモジュールの実験に成功した。
なお、同実験はLPWAネットワーク環境を提供する株式会社ミライトのLoRaWANネットワークを用いて行ったものだ。
株式会社ハタプロと株式会社NTTドコモによるジョイントベンチャー事業。ハタプロが培ったハードウェアの企画・設計・市場投入のノウハウと、株式会社NTTドコモが実践してきた知見や研究開発で蓄積したクラウド技術を融合し、法人企業やベンチャー企業におけるIoTプロダクトの企画から量産までの事業化を支援している。
独自に開発した「リーン型プロダクト開発手法」を導入し、最適な仕様策定、高速なプロトタイピング、知的財産や事業計画のアドバイス、最終製品の適量生産を実現。日本国内におけるLPWAの発展をハードウェア面で後押ししている。
「ORPHE CORE」とは
「ORPHE CORE」とは対応するシューズに取り付け可能なカートリッジ型のIoTモジュール。センサーやマイコンなどのすべての電子的機能が実装されており、歩行パターンを記録するモジュールやアスリートの運動解析を行うモジュールなど、実装する機能を変えることで様々なシーンに対応するモジュールが開発可能となる。
■【動画】ORPHE TRACK: The world’s first SHOE LOG PLATFORM(英語)
「ORPHE CORE」専用LoRaWANモジュールの開発
CES2018で発表した初期の「ORPHE CORE」では、6軸モーションセンサー・気圧センサー・振動モーターを搭載し、BluetoothLEモジュールを使ってスマートフォンやPCと接続することで、ランニングのケイデンス(時間あたりの歩数)やストライド(歩幅)、プロネーション(足首の回転)を3Dで再現して分析することができた。
今回、この「ORPHE CORE」のフォーマットに準拠したLoRaWANモジュールを、39Meisterチームとグリーンハウスが共同で、市場ニーズを探りながら仮説検証を繰り返し、短期に開発を進めるリーン型開発のノウハウを導入し開発。
「ORPHE CORE」がLoRaWANに対応することで、スマートフォンなどの携帯電話回線やデータ通信回線を経由せず、歩行や走りに関するデータを直接運動解析システムへと伝送しデータ連携することが可能となった。
豊洲エリアにおける実用性の検証
シューズに内蔵された通信機器にとって、歩行時には足と地面とが、それぞれ電波の障害になることも考えられ、また、着地の衝撃や圧迫への耐久性や、履き心地への影響も課題となっていた。
そこで、実際に通信機を内蔵したシューズを着用して歩行する実験を行うことで、今回開発したモジュールの有用性を確認するための検証を実施。
検証エリアは、実際の利用シーンとして想定される高層ビルが立ち並ぶ都市部として、ミライトがLoRaWANネットワークを展開している豊洲地区を選定し、LoRaWAN通信による実用性を確認した。
実験概要
場所 | 東京都 豊洲地区 |
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実施時期 | 2018年5月 |
使用機器等 | ORPHE CORE(LoRaWAN送信機)、LoRaWANゲートウェイ(ミライト社屋に設置された基地局装置)、通信アナライザシステム |
実験結果
「ORPHE CORE」を搭載したシューズを履いた歩行者が豊洲地区を周回し、LoRaWAN通信により歩行データを送信。シューズに内蔵されたデバイスにとってシューズ本体や人体、地面が常に通信の障害となる状況の中、豊洲駅を中心として、新豊洲駅から枝川地区までカバーする最長2km程度のエリアで安定したデータ通信を行うことに成功。
また、シューズ内への通信デバイスの格納においては、筐体の強度や履き心地なども課題となっていたが、10kmの歩行後でも筐体へのダメージは見られず、着用感についても、歩行者が通常のシューズとの差異を認識することなく歩行することが可能だった。
今後の展開
nnf、39Meisterチーム、グリーンハウス、ミライトの4社は共同で、ランニング以外にもスポーツ、フィットネス、ヘルスケアといった用途において、運動解析や見守りといった様々な機能と、それらを実現する通信インフラ・サービスの提供を検討。また、これらの機能で取得したデータを蓄積し研究することで、トラッキング機能による位置情報サービスにとどまらず、自治体や保険業での健康データ活用など様々なサービスへ連携させる予定だ。
さらに、「ORPHE CORE」のフォーマットに準拠した様々な機能を持つデバイスにより、スマートフットウェアを中心としたコネクテッドな社会を実現することに貢献していくと述べている。