AIはどのように野生動物の密猟や被害を防ぐのか? マイクロソフトの「AI for Earth」のとりくみ

米マイクロソフトは地球の未来のために AI を活用するマイクロソフトの新プログラム「AI for Earth」を2017年7月に打ち出している。重大な環境問題の解決に人工知能の力を活用することを目的とするもので、このたび、「AI for Earth」の現在の活動とともにコンゴ共和国でのマルミミゾウの保護や密猟の防止に活用されているAI関連技術をブログで紹介した。


野生のマルミミゾウの個体数が1/3に減少

Microsoftのブログによれば、コンゴ共和国では熱帯雨林の一部で音響センサーが導入され、収集した音声の中から絶滅危惧種の「マルミミゾウ」の鳴き声を識別する研究が行われていると言う。
このマルミミゾウ、密漁によって数が急速に減少しているため、密猟の摘発等による保護が急務となっている。過去数10年間で象牙目的の密漁によってアフリカでの個体数は3分の1に激減したとの試算がある。アフリカのサバンナゾウの数も過去7年間で、密漁等によって30%も減少していると言う。密猟から守るにはマルミミゾウの現状の個体数、行動範囲や移動ルート等の特定が必要だ。
マルミミゾウはアフリカゾウの一種だがアフリカゾウとの区別は難しい。日本の動物園でも飼育されてきたが、1990年〜2010年頃にかけて、飼育されているマルミミゾウがDNA鑑定の結果、実はアフリカゾウだったという出来事がいくつかあった。それほどに識別はむずかしい。


AIがマルミミゾウの鳴き声を識別

研究者は個体数の推定を頻繁に行い、移動を記録したり、安全性を向上させたいものの、航空写真では個体識別は困難だ。そこで開発されたのが、膨大の音声データの中からAIがマルミミゾウの鳴き声のパターンを識別する技術。ディープラーニングによる機械学習によって、マルミミゾウの声の特徴量を抽出し、高精度に識別しようという試みだ。これによって航空写真に変わって個体数の推定や移動の記録ができるようになると見込まれている。
下記の動画映像から熱帯雨林や動物たちの鳴き声のほか、様々な音響が収集できる様子が具体的にうかがえる。(© Elephant Listening Project:冒頭の画像も)

■AI and Elephants: Sounds From Dzanga Bai (Microsoft公式チャンネル)


クラウドサービスとAIのAPIで作業時間を効率化

Microsoftは兼ねてから、地球のためにAIを活用する必然性について、限られた予算の中でAIのような高度なハイテクを使うには「AIの民主化」が必要で、演算にはクラウドのようなハイパフォーマンスが欠かせないと主張してきた。今回の事例はそれを裏付け、ハイテクを実践するための最適なチャレンジのひとつとなりそうだ。
コンゴ共和国の熱帯雨林で収集された数カ月分の音響データは膨大で、人力で視聴して鳴き声を判別するには相応の時間が必要となる、そこをAIが判別することで自動化、効率化するわけだが、それでもコンピュータが数ヶ月分のデータを処理するのに従来は約3週間を要していた。そこをMicrosoftのクラウドサービスAzureへ移行することを計画している。その作業が完了すると、同じ作業がわずか1日で処理できるようになる見込みだ。


野生動物や地球環境を守るためのAI活用

マルミミゾウに限らず、野生動物の動きをトラッキングすることで、著しく動きの鈍くなった動物を確認したり、動物が人間の居住地に向かい畑の作物を荒らす可能性がある場合は、保護区管理者や農家の人が動物を安全な方向へ導くこともできる。

マイクロソフトは他にも南アフリカのサイなどの密猟と戦う団体と協力し、密猟のリスクを検出・評価するリモートセンシングシステムを構築した。
ディープラーニングわ含めた機械学習で野生動物を保護できる項目として下記のような例をあげている。


・音響データから野生動物の識別、個体数や移動ルートの把握
・航空写真や監視映像から動物種別の識別
・密猟ルートの予測とパトロールルートの最適化
・野生動物の生息域の把握と行動の変化の検知



野生動物や地球環境を守るためにAIが活用され、その膨大な演算環境をクラウドが支える。AIは人間のやる仕事を自動化し、効率化する。時には人間が判別するよりも高い精度で成果を上げるケースも出ている。Microsoftをはじめとした、ICT企業のこうした取り組みやプロジエクトを影ながら応援していきたい。


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ロボスタ編集部

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