ソフトバンクは「5G」(第5世代移動通信システム)の通信やエッジコンピュータの実験、各種IoT機器の展示し、さまざまなデモが行える屋内トライアル環境「5G×IoT Studio」(お台場ラボ)のリニューアルを発表した。同施設は、2018年5月18日にオープン、はじめてのリニューアルとなる。
なお、この施設は通常、法人のみ利用が可能だが、明日の12月1日(土)と2日(日)の二日間は一般の入場者も受付、デモンストレーションを体験できる(入場無料:午前10時~午後6時)。
リニューアルに伴って、エレキコミックのやついいちろうさんとAKB48のチーム4所属の稲垣香織さんがゲストとして登場し、5Gのデモ環境をレポートするYouTubeのライブ配信をお台場ラボから行った。
5GとMECサーバを7つのユースケースで体感できる
今回のリニューアルでは、5Gのネットワーク環境を4.5GHz帯から28GHz帯の周波数を使用したノンスタンドアローン標準仕様に構成を変更した。基本的には法人向けの施設で、5Gを活用したサービスの導入を検討する企業や開発者が、システムを実験したり評価することができる。
5G環境の体験できるデモは、製造業や建設業、エンターテインメント業、放送業、小売業など、業種別の5Gのユースケースをイメージしたデモンストレーションを新たに用意している。
放送業のユースケースとして、ユーザーが時間や場所を問わずに臨場感ある映像を体験することを想定して、360度VRコンテンツを5Gの実験用に展示している。
コンテンツは京都の大江能楽堂で上演された「土蜘蛛」を撮影した映像で、正面、左、左奥、2階席の4カ所から360度カメラで撮影した高精細な8K映像で構成されている。また、立体音響技術を採用しているため、ユーザーが顔を向けた方向に合わせて音の方向が変化したり追随したり、舞台の奥行きを感じる体験が可能(多視点切り替え配信)。
5Gの通信環境が実現すれば、高速大容量・低遅延でデータ通信が可能になるため、ユーザーはこのような高解像度の360度VRコンテンツも遅延なくスムーズな映像で臨場感を楽しむことができる。
「力触覚伝達型遠隔操作」のデモ
他にも、製造業を想定した「力触覚伝達型遠隔操作」のデモが展示されている。デンソーウェーブ製の小型のロボットアーム「COBOTTA」をコントローラ(操縦桿)にして、別の場所に置かれた大きなデンソー製のロボットアームを5G通信で接続して遠隔操作するという内容だ。特長としては、5G通信なら操作の反応性(レスポンス)が良いこと、リアルハプティクスと呼ばれる「触覚」技術を活用して大きなロボットアームがつかんだ感触が小型の操縦アームにも伝わってくるなどがあげられる。
ライブ配信では稲垣さんが実際に操作の体験をしたが、上手に操作できずにつかむはずのものをつかめずに周囲の機材を倒しまくったほか、残念ながら触覚のフィードバックも感じ取ることができなかったと言う。
その他、「リアルタイム動線分析」や、更には新しいコンセプトとなる「おでかけ5G」の展示もあったので、それらは別の記事で紹介しようと思う。
デモの内容を見ても、ソフトバンクは5G環境では、高速・大容量・低遅延・多接続といった基本的な通信性能の向上のほかに、エッジコンピュータ(MECサーバ)との連携を重視していて、それに基づいた提案を行っている点が大きな特徴と言えるだろう。
5Gなら高解像度の360映像をYouTubeで配信できる
今回のYouTubeライブ配信を行ったのはリコーの360カメラ技術と連携したものだ。
SNSや映像配信サービスの拡大により、YouTuberをはじめコンシューマー自らが、映像やコンテンツを配信する需要が高まっているという。そこで両社は、高速・大容量でデータ通信が可能な5Gの普及を見据え、リコーが開発した高精細かつハイフレームレート撮影が可能なコンパクトサイズの360度ライブカメラを使用し、屋外で撮影した臨場感のある360度映像のリアルタイム伝送をYouTubeサーバーへ同時に映像配信する実験を実施し、成功したことを11月9日に発表している。今回のライブ配信は屋内ながら、その技術を活用して実現したものだ。
リニューアルした5Gのデモは前述のように、エッジコンピュータやGPU、VR、360映像と連携したものが多く見られる。5Gならではのレスポンスと大容量を活用したデモになっているのだが、室内でのデモなので5Gで通信していることが視覚的に実感できないものも多い点が残念だ。
とはいえ、次世代通信技術である「5G」は2020年の導入を目指して開発が進められている新技術。AIやIoT、VR等を絡めて、新しいイノベーションが次々にこのラボからも生まれることを期待したい。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。