パートナーロボットの開発を手がけるMira Robotics株式会社は、本日ロボットとヒトによる新しい家事支援サービス「ugo(ユーゴー)」を発表した。ugoはロボットを人が遠隔操作することで、これまで家事支援サービス普及の障壁となっていた心理的ハードルやコストといった問題を解決。今後増え続けると予想される共働き世帯や高齢者世帯に気楽に利用してもらえるサービスを目指している。
同サービスは、利用者宅にロボットを設置し、専門のオペレーターが遠隔操作をして家事を代行するというもの。記者向けの発表会では、「他人を家に入れるという心理的負担なく利用できる点」が利点であると語った。
見た目はロボットでも遠隔操作で人が対応するので、ロボット単体では難しい洗濯や整理整頓をはじめ、細かな要望にもできる限り応えていく。必要な時に必要な分だけ依頼できるので、費用も抑えることができるというものだ。
留守中に安心して利用できるよう、ロボットにはプライバシー保護機能を搭載。利用者はスマートフォンの専用アプリから家事を依頼し、オペレーターは許可なくロボットを操作することはできない。また、ロボットが家事に必要な部分でのみ動くようシステムが適切に制御しプライバシーを守る。事前に提供される間取りデータの中で入れない場所をユーザーが指定することで、そこにロボットが入れないようなシステムになっているといい、下着などについても形状はわかるもののそれ自体は見えないようにフィルタリングされ、書類の文字なども見えないようになるとしている。作業状況はアプリから随時確認が可能だ。
ugoは2本のアームを持ち、高さ調節にも対応した家事支援専用ロボット。身長は通常時は約110cmだが、最長約180cmまで伸びる。資料によれば、幅は45cmで奥行きは66cm、重さは73kg。カメラが3つ、センサー、マイク、スピーカーがつき、LTEとWi-Fiに対応している。連続稼働時間は4時間。階段をのぼることはできないものの、家の中を自由に走り回ることができる。段差などは簡易的なスロープを設置することで乗り越える想定だ。ロボットの開発は昨年2月から始めたという。
ロボット自体はレンタルで提供。通常家事支援サービスでは5万円から10万円がかかるというが、ugoは月額2万円から2万5千円程度で提供を予定。週に数時間程度の家事支援を行なう。
本サービスは段階的な進化を目指している。まずStep1で遠隔操作をにより教師データを蓄積し、Step2では繰り返しのアクションを自動化してコマンド化、Step3ではどのコマンドを利用するかなどの判断やプロセスをAIで自動化していく。
Mira Roboticsは、この家事支援サービス「ugo」のβ版ユーザーを近日中に募集開始、今年8月のクローズドβテストを経て、2020年の本格稼働を目指す。βテストでは、1ユーザーあたり数日間の利用期間を設ける。募集するのは数組から数十組の家庭。対象は東京・埼玉・神奈川・千葉のマンションに住んでいる方で、家庭内に無線LANがある方に限定される。まず提供されるのは、洗濯物を取り出す、干す、たたむという洗濯の一連の動作。アームで持ち上げることができるのは1kg〜1.5kgまでだが、濡れたバスタオルの重さが500gから800gのため、難なく持つことができるという。
サービスを発表したMira Roboticsは、2018年に設立されたパートナーロボットの開発を行なう会社。IoTデバイスの開発を行なう株式会社Mira社から派生した。
昨年パソナとの提携を発表したが、パソナグループには家事代行サービスを提供する会社もあり、そのような会社と知見を共有しつつ、より有益なサービス提供を行なう狙いだ。
パソナグループ副社長の森本宏一氏は、「社会的には産業構造や人口構造が代わり、人生100年時代になった。ワークスタイルやライフスタイルが変化していく時代。私どもは人とロボティクスにより、新しいワークスタイルを創出したいという事と、新しいサービスを提供していきたいということで提携をしました」と語った。
技術アドバイザーとして参画している筑波大学システム情報系准教授 伊達央氏は、「ハードウェアやソフトウェアは進んでいるものの、家事のような指先を使う細かい作業はまだ難しい。その中でMira Roboticsさんは人でやろうとしているところは非常に良い考えだ」と述べた。
松井氏は、家事支援サービスの市場規模は現在は906億円。将来規模は2025年までに2176億円、潜在的な市場は6000億円あると述べ、この「ugo」を通じて「毎日ありがとうと言われるロボットを提供していきたい」と語った。