今年のCEATECで、バンダイはシャープと連携したIoTサービス製品を参考出展していた。ターゲットの市場はおもちゃ。それはぬいぐるみやロボット、武器などに会話機能を持たせたり、祖母と孫など離れて暮らす家族にとって間接的に絆を感じさせる情報の共有を提供しようというものだ。
バンダイのブースに参考展示されていた製品「IoTコアモジュール」(参考出品)は、7〜8cmのサイズの本体に、マイク、スピーカー、液晶画面、無線LAN、バッテリー等が内蔵されている。このモジュールを通じて、インターネットのクラウドAIに接続し、ユーザーの話す言葉を聞いたり、話すことができる。
ぬいぐるみやフィギュア、ロボットとお話しできる
バンダイらしく、この「IoTコアモジュール」をぬいぐるみなどの玩具にセットすることで、ユーザーにとっては話すぬいぐみに展開・拡張することが考えられている。なお、今回展示のデモでは会話関連全般にシャープのロボホンで培った技術が使用されている。
ぬいぐみだけでなく、武器やロボットに装着して定期的に新しい指令(ミッション)を受けたり、フィギュアや模型、スマートフォン型玩具などに装着してネット対戦やメール遊びなどへの展開も想定されている。バンダイが持つ豊富なキャラクター商品と組み合わせると、さまざまな展開ができそうでワクワクする。
オンラインパートナー
また、「IoTコアモジュール」の想定する用途のひとつ「オンラインパートナー」がデモ展示されていた。
主に女の子が対象だろう2つの可愛いめいぐるみが置かれていて、それぞれハート型の機器をだっこしている。ハート型の機器の中には「IoTコアモジュール」が内蔵されているため、ユーザーはぬいぐるみとの双方向の会話が楽しめる。
グループ機能で会話の情報を共有
グループを組んだオンラインパートナーは会話の内容が共有される。
例えば、「今日の夕飯の献立」「プレゼントに欲しいもの」などの話題で、一方のユーザーAさんがぬいぐるみと「今日の夕ご飯はハンバーグだったんだ」と会話したとする。その内容はクラウドAIにアップされ、もう一方のユーザーBさんのぬいぐるみが「ユーザーAさんの昨夜の食事はハンバーグだったんだって」とAさんの情報をBさんと共有する。
デモでは、AさんとBさんが祖母と孫などの関係であることを想定し、孫の生活の情報を共有することで、共通の話題を通じて繋がりを感じられるという、新感覚のコミュニケーション・トイと位置づける。祖母と孫が電話やメール等で直接、会話したり、コミュニケーションをとるのではなく、日頃話している会話の中からピックアップした情報だけを、ぬいぐるみ(IoTコアモジュールとクラウドAI)を通じて、間接的にゆるく共有する点が新感覚と呼ぶ由縁だ。
こうして共有した話題をもとに、実際に会ったときに「昨日はハンバーグを食べたんだって?」とか「この本を欲しがってたでしょう?」といったように、会話が弾んだり、実生活に繋がる楽しさを狙ったものになっている。
東京にいる孫と、広島で暮らす祖母がぬいぐるみ(IoTコアモジュールとクラウドAI)を通じて情報共有する事例は下記のデモ動画で確認して欲しい。
BANDAI IoT WORKS
「IoTコアモジュール」は単品販売や、玩具とのセット販売を計画している(商品化の時期等は未定)。SDKなどをオープンに公開することで、開発者がこのモジュールを幅広く活用できるようにすることも視野に入れているが、具体的には今後検討していくとしている。
バンダイはIoT関連事業を「BANDAI IoT WORKS」として本格的に展開していくことを発表している。バンダイの IoTのTは「Toys」の「T」で「IoTコアモジュール」も「BANDAI IoT WORKS」のひとつとして、開発が進められていく可能性がある。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。