Pepperを導入したオーナー企業と、ロボアプリ等を開発する認定パートナーが一丸となってチームで競うコンテスト「Pepper Owners Challenge 2018」が、2018年9月28日に「WeWork新橋」で開催された。コンテストには46チームがエントリーし、最優秀賞には「聖路加国際病院」と「エクスウェア」チームが提案した「ICアシスト for Pepper ~「人に寄り添う」検査説明の実現~」が選ばれた。
コンテストの詳細は既報「患者が抱く医療への不満をAIとロボットで解決!「Pepper Owners Challenge 2018」の最優秀賞は聖路加国際病院とエクスウェア」を参照。
最優秀賞受賞チーム インタビュー
今回は最優秀賞に輝いた「聖路加国際病院」と「エクスウェア」チームに喜びの声を聞いた。また、エントリーから立案の経緯、難しかった点などをインタビューで紹介したい。
写真左から学校法人 聖路加国際大学 聖路加国際病院の心血管センター・循環器内科 QIセンター 急性期看護学・臨床准教授 水野篤氏、腎臓内科 医師 孫楽氏、エクスウェア株式会社 AI・ロボティクスLAB 小井手有里氏、聖路加国際病院の呼吸器センター(呼吸器外科) ロボット手術センター 副医長 小島史嗣氏、エクスウェア株式会社 AI・ロボティクスLAB 松浦明夫氏
編集部
「Pepper Owners Challenge 2018」最優秀賞の受賞、おめでとうございます。今の気持ちを聞かせてください。
小井手有里氏(エクスウェア)
最優秀賞を受賞できたのは聖路加国際病院の皆さんのおかげだと感じています。システムをデベロッパーが考えるだけでは、現場の状況や課題がはっきりとはつかめず、推測で開発を進めてしまうのに対して、今回のように現場の生の声を直接、聞きながらアイディアを出しあえる機会を頂けたのは、とてもよい経験になりました。
編集部
今回のチームはみなさん、もともとお互い面識があったのですか?
孫楽氏(聖路加国際病院)
いいえ。このコンテストがきっかけです。お互いの立地が近かったこともあって、4〜5回は打ち合わせを行いました。こちらとしてもとても良い経験になりました。思い浮かぶ医療現場の問題点がバラバラにたくさんありましたが、それを開発サイドの方々と打ち合わせながら整理することができました。また、実際にシステムでどのようなことができて、どのようなことがまだできないのかも知る機会になりました。
編集部
今回受賞した「ICアシスト for Pepper」で示した問題点は、医療現場では以前から感じていたものですか?
水野篤氏(聖路加国際病院)
はい。以前から感じていたものです。もともと病院内でも新しいイノベーションを起こしたい、最新のICT機器の活用を試していきたいという気持ちがありました。その一環としてPepperの活用なども検討はしてきました。そこで今回のコンテストのことを知り、医療現場でPepperが実質的に役立つことは何なのか、Pepperならではの役割は何か、といった視点で議論することになったのです。
編集部
Pepperが医療説明を行うことに着目したきっかけはなんでしょうか
水野篤氏(聖路加国際病院)
これまでも医師や看護師の作業効率化のため、患者さんに見ていただく説明ビデオやDVDを制作してみたものの、なかなか真剣には観ていただけない、退屈な内容なら観ながら眠ってしまう患者さんも散見されました。どうやったら最後まで観てもらえるかという課題があったので、患者さんの興味をPepperを使って維持することはできないだろうか、などと考えていました。そこでこのコンテストにのぞむのなら、例えば「造影剤検査」を医師の代わりにロボットが説明するとしたら、どんなしくみが必要か、と検討して進めました。
編集部
今回のコンテストに参加して、”難しかった”と感じた点はどんなところでしょうか
孫楽氏(聖路加国際病院)
難しかったとは感じませんでしたが、強いて言えば、医療現場の問題点をシステム会社など、医療関係以外の方に理解して頂くことが大変でした。
小島史嗣氏(聖路加国際病院)
医療現場は保守的な部分もあって、病院外の方のアイディアを病院の中に取り入れるということさえ困難な環境だと言えます。もちろん安全性を担保するうえで必要な保守性もあってのことではあります。今回のコンテストは、病院外のみなさんと一緒に医療現場の課題に取り組むことになり、病院ならではの難しさを皆さんと共有しながら、着地点を模索する機会にもなったと感じています。
小井手有里氏(エクスウェア)
クラウドとの連携はロボットのシステム開発では既に主流になっていますが、病院の場合は個人情報の取扱の観点からクラウドやメールなどの利用に制限があるなど、個人情報の取扱が厳重に管理・制限されている点が特に勉強になりました。
編集部
ダヴィンチのような手術用ロボットではなく、Pepperのような会話ロボットが医療現場に入っていく可能性について教えてください。
小島史嗣氏(聖路加国際病院)
会話ロボットが術前の注意点や医療行為の説明を行うことは、実は親和性がとても高いと感じています。今回のコンテストでも他の出場チームの方々が提案されていた企業向けの「従業員のバイタルチェックや健康管理システム」や、介護施設の「院内の見回り」などはそのまま病院でも活用できるような、とても良いアイディアだと感じていました。近い将来、多くの病院でも実践できる機能だと思います。このコンテストがきっかけで、ICT開発企業の方々との新しいご縁が拡がればうれしいですね。
「Pepper Owners Challenge 2018」決勝大会の激戦を勝ち抜いた聖路加国際病院とエクスウェアチームの皆さん、本当におめでとうございます!