「引っ越してきたばかりだから、評判のいいお店がわからない」
「ピザの出前、どこに頼めばいいのかな?」
こんな悩みをスマートスピーカーが解決してくれる・・かもしれない。
アパマンが「AIスマートルーム」キャンペーン
全国約1,000以上の店舗で賃貸住宅仲介業を展開するアパマンは、Amazon Echo Spotを採用した「AIスマートルーム」キャンペーンを行うことを発表した。発表会には、Apaman Network(APAMANの子会社、以下アパマン)、システム開発会社のインフォネット、アマゾンジャパンが登壇し、キャンペーンの概要と居住者の利便性の向上などについて語った。
画面付きスマートスピーカーと専用のスキルは、賃貸利用者の生活の利便性をどのように変えてくれるのだろうか。3社のプレゼンテーションから未来像が見えてきた。
アパマンは「スマートスピーカー」と「スマートリモコン」の設備がついた部屋を「AIスマートルーム」と定義し、これらと連携した家電を装備した部屋(賃貸物件)を用意するプロモーションを12月1日より、全国のアパマンショップ店頭で一斉に開始する。また、該当する物件はホームページ上に掲載される物件一覧や詳細画面において「AI Smart Room キャンベーン」を示すマーク(アイコン)が表示されるようになると言う。
特に当初は、音声で家電を操作できるようにすることに加え、引っ越し後の新たな地域での生活に対する不安を解消したり、新生活を支援する地域情報の提供をスマートスピーカーのスキルを通して行っていく考えだ。
スマートスピーカーにはSpotを採用
スマートスピーカーにはアマゾンの円形の画面(ディスプレイ)付きのスマートスピーカー「Amazon Echo Spot」を採用する。スマートリモコンはリンクジャパンの製品を採用する。各製品の導入予定台数は非公開。
「Amazon Echo Spot」は国内では2018年7月に発売になった製品だ。画面には文字や画像を表示することができるため、天気予報の情報を回答するときは関連する晴れマークのアイコンや気温の数値を表示したり、音楽を聞いているときはそのタイトルや歌詞が表示される(一部の楽曲)など、音声のみのスマートスピーカーに加えて提供される情報量が多いことが特長だ。
Amazon Echoシリーズにはもう1機種、「Echo Show」という比較的大きな画面付きのモデルが別に発表されているが、発売は12月を予定していて、まだ購入できない状況だ。
声で家電を操作
家電類はエアコン、テレビ、ルームライト、加湿器などを想定し、スマートスピーカーとスマートリモコンが連動することで、これらの家電を声(音声)で操作することができるようになる。
公開されたプロモーションビデオでは、居住者が「おはよう」と声をかけるだけで、ルームライトがつき、カーテンが開き、テレビのスイッチが入る様子や、声でシャンプーを注文したり、BGMをリクエストするなどの様子が描かれていた。また、部屋の鍵をスマートフォンで施錠/開錠する「スマートロック」も構想の中に入っている。
■アパマンのAIスマートルーム(動画)
スマートルームのデモコーナーも用意
「スマートスピーカー」はユーザーが音声でいろいろなことを指示することができ、「スマートリモコン」は赤外線リモコンで操作できる多くの家電機器に対応できる。これを連携することで、エアコンやテレビ、扇風機のスイッチのオン/オフ、ルームライトの調整などが、手軽にできるようになる。これが「AIスマートルーム」環境というわけだ。
発表会の会場ではデモ用のAIスマートルームが簡易的に用意され、「アレクサ、朝だよ」というユーザーの呼びかけに反応して、カーテンが開き、ルームライトや加湿器がつく実演デモが行われた。
■ AIスマートルームの実演デモ
AmazonとSpotを採用した理由
Amazon Echoシリーズを採用した理由について、CMOの大滝里美氏は「世界的にユーザーが多く、対応するスキル(アプリ)が豊富なこと」を挙げた。
