ソフトバンク コマース&サービス(C&S)は10月16日、家電メーカーがIoT家電製品を開発するためのモジュールやSDKを含めたクラウドサービス「Tuya SMART」を、各種機器メーカーに向けて販売することを発表した。海外でIoT化モジュールを既に展開しているTuya Global Inc社と戦略的なパートナーシップを締結した。また、プラススタイル(+Style)はその「Tuya SMART」を活用したIoT家電、3製品を発表し、年度末までに15種類以上のIoT製品をラインアップする予定だ。
+StyleがIoT家電3製品を発売
+Styleは従来、クラウドファンディングなどを中心にIoT市場の開拓をしてきたが、この度分社化し、IoT製品のメーカーの顔も持つことになる。今回+Style製品として発表したのはロボット掃除機、スマート加湿器、スマートアロマミストポットの3製品。本日よりAmazon、Yahoo!ショッピング、+Styleのショッピングサイトで予約を開始した。これらすべての製品はスマートフォンのアプリで操作できるほか、スマートスピーカーの「Amazon Echo」や「Googleホーム」シリーズによる音声での操作(電源オン/オフ)に対応する。
+Styleは今後、年度末にかけて15製品以上のIoT機器をラインアップしていく計画で、すべての製品がスマートフォン用の+Styleアプリで操作が可能だ。
また、家庭への設置作業が心配なユーザーには家庭に訪問して設定代行する訪問設置サービスも行う。訪問設置サービスは有料で16,200円だが、キャンペーンとして先着200名まで980円で提供する(+Styleのショッピングページから申込み)。
ソフトバンクC&Sは一般の家電をIoT家電化するモジュールを販売
ソフトバンクC&Sと+Styleは報道関係者向けの説明会を開催し、市場性や製品の特長、今後の狙いなどを発表した。
ソフトバンクC&Sはこれまで流通や小売りを得意とし、Bluetoothトラッカー、なくしたものを探す「Tile」、スマートスピーカー対応する家電コントローラ、STEM教育や英語学習ロボットなどの卸や販売を行ってきた。そして、ここ数年は、IoT関連製品に特に注力している。
しかし、同社の上席執行役員、瀧氏によれば「IoT市場の立ち上がり(普及)が、海外の先進国に比べて日本は遅い」とした。また、海外ではIoT機器やスマートホームの普及の核となっているスマートスピーカーに対しても「日本ではまだ認知も利用も、使用の意向ともにまだ低い」と語った。
その理由として、消費者からは「便利さがわからない」「使い方が難しそう」、メーカーからは「市場規模の拡大の予想が難しい」という声をよく聞くと言う。
そこで、IoT製品をメーカーが簡単に開発できるよう、IoT化のモジュールと開発キットをメーカー向けにリリースする。具体的には既に海外では大きなシェアを持っている中国のTuya Global Inc社と提携し、同社の「Tuya SMART」の技術(モジュールとSDK、プラットフォーム)を日本国内向けにローカライズして提供していく。
瀧氏は「あらゆるものがクラウドに繋がり、データをAIが解析する時代がやってくる。ビッグデータを習得するのはIoTがベースになる。現在はIoT製品に力を入れるとともに、お客様にはIoTライフを安心、便利に、楽しく使ってもらいたい」と語った。
既に海外で実績がある「Tuya SMART」を日本市場に投入
Tuya Global Inc社はかつてアリババ・クラウド(アリクラウド)のサービスを開発したジェリー・ワン氏がCEOをつとめる。「Tuya SMART」関連機器で既に2万点以上のIoT製品化の実績があり、昨年の販売実績が約2,000万台と言う。同社の豊富な製品群を+Styleブランドで一気に商品化し、C&Sはそのモジュールをメーカーに対して提案していく考えだ。
Tuya Global Inc.のMengda Zhao氏は「当社のモジュールやサービスは200ヶ所の国と地域において、1,000万以上のグローバルサービスとして提供されています。クラウドでは毎日200億件以上のリクエストコマンドに対応、処理しています。日本の流通のトップブランドであるソフトバンクC&Sとのパートナーシップにより、日本のスマートホーム関連ビジネスの拡大に貢献できることを確信しています。当社のモジュールを組み込んだ製品はスマートフォンのひとつのアプリで操作したり、Amazon EchoやGoogleホームを通じて音声で操作できます。今後、一般家庭に便利でインテリジェントな家電をたくさん届けられることをうれしく思います」と語った。
+Styleは、既に海外で人気のIoT家電を日本語化することで、一気に品揃えしたい考えだ。+StyleブランドのIoT製品ならすべてをひとつのアプリで操作することができ、スマートスピーカーを通じて音声でも操作できる点が特長だ。仮にユーザーが同社の製品で揃えた場合、起床、外出、帰宅、就寝など、生活に合わせて連動していっせいに制御することも可能になる。
先日「アマゾンが新Echoシリーズ説明会を開催!プリンタスキル連携、Amazon Pay連携、マルチ画面APL、Fire TVアレクサなど盛りだくさん」で既報の通り、AmazonもまたIoT家電に組み込める自社のモジュールを提供しようとしている。同社は家電自体はユーザーがさまざまなメーカーを選ぶので、Alexaプラットフォームのエコシステムでメーカーと連携をはかっていく方針だ。今後IoTの製品化にあたり、家電メーカーもまたどのプラットフォームを利用する製品にするかの選択等を迫られていくことになりそうだ。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。