【IoT業界探訪Vol.24】ローソンの「未来のIoTコンビニ」オープンイノベーションラボに行ってみた

強力な流通網で私達の生活を支えているインフラ「コンビニエンス・ストア」。
続いて発生した災害では「コンビニ物資の配送車両が緊急車両に認定された」ことでも、改めてその存在の重要性を感じた人は多かったのではないだろうか。
そのコンビニには、IoTをはじめとして様々な先進技術が導入されようとしている。

前半となる今回は
・「巨大コンビニチェーン、ローソン」を舞台にどのようなICT化が検討されているのか。
・コンビニでのサービスに様々なテクノロジーが実装された未来ではどのような体験ができるようになるのか。

の実証実験をしている株式会社ローソンの次世代店舗、オープンイノベーションラボについて、ローソンオープンイノベーションセンター、マネージャー※の谷田詔一さんに話を聞いた。※(当時。現在は三菱商事シリコンバレー支店に勤務)

なお、今回紹介する様々な施策は10月16日~19日に開催されるCEATECの特別エリア「IoTタウン2018」にて展示される予定なので、そちらもぜひ体験してみてほしい。


オープンイノベーションラボに見る、未来のコンビニの風景

では、まずオープンイノベーションラボがどのような店舗なのかを紹介してみよう。
オープンイノベーションラボは品川にほど近いオフィスビルの一角にある。
店内は見慣れたコンビニに近いが、カメラ、ロボット、サイネージなどが配され、商品棚に設置された棚札も電子ペーパー製。
一般客の姿がないためか独特の違和感がある風景はどこか現実離れしており、まるで近未来SFドラマのセットのようだ。


といってもこの施設は撮影のために作られたわけではない。
近い未来に店舗に実装される可能性がある技術を検証するためのものなのだ。

たとえば、この店舗が実在したならば、ユーザーと店舗側がどのように変わるのかを紹介してみよう。


① RFIDでどこでも在庫チェック

オープンイノベーションラボの店舗内にある商品にはバーコードと同じように1点1点にRFIDタグがついている。
このRFIDタグは製品の生産工程から添付され、消費期限や各工程の生産管理者などの情報が入力されている。
この仕組みを、ユーザーが利用できれば、売り切れ寸前の新商品の店舗在庫をスマホからチェックすることも可能になる。コンビニ商品の中には売り切れ必至な期間限定品や、「売れ行きが良すぎて販売中止」になる物も多いが、外部からの検索が可能になれば、店舗外からユーザーを誘導して購買に結びつけることができる。
また、商品1個1個の消費期限に合わせて値段を変えるダイナミックプライシングでオトクな買い物ができるようになるだろう。

たとえば、「昼休みをとるのが遅くなっても弁当が残っているコンビニをスマホで調べて直行する」ことや「期限切れ間近なお弁当のセール目当てでコンビニに行く」というようなことも可能だ。


また、店舗側がRFIDタグの導入によって得られるメリットは、1個1個の商品の位置や個数を把握することができることだ。店舗運営をしていると一定期間ごとに発生する大規模な棚卸し作業や、何らかの不良品が出荷されてしまった場合の回収作業から開放されるメリットは非常に大きい。


また、店舗内でユーザーがどのような組み合わせで商品を手に取り、棚に戻しているのかをカメラ無しで検知できるので、混雑して見通しが悪くなった店内でもユーザーのきめ細かい行動分析が可能だ。


② 大型サイネージと連動した「スマート商品棚」

オープンイノベーションラボの賞品棚には大型サイネージが設置され、個々の商品の価格が書いてある棚札もサイネージ化、電子ペーパー化されている。

大小型のサイネージや棚札で個々の商品情報や価格などをユーザーの挙動に合わせてインタラクティブに表示可能。この写真では手にとった商品についての詳細な説明が表示されている。

これによってユーザー側が得られるメリットとしては最適な商品情報を得ることができることだろう。先程、スマホでセール情報や商品在庫を検索するサービスや割引情報の提示するサービスを例に挙げたが、店舗に入ってからもスマホを使って商品を探すというのは非常に不自然だ。

よりスムーズな購入体験を設計するには、スマホから視線を上げ、店舗内を見渡して買い物できるような環境づくりは重要だろう。

また、これによる店舗側のメリットは、先程のRFIDタグやカメラ、センサーなどから取得したユーザー情報から、最適な情報を提示することによって生じる売上の増加だ。
また、サイネージが広告スペース化されることで、店舗が広告収入を得ることができるかもしれない。


③ 行列なしのスマートレジ

オープンイノベーションラボでは様々なレジを検証中だ。
中国などでも盛んなQRコードでの決済や、バーコードスキャンが簡単で、袋詰を自動で行ってくれるレジロボ。RFIDタグとスマホを使ったスマート決済など、『購入体験を妨げない決済』を目指して様々な手段を研究、改善しつづけている。

袋詰めと同時にRFIDで、検品してくれるシステム(左※)や、スマホでチェックインし、ゲートを通り抜けて生産するシステム(右)、その他、バーコードリーダー付きのかごで検品するシステムなど、幾通りも並行して開発している。