また、Echo Spotを選択した理由は、画面がある機種の方が音声だけでなくテキストや画像など、多くの情報が提供できる点が魅力的だとした。更に、Amazonでの商品の購入、ビデオ通話、天気の確認、音楽の再生など、スマートスピーカーでできることの一例をあげ、これらが音声で手軽に操作できることで、居住者にとってより高い利便性を実現したい考えだ。
Alexaスキル「APAMAN」を提供予定
今回のキャンペーンでは2019年3月公開予定のスキル「APAMAN」(仮名)が用意される予定だ。スキルを開発しているインフォネットの岸本氏は「私達にはチャットボットの開発などをしてきた知見があり、アパマンさんが培ってきたコミュニケーションのノウハウを活かし、入居者の生活に必要な情報、新生活を応援する情報をスキルを通じてユーザーに提供していきたい」とした。
「特に、引っ越しした直後の居住者には不安もあるし地域の情報も上手くつかめない。天気予報や交通情報だけではなく、引っ越し後の手続き情報やTips、困りごとのサポート情報、さらには周辺の飲食店の情報やゴミ出しの曜日、イベント情報など、地域に密接した情報も届けられるようにしたいと考えている」と語った。
スキルは3月にリリースした後、ユーザーの声、アパマンショップなどのフィードバックをもとに、順次、機能追加とアップデートを行っていく予定だ。
Amazonが考える新生活を支援するスマートスピーカー像
アマゾンジャパンは今回のプロジェクトにおいて、「Echo Spot」向けのスキル開発に関するアドバイスを中心に行った。発表会ではアマゾンジャパンのアレクサビジネス本部 本部長の柳田氏が登壇し、「Alexaで便利になる 声を使った優しい暮らしの可能性」と題して講演を行った。
柳田氏はまず、現在までのIT機器のインタフェースの移り変わりや進化について触れた。人間は生まれてすぐに声を出すことができる、もっとも自然なインタフェースである声を使って操作ができるVUI(Voice User Interface)が注目されていて、それを実現するのがスマートスピーカーであることを示唆した。
一方で自然言語の会話の処理は非常に高度な技術が必要であることに触れた。ユーザーが「今日は傘がいるかな?」と言った時、スマートスピーカーが「アマゾンではこんな傘が人気ですよ」と回答したのでは適切できない。ユーザーは今日の天気のことが知りたいことを文脈の中から判断し、Alexaは天気情報と連携し、地域の天気予報を回答していく必要があることを解説した。
こうした中、音声ファーストでありつつ画面でも情報提供を行うスマートスピーカー「Echo Spot」がこのキャンペーンに採用されたことをうれしく思う、と語り、Spotの機能をムービーで紹介した。
■クリーン付きスマートスピーカー Echo Spot新登場
引っ越し後の新生活にはいろいろ戸惑うことが多いが、スマートスピーカーがそれを支援できるだろうとする。例えば、周辺の飲食店の情報を声で確認したり、ピザの出前を注文したり、デリッシュキッチンでレシピを検索して今ある食材から料理をしたり、などの機能を紹介した。
また、引っ越し祝いで訪ねてきた友人とカラオケスキルを使って楽しむ、なんてことは歌詞が表示できる画面付きスマートスピーカーならでは。
入居者の悩みや生活に必要な情報をよく知っているアパマンのノウハウがアプリなどに反映されることで、スマートスピーカーを活用して生活が便利になっていくことに期待を寄せた。
柳田氏は最後に「出前館」スキルも紹介した。出前館スキルでは、ピザ、中華などをスマートスピーカーから音声で出前の注文と支払いまですることができる。トッピングなどの選択は音声での説明よりも画像で見る方が手軽で便利、画面で確認しながら注文できるため、安心感も高いため、画面付きのEcho Spotは最適な選択と言えるだろう。
■出前館スキルのデモ(参考)
(別の発表会でEcho Showで行われたデモ)
アマゾンとしては、今後もさまざまな企業と連携しつつ、Amazon Echoシリーズを通して新しいライフスタイルを提案していきたい考えだ。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。