無人自動走行による移動サービスは、過疎地等において、公共交通の運営コスト抑制、運転者不足の解消や徒歩移動の負担軽減等の観点から、自治体や地域交通事業者からのニーズが高まっている。
経済産業省・国土交通省では、「未来投資戦略2018(平成30年6月15日閣議決定)」に基づき、無人自動運転移動サービスを2020年に実現することを目指し、「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業」を実施している。
こうしたことを背景に、ソフトバンクグループのSBドライブは「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」を受託した、産総研(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)からその事業の一部である、茨城県日立市で行われる「ラストマイル自動走行の実証評価」に参画することを8月28日に発表した。
具体的な実証実験の内容
「ラストマイル自動走行の実証評価」は、茨城県日立市の日立電鉄線跡地を活用した定時性、速達性に優れたバス高速輸送システムである「ひたちBRT」の路線など合計3.2kmにおいて、2018年10月22日から28日まで自動運転レベル4相当の技術を搭載した小型バスを走行させて実証評価を行うとともに、公募により一般の人にも試乗してもらうことでその受容性を検証するものだ。
なお、産業技術総合研究所は、今回の実証実験での自動運転バスの運行は、運転席にはドライバーが着座する(自動運転のレベル2の位置づけでの実験)ものの、専用道路上では自動運転のレベル3相当の運用として不具合時を除いて自動運転システムが運転主体となった自動走行での実証を予定とのこと。一般道区間でも、自動運転機能での走行をしつつ、ドライバーの負担軽減を目指した自動運転のレベル3相当での実証を想定している。
同社の役割
同社は「ラストマイル自動走行の実証評価」において、自動運転技術を研究・開発する先進モビリティ株式会社が市販の小型バスをベースに改造した車両と、SBドライブが開発中の遠隔運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を活用して、ルート設定などの自動走行のための準備や、遠隔地から運行状態を把握し車内外の安全の確保などを行う。
• 複数台の車両ごとの運行管理
• 車外・車内の映像モニタリング
• 遠隔操作機能
• 緊急通話機能
また、一部の運行では、遠隔運行管理者とバス利用者とのコミュニケーションツールとして、実際の人の目や鼻、口をカメラで検出し、それらの動きを遠隔地のディスプレー上に表示されたキャラクターの表情にリアルタイムで反映することが可能となる、株式会社SpiralMindの「アバターテレポーテーション」技術を活用。
この技術と「Dispatcher」を連携させ、遠隔地にいる運行管理者が自動運転バス内のディスプレーに表示されたキャラクターを通して車内アナウンスを行うとしている。これは以前にも福岡空港で国内線と国際線をつなぐ自動運転バスのデモ走行で行われた経緯がある。
同社は今後も各地域での実証実験を通して、自動運転バスの実用化に向けて取り組んでいくと述べている。