経産省とNEDOが主催する国際的なロボット競技会と展示会「World Robot Summit 2018」(WRS)が本日開幕した。
ロボット競技会は4つのカテゴリーで競技が行われるが、今回は「ものづくりカテゴリー」について解説したい。
「ものづくりカテゴリー」はどんな競技
「ものづくりカテゴリー」は、17日がタスクボード、18日がキッティングタスク、19日が組み立てタスクの競技が行われる。そして、20日(土)は組み立てタスクとサプライズが行われ、競技の最終結果が出ることになる。WRSの最終日となる21日は、エキシビジョンが予定されている。
ものづくりカテゴリーでは産業用ロボットを使う。ロボットアームによる競技は一見地味だし、私達の生活に関係が薄いように見えるが、実はそうではない。
産業用ロボットは日本のロボティクス技術やメーカーが市場を牽引してきた分野だ。正確で精密、稼働率が高いために日本製ロボットは評価が高い。世界で稼働しているロボットのメーカー上位には日本の企業が多く入っている。
一方、ロボットアームは融通が利かない、突然の変化に対応できない、曖昧な指示では稼働できない、などの課題があり、知能化が求められている、とも言われている。ロボットの社会実装と貢献を目指す WRSとしては、競技でこの課題に向き合い、大きなイノベーションを生み出したい考えだ。
4つのチームずつ、4つのグループにエリア分けされ、各グループの4チームが同時に競技を行う。午前と午後、同じ種目のチャレンジを行って評価点を競っていく。
観客は解説やレポートを聞きながら観戦できるコーナーが設けられているので、ルールや見どころが解らなくてもすぐに理解できる。
WRSの競技等の様子はYoutubeで中継配信も行われている。
https://www.youtube.com/channel/UCPIi946f5n4X2ZRZdrWb8Ng
競技委員長に見どころを聞く
ものづくり競技委員会 委員長 横小路泰義氏にこの競技の見どころと、観客へのメッセージを聞いた。
編集部
この競技の概要と見どころをおしえてください。
横小路氏
17日はタスクボードという種目を行います。この種目は基礎技術を競う、いわば「センター試験」のようなものです。タスクボードが上手にこなせれば、順当に次に進めるでしょう。18日はバラバラに入っている部品を組み上げやすいように取り出して並べる作業「キッティング」を競います。我々は「配膳」と呼んでいます。ばら積みさりた部品を確実にかつ素早く取り出して並べられるかがポイントです。それができれば次は組み立てです。大小さまざまな18種の部品があります。それらをどうやってつかみ、組み立てるのかに注目してください。19日に行います。
ここまでは各チームは事前に作業がしらされていて、練習と準備をしてきていますが、20日は「サプライズ」が用意されています。これは予め練習していない、予期していない事態にどこまで対応できるか、というところを含めて競います。
編集部
競技会場に足を運んでくれる方々にひとこと
横小路氏
会場では観覧スペースを設けています。大画面に4チームの各競技を写し、ナレーターが解説しながら、ゆっくりと競技の進行が見られます。また、もし見たいチームが出場していれば、実際に競技を行っている場所のすぐ近くに行って見ることもできます。これからのものづくりロボットの最新技術をじっくりご覧になって欲しいと思います。
配置マットの上に置かれた部品をタスクボードの上の指定された位置に組み付ける。
部品の認識、ペグ挿入とねじ締め、柔軟部品(ベルト)、ユニバーサルハンド
2. キッティング
容器の中から必要な部品をピックアップし、キッティングトレイの上に置く。
部品の認識、バラ積みピッキング、ユニバーサルハンド
3. 組立
キッティングトレイの上に準備した部品を使ってベルトドライブユニットの組み立てを行う。
新たな生産要求への対応として、事前に告知した部品とは異なる仕様の部品(サプライズパーツ)を組み立てるために迅速かつ効率的な段取り替えも行う。
クリアランスの小さい部品のはめ合い、部品の認識、冶具レスでの組立、柔軟部品(ベルト)、3部品同時組立、微細部品、サプライズ部品への迅速な対応
ものづくり分野の情報はfacebookで確認できる。
https://www.facebook.com/wrsindustry/
WRS ものづくりカテゴリーの公式ページ
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。