前年同期比で、アクティブユーザー数が114.1%、加盟店の数は112.3%の増加率、オーダー数に至っては135%の成長率を達成。それが「出前館」だ。出前館はスマートスピーカーで注文し、オンライン決済「Amazon Pay」で支払いまで完了するスキルをリリースしている。いよいよAlexaスキルとAmazon Payで注文から決済まで音声だけでできるようになった。
アマゾンの「音声ファースト・マルチモーダル」
海外に比べて、日本はディスプレイ付きのデバイスが人気だと言う。その意味でアマゾンジャパンは画面付きのAmazon Echoシリーズ「Echo Show」や「Echo Spot」にも期待を寄せる。Alexaは画面の有無に関わらず、音声操作を基本にした開発ツール「APL」(Alexa Presentation Language)をリリースしている(プレビュー版)。
Amazonはこれを「音声ファースト・マルチモーダル」と呼び、音声を主体としながらも、必要に応じて画面表示やタッチ操作など、多様な方法でのユーザーが操作できるインターフェースを持ったスキルの開発支援を行っている。
APLを活用し、更に決算手段となる「Amazon Pay」を組み合わせたスキルが「出前館」だ。
出前館「約1万8千店舗(飲食店)が加盟」
「Alexa Dev Summit Tokyo 2018」の基調講演にゲストスピーカーとして登壇した出前館の中村社長は、「出前館はインターネットの黎明期にスタートしたが、周囲から”出前はインターネットと相性が悪いからやめた方がいい、絶対失敗する”と言われましたが、現在では約1万8千店舗(飲食店)に加盟して頂いて運営しています。更には”出前はやったことがなかった”という店舗の方にも加盟して頂き、月に200店舗以上のペースで増えています」と語った。
アクティブユーザー数は約274万人、110%以上の増加率を達成している。最新の集計では年間オーダー数は2,452万件以上で、同年前期比で32.1%もの成長だ。この理由のひとつとして、Amazon Payなどの決済を含めて、出前はオンラインとの相性がいいと考えている。
3つのオンライン化戦略
日本全体の出前の市場は6千5百億円。オンラインとの相性がいいとは言え、現状ではまだ80%以上のユーザーが電話で注文しているのが実状だと言う。
中村氏は「注文の比率を電話(オフライン)からオンラインへ変えていくことが、私たちの大きな使命」と語った。
スマートフォン用アプリへの移行
そのひとつの施策が、よくある寿司チェーンやピザ店等による投げ込みチラシから、スマートフォン用アプリへの移行だ。その結果、帰りの電車の中からスマホで注文し、自宅に帰るとすぐに温かい食事が着く、着いている、という利用方法が多くなったとした。
オフラインからオンラインへ。投げ込みチラシからの注文→スマホアプリからの注文へ
現金決済からオンライン決済へ
2つめの施策が現金決済からオンライン決済への移行だ。日本では現金決済がまだ多い。現金での会計は店舗にとっても大きな負担となっている。玄関先での現金のやりとりには時間と気を遣うほか、釣り銭は配達員がコンビニなどで自分でくずして準備しているケースも少なくないと言う。オンライン決済なら玄関先で品物を渡すだけで効率的。子どもが品物を受け取る場合もオンライン決済を予め済ませていれば安心で円滑だ。
この施策の結果、現在では40%以上のユーザーがオンライン決済を選択してくれるようになったと言う。
スマートスピーカーへの対応
そして3つめの施策がスマートスピーカーへの対応だ。一日3回食事する機会がある中で、そのうちの一回でも注文してもらえる比率の機会を上げることにビジネスのチャンスを見いだす。例えば、Fire TV Stick 4KがAlexa対応になったことで、家族やカップル、個人で映画やドラマを楽しむ際にも、温かい食べ物とおいしいドリンクの出前を注文する、そういう機会が増えることを「出前館」Alexaスキルのリリースに期待する。
会場からFire TV Stickでピザを注文
中村氏の講演後すぐ、進行役のアマゾンジャパンの柳田氏が「折角なのでFire TV Stick を使って「出前館」で実際に注目してみましょう」と言うと場内が盛り上がった。柳田氏は大画面からピザを注文し、「後で実際にここに届いちゃいますので、皆さんで食べてください」と呼びかけると笑いが起こった。
実際に、基調講演の終了前に、温かいピザが会場に届けられた。
「出前館」スキルのデモの様子(別の発表会で行われたもの)は下記のムービーを参照。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。