それだけ多くの手法を検証しつづけているのは、「レジ周り」コンビニの中で最も課題が多い場所だからだ。

レジ待機列はユーザーにとって大きなストレスだ。朝昼のピークタイムには『待つくらいならコンビニ以外で食事を』と店を出てしまう人も多いだろう。
また、待機列によって視野が阻まれ、望みの商品棚に行き着けないこともある。
ユーザーがこれらのストレスから開放されるメリットは非常に大きい。

店舗側のメリットは、レジ待機列からのプレッシャーや、違算チェックなどのストレスの軽減だ。作業量が減ることで時間的な余裕が生まれることや、対応すべきユーザー側のストレスが減っていることにより、のびのびと上質な接客業務にあたることができるようになるだろう。

QR決済や、交通系ICカード、クレジットカードなど、今後も生まれるだろう多くの決済手段に、ユーザーがどのように対応していくのか、バーコードに変わり、RFIDがどのように各メーカーに普及していくのかなど、レジ周りの技術は多くのステークホルダーの状況に制約される。そうした背景により生まれる過渡期をどのように対応していくのか、目が離せない分野になるだろう。

※ローソンパナソニック前店での実証実験映像よりキャプチャ(パナソニック公式動画)


④ 多言語OKのロボットコンシェルジュ

いまやコンビニは公共料金等の窓口業務や、通販の受け取りなど様々な業務の窓口にもなっている。そのため、スタッフのオペレーションは複雑極まりない。しかし、今後はそういった業務の一部をロボットから受けることが増えていくかもしれない。

複雑なオペレーションの補助や、マニュアルのペーパレス化などにも可能性が見えるコミュニケーションロボット。実証実験ではSOTAだけでなくロボホンなども検証されており、店舗形態によって、様々な形のロボットが導入される可能性がある。

これにより、ユーザーは混雑時や狭い店内でも多様なサービスを受けることができるようになる。店内での小包の出荷など、伝票記入に時間がかかるサービスで後ろからプレッシャーを受けたり、記入したあとに「この列に並び直すのか。。。」とぐったりした経験がある方には嬉しいサービスだろう。

店舗側のメリットとしては、こういった卓上サイズのロボットを使いこなすことで店舗面積の有効活用できるだけでなく、スタッフのトレーニング資料のペーパレス化や多言語対応にも期待がかかる。

AIの進化により、複雑な接客オペレーションのサポートや代行に及んでいくことも期待できるだろう。


⑤ あなたの街にマッチした店作りをする店舗内行動分析

ローソンでは毎日800人以上のユーザーがレジを通過する。しかし、レジ以外でのユーザーの行動は殆どわかっていないのが実情だと言う。
しかし、①-④の施策などでは様々なセンサーやカメラ、タグ、ユーザーのスマホなどを通して、ユーザー行動をセンシングしている。
このように、実空間からIoTなどの技術で得たデータを情報空間上で整理、統合することで、シミュレーションやテスト、リアルタイムな施策策定などに活かすことを「デジタルツイン(デジタルの双子)」という。そしてローソンでは、この技術を活かすことで、『より買い物をしやすい店舗づくり』をしていきたいのだという。

手にとっただけで戻されてしまった商品や、入店者の動き、属性などの情報を他のビッグデータと組み合わせ、より良い店舗づくりに活かす。近年盛んなエッジ側での処理を高度化することで個人情報などに関しての問題もクリアできそうだ。

この施策が全国の約1万5千店で行われれば、店舗から吸い上げられたデータから、立地や客層に合わせた最適な店舗やプロモーション、サプライチェーンを設計できるようになるだろう。
「どの街の店舗でも一定したサービス」を得られることが特徴と言えるコンビニだが、データを活かしたシミュレーションやABテストを繰り返すことで「それぞれの街に最適化された店舗」としてより高いクォリティのサービスを提供していこうという取り組みだ。

これで得られるユーザーメリットは、「よりスムーズでストレスの無い購入体験」という漠然とした物になるかもしれない。
たとえば、混雑がちょっと緩和される、好みの商品の品切れが少なくなる、接客のクォリティが上がる、といったようなことだ。
しかし、①-④で挙げたようなテクノロジー的にトガった施策を導入するにあたって、どうしても歪になってしまいがちな購入体験を受け入れやすい形でユーザーに着地させなくてはいけない。

そのためには細やかにユーザーの挙動をすくい上げ、店舗側でイメージしやすい形に統合し、施策を考えていくサイクルを支える屋台骨として、デジタルツイン店舗のようなシステムが必須だと言えるだろう。

このように様々な未来を想像し、実際に試作、体験してみることで価値を検証する。
それがローソンオープンイノベーションラボだ。

次回は、ローソンがこれらの技術を導入して目指す「未来のコンビニ」の方向性や、その開発のために必要なオープンな開発体制づくりについてお伝えする。

外部リンク
CEATEC 2018内ローソン展示 IoTタウン2018

【IoT業界探訪Vol.25】ローソンの考える未来のコンビニの姿とオープンイノベーション

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梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

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