【高専ロボコン2018レポート】優勝は岩手・一関高専 ペットボトル投げて立てる「ボトルフリップ」で競う

11月25日(日)、東京・両国の国技館にて、高専ロボコンが開催されました。主催は全国高等専門学校連合会、NHK、NHKエンタープライズ。全国の地区予選を勝ち抜いた計25チームが集結しました。

第31回目を数える今年の高専ロボコンのテーマは「ボトルフリップ・カフェ」。これはペットボトルを投げて立たせる「ボトルフリップ」と呼ばれる競技を、手動ロボットと自動ロボットの計2体のロボットを使って行なうというもの。立ったペットボトルの本数に応じて獲得できる合計ポイントを競います。

競技時間は2分間。ペットボトルは500ml以上の大きさ、重さ350gまでのものを最大20本投げることができます。ペットボトルの中には何を入れてもよく、水ではなくシャンプーやゴム、土など、内容物にも違いがありました。


競技会場の様子。台には、固定式と移動式の2つがある。移動式は試合開始前に対戦相手によって場所を動かされてしまう。中央の台の2段目は、高いところにあり難しい分高得点。通常1本1点のところ、2段目は1本につき5点が与えられる。準決勝・決勝は「Vゴール」ルールが加わり、8つの台全てに先にペットボトルを置けば、競技時間終了を待たずに勝利となる。

単に勝ち進むことを目指しているだけではなく、観客を楽しませる工夫があり、観戦していて非常に楽しい競技大会でした。それでは競技の様子をご紹介していきます。


MCには小島瑠璃子さん、司会はNHKアナウンサーの森田洋平さん


圧倒的な強さの「熊本高専八代キャンパス」

地区大会を勝ち抜いてきた優秀なチームが集結した中で、圧巻の試合を繰り広げていたのは、熊本高専八代キャンパスのロボット「Barista」。20点取ったら高得点という中で、1回戦「60点」、2回戦「55点」、準々決勝「55点」と圧倒的なポイントを獲得していきました。作戦は、手動・自動の2体のロボットが合体をして、高得点の2段目の台に一投で大量のペットボトルを立てるというもの。

初戦の様子。2段目に10本(×5点)、1段目に10本(×1点)を見事に立てて、合計60点を獲得した。

熊本高専八代キャンパスと2回戦で対戦した神戸市立高専も、全国大会を通じて2番目の記録となる46得点を獲得しましたが、熊本高専八代キャンパスには一歩及ばず。ハイレベルな戦いでした。残念ながら、熊本高専八代キャンパスは、準決勝から開始された「Vゴール」ルールにより、準決勝敗退となりました。優勝はできませんでしたが優れたロボットに贈られる最高の栄誉「ロボコン大賞」が与えられました。



エンターテイナーだった「都城高専」「和歌山高専」

会場を最も沸かせたのは、都城高専のロボット「曲鯨師!ホエールくん!」でした。これはなんと、手動ロボットが投げたペットボトルを、トランポリン型の自動ロボットがはじき返して立てるというもの。

トランポリンが弾き返すたびに観客席が大きなリアクションをしていた。

残念ながら、2戦中に投げた26投の間では2段目に立てることができず。2回戦で敗退してしまいました。会場を盛り上げた素晴らしいアイディアとチャレンジに、納得の「アイデア倒れ賞」が与えられました。

そしてエンターテイナーという意味では、和歌山高専のロボット「江楠マキナさん」も忘れてはいけません。2台のロボットが合体して巨大なメイドとなり、御膳から台にスライドさせてペットボトルを置いていくというスタイルでした。

合体して巨大なメイドロボットに。

何と言っても見た目のインパクトが圧倒的。2回戦で敗退してしまいましたが、見事「デザイン賞」に輝きました。



決勝は「一関高専」vs「函館高専」

地区大会から含めて、全国124チームの中から決勝へと駒を進めたのは、岩手県・一関高専と北海道・函館高専の2チームでした。一関高専は、二回戦、準々決勝と、30点台を超えるような高得点を記録して見事勝ち進んできたチーム。準決勝ではVゴールも決めています。

一方の函館高専は獲得してきた得点は低いながらも、準決勝では圧勝を続けてきた熊本高専を破るなど、快進撃を続けてきたチーム。決勝はどちらが先にVゴールを決めるかという戦いになりました。ぜひ動画にてご覧ください。

決勝戦の様子

注目の決勝は、一関高専が30秒という圧巻のスピードで8つの台全てにペットボトルを立てることに成功。見事優勝し、喜びを爆発させました。一関高専のみなさま、おめでとうございました!


小島瑠璃子さんから優勝インタビューを受ける一関高専チームの皆さん


技術はハイレベル、そしてエンターテインメント

当日は、技術力の高さに驚かされただけでなく、大会の運営・出場者の皆さんが観ている人を楽しませようとする姿が印象的でした。愛らしいデザインが加わっていたり、ピカピカと光らせたり、わざと高くペットボトルを投げたり、トランポリンを使ったりと、様々なロボットを開発した出場者の皆さん。




試合終了後の各チームへのインタビューで「なぜこのような得点を取るのが難しそうなチャレンジをしたのか」と尋ねられると、いくつものチームが「観ている人を楽しませたい」といった発言をしていました。実際に会場は、大きな歓声と笑い声が響く、一体感のある気持ちの良い雰囲気。エンターテインメントとしてもレベルの高い競技大会でした。

当日の模様は、12月24日(月・休)午前10時05分〜10時59分に、NHK総合テレビにて放映されます。高専生の熱くて気持ちの良い戦いをぜひご覧ください。

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望月 亮輔

1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。

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