三菱地所が小型の業務用清掃ロボット「Whiz」導入に向けた実証実験を公開!その評価は・・・
「ソフトバンクロボティクスの掃除ロボットWhizを100台導入する」
その発言の通り、三菱地所の本社ビルにおいて、バキューム式清掃ロボット「Whiz」(ウィズ)導入に向けた実証実験がはじまった。そして、その様子が報道関係者に公開された。Whizは自動走行は兼ねてから公開されていたが、”清掃作業”を実際に行っているところを見るのは、ロボスタ編集部も今回のデモが初めてとなる。
三菱地所は人手不足に対応した次世代型の施設運営管理モデルを構築するため、清掃用ロボットや警備ロボット、自動運搬車等の実証実験をさまざまな場所で積極的に展開している。
その一環として、場所は大手町パークビル、期間は1月17〜23日の一週間、小型の業務用清掃ロボット「Whiz」を使って、利用場所の形状や床材の違いによる清掃性能や清掃効率の違いを確認し、省人化の効果をはかる考えだ。実証実験の公開にあたり、三菱地所で数々のロボットの実証実験を行っている渋谷氏から、ビルメンテナンス業界や清掃業界が既に深刻な人手不足に直面していること、働き方改革にロボット活用が期待できること、三菱地所が積極的に実証実験を行う理由などについて解説があった。
BrainOSを高く評価
渋谷氏は、既に導入している大型のスクラバー(水洗浄清掃ロボット)「RS26 powered by BrainOS」のOSを含むシステムを高く評価している。「Whiz」には「RS26」と同じ「BrainOS」ベースのシステムが搭載されているため、「Whiz」が発売前にもかかわらず、渋谷氏はこの製品に大きな信頼を置いていると言う。
「RS26」の最大の特徴はティーチングが簡単なこと。一度、人が乗って清掃したコースをRS26は自動的に学習して、次回からは自律運転で清掃しながらルートに沿った走行ができる。人が飛び出したり、障害物があれば停止し、自動的に迂回して掃除を続ける継続性も高い。
実際、渋谷氏は会場でRS26に乗って、即座にティーチングし、自律清掃走行のデモを行ったが、その一連の作業はあっという間のことだった。
■RS26の解説とティーチング、清掃デモ
「RS26とWhizは同じBrainOSを搭載していますので、基本的にはティーチングの簡単さは同じです。Whizの場合は手で押して自律走行ルートを学習できます。そのため、専門のエンジニアを派遣してもらわなくても、現場の清掃スタッフの手でルートの設定をすることができる点が特徴です。現場の作業スタッフの方にも好評です」と渋谷氏は語った。
Whizを載せた自律運搬車とともにエレベータへ
続いて、Whizが実際に実証実験が行われている歓談スペースがある階上へ移動することになった。渋谷氏は人間を追尾して自動でついてくる運搬車をデモ。Whizを載せた後、報道陣があ然とする中、Whizを載せた自動運搬車とともにエレベータに乗り込んで、階上へと向かう。報道陣も後から渋谷氏を追って階上へ。
■Whizを載せた自動追尾型の運搬車とともにエレベータへ
Whizは1回の充電で1500平米を清掃
階上の歓談スペースで行われたWhizの稼働デモ。会場は絨毯に近いカーペット地の床面だった。ここの他に廊下でも行われ、2ヶ所で実証実験が行われている。まずは人手によってWhizを押してティーチングし、その後は自律走行での清掃が行われた。
渋谷氏が評価している点は1時間あたり500平米、1回の充電で3時間稼働できることだ。すなわち、1回の充電で1500平米を清掃できることになる。実証実験でも、製品版Whizではないものの、既にほぼそのカタログ性能は確認できたという。
Whizは掃除の際のバキューム性能にノーマルモードとパワーモードが用意されている。パワーモードだと清掃性能は向上するが、1充電での稼働時間が2時間と短くなる。Whizではティーチングの際、ルートだけでなく、どちらのモードでどの区間を清掃したのかも記憶される。すなわち、ティーチング区間でパワーモードに切り換えて清掃した場所があれば、自律清掃時もパワーモードに切り換えて清掃する仕様となっている。
■Whizの清掃デモ
デモは概ね順調に進んだが、Whizが自律清掃を開始しない場面が見られた。それは周囲を報道陣に囲まれている状態でティーチングすると、報道陣を壁などと認識し、スタート時に報道陣の位置が変わると学習した場所と同じとは認識できずにシステムが混乱してしまうことに起因するようだ。ティーチング時に人がいない状態で学習すれば、後から報道陣に囲まれても、それは人や障害物と認識できるので問題は起こらないと言う。また、カーテンなど揺れる物体についてはナーバスで人と認識して停止する可能性もあるようだ。これら微少なトラブルはまだあるものの、充分に実用的なレベルで既に動作していると感じた。
また、廊下の場合は単調なコースということもあり、全く問題なくデモは進められた。人が通っても通行の障害になる場合のみ停止し、適切に判断しながら清掃している様子がうかがえた。
■廊下でのWhizの清掃デモ ティーチング&自律清掃 (人を検知して停止)
渋谷氏は基本性能とコストパフォーマンスを高く評価した。「実証実験を実際にしてみて、100台の導入予定の判断は間違っていないと確信しました」と語った。自社内であれば社員がいても昼間に自律掃除をすることも充分考えられるだろう。
今後はこの本社ビルで実証実験を行って課題を出したり、効果測定を行った後、4月以降本格的に導入を開始していく見込みだ。現時点では下地島空港(沖縄県宮古島市)や静岡空港などの空港施設からの導入が有力だ。合計で約100台を順次導入することを計画していて、三菱地所グループが所有していたり、運営管理をしている全国のオフィスビル・商業施設・物流施設・ホテル・マンション等で活用する方針だ。
三菱地所がソフトバンクの清掃ロボット「Whiz」を日本初導入、全国のビルや商業施設等に約100台を順次展開予定
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Whiz 公式ホームページ
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。