ソフトバンクロボティクスが予てより実証実験を行ってきた大型スクラバー(水清掃車)「RS26 powered by BrainOS」(以下「RS26」)の発売日が8月1日に決まった。自動運転洗浄機向けのサービス名称を「AI清掃PRO」とする。
位置付けとしては「AI清掃PRO」対象機として「RS26」が第一号となり、本体価格は248万円、ほかにソフトウェア(クラウド)使用料として月額59,800円がかかり、60ヶ月の契約となる(ともに税別)。
大型スクラバー(水掃除車)「RS26」とは
「RS26」はソフトバンクロボティクスが次世代の自律走行式と位置づける、大型のスクラバー。綺麗な水を床に吹き付けてブラッシングし、汚れた水を負圧で吸い上げるシステムだ。
操縦してルートを記憶、あとは自律で清掃しながら走行
「RS26」の最大の特徴は、掃除するスタッフが乗って操縦したルートを記憶することができ(ティーチング)、記憶したルートを無人で自律走行して水清掃することができる点だ。
LiDAR(レーザーセンサー)と3Dカメラを用いて、障害物や人を検知することができる。清掃コース上に人が飛び出してくれば緊急停車し、障害物があれば避けたコースを自動的に判別して清掃を続けることができる。
なお、記憶できるルートは全部で60コース。
従来の自律清掃ロボットでは、パソコンやタブレット等を使って地図データを設定したり、コースを指定するものが多かったが、RS26の場合、操縦してルートを記憶するため、パソコン等に不慣れな清掃スタッフでも簡単にコースの設定ができる点で評価が高い。
■ティーチングから自律走行、飛び出し時の緊急停止、障害物対応時のデモ
自律走行は時速4キロ、約3時間半の清掃が可能
「RS26」はボディが大型のこともあり、比較的大規模な施設の清掃に適している。直進であれば幅1.2m以上が必要で、右左折時は1.5m、Uターン時は3mの幅が必要となる。
ティーチングを行っているときは人による操縦で最高速度6km/h、自律走行時は直進で4km/hとなり、カーブなどの際は自動的に減速する。超えられる段差は2cm程度で、スロープの自律走行はできない。
フル充電に必要な時間は8〜12時間で、バッテリーの駆動時間は4時間程度。しかし、清掃に使用する水などの使用(消費)を考慮すると、1回に実質3.5時間程度の最大稼働時間になると言う。
スマホとの連携で清掃をお任せ
スマートフォンと連動する機能があり、RS26が清掃を完了するとスマホに通知が来るほか、緊急事態が発生した場合も通知される。この機能があるため、掃除スタッフはスマホを持って自身の持ち場を掃除しながら、RS26の持ち場はロボットに自律清掃を任せておくことができる。
LiDARはルート上に何か異常を発見すると、それが動くものか、静止している物かを判別する。動いていれば人やカートなどと判断して緊急停車する。
静止物の場合、避けて通れる迂回ルートを模索する(複数の迂回ルートがあれば広い方を選択する)。もしも、ルートが完全に塞がれている場合は、前述のように走行を中断し、管理者に写真付きでメッセージを送信して報告する。
■障害物を避けて通る自律走行デモ
人が操縦して障害物を回避、その後再び自律清掃を続行
RS26には自律ロボットとして特筆すべき機能が備わっている。それは、完全にルートが通れない状態の時、スマホに通知した後、スタッフが障害物を大きく避けて操縦してルート上にRS26を戻した場合、RS26は続きのルートを自律的に清掃走行し続けることができる機能だ。下記のデモ動画でその様子を見ることができる。
SIMを装着
RS26本体には「SIM」がセットされていて、4Gでクラウドと通信を行う。主にルートデータの保存や、OSなどソフトウェアのアップデート、ユーザーのスマホに通知する際に4G通信を利用する。そのため、地下などで4G通信が届かない場所では、スマホとの連携はできない。ただし、自律走行のデータは本体のシステムにも持っているため、4G通信が届かない場所でも自律走行は支障なく行うことができる。
5年間で約600万円
「RS26」を導入するコストは本体価格が248万円で買い切り、ほかにソフトウェア(クラウド)使用料として月額59,800円、60ヶ月の契約となる(ともに税別)。そのため、5年間で総額248+354万となる。故障時の修理やメンテナンス料金などの保守サービス料はこれには含まれず、現時点では未定だ。今後、サービスマンを現場に派遣してオンサイトで修理など対応できるサードパーティと連携してサービス提供していく予定だ。
同社の説明では「単純な人件費との比較の例で言えば、時給1,000円のスタッフが毎日3時間清掃作業をしていると仮定すれば、月間で90,000円となる。それが月額59,800円と初期導入費に置き換えられる」とした。また、「現状ではスタッフの人手不足が深刻でも募集しても応募がない、という現場もある」として、自律型清掃ロボットがコスト削減だけでなく、人員不足を解決するソリューションになることも強調した。
既に4施設が先行導入
RS26については、既に4施設(4社)が先行導入を行なってきた。アリオ亀有(アイング株式会社)、ゆめタウン廿日市(株式会社イズミテクノ)、大阪駅(株式会社ジェイアール西日本メンテック)、阪急西宮ガーデンズ(阪急阪神クリーンサービス株式会社)の4施設だ。
そしてこれらの先行導入を経て、8月1日の本格サービス導入開始へと踏み切った。
人件費削減や人手不足という課題解決に、自動化で挑むソフトバンクロボティクス。成果が問われる挑戦の夏がいよいよはじまる。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。