ソフトバンクグループは「Pepper 社会貢献プログラム」(スクールチャレンジ)における、新たな取り組みを発表した。無償や廉価で提供しているPepperと教材ツールを、契約期間終了後も一定期間、そのままの条件で提供の継続を行うものだ。また、プログラミング学習支援ツール「Robo Blocks」を3月にアップデートして、大幅に機能の強化もはかり、同時にプログラミング教育以外でも、学校現場でPepperの活用を促進していく考えだ。なお、学習塾や民間のプログミング教室に向けてテキスト教材なども新規に開発する。
Pepper 社会貢献プログラムとは
いよいよ2020年から小学校でプログラミング教育の必修化がはじまる。将来に向けてコンピュータスキルやサイエンティストの育成を社会としてはかっていくためだ。
ソフトバンクグループは、このプログラミング教育の必修化に先駆け、小中学生の論理的思考力や問題解決力、創造力などの育成に貢献することを目的に、Pepperを活用したプログラミングの授業を無料、または廉価で提供する「Pepper 社会貢献プログラム スクールチャレンジ」を2017年4月から行っている。
また、その成果を発表する「プログラミング成果発表会」を本年も2月10日に東京、汐留で開催した。
約600校の授業でPepperが活躍中
同社の発表によれば、今まで「Pepper 社会貢献プログラム スクールチャレンジ」には全国600校が参加していて、これまで2万2千回以上の授業が実施されている。
「Pepper 社会貢献プログラム」の継続学習
「Pepper 社会貢献プログラム」初年度に参加を募った学校に対してのPepperと教材の無償提供は2020年3月末に終了を迎えるが、引き続き継続して利用したい学校については、その2022年3月まで無償の貸し出しを継続する。
また、2018年度の「Pepper 社会貢献プログラム2」では廉価での提供を行っているが、そちらも終了時期に併せて、同じ条件で継続して利用することができるように配慮する(最長3年間)。
授業支援ツールの「Robo Blocks」の強化
プログラミング教育の実施については大きな課題が学校側にものしかかっている。それはプログラミングを教えられる教師やそのスキルが不足していることだ。それを支援し、かつ、子ども達に親しみやすいプログラミング環境を提供するため、「Pepper 社会貢献プログラム」ではPepperをプログラミング動作させるための支援ツール「Robo Blocks」(ロボブロックス)を提供している。そのツールを大幅にアップデートして、多様な機能の追加をはかる。アップデートは2019年3月に実施される予定。
「Robo Blocks」の主なアップデートの内容は次のとおり。
IoTチャレンジとの連携
「IoTチャレンジ」は、Pepper 社会貢献プログラムの参加校に対して提供する、Pepperと「micro:bit」を連携したプログラミング教育プログラムのこと。センサー類とPepperを接続し、センサーからの情報をPepperに収集したり、それによってPepperを反応させたり、動作させるプログラミングができる。小学校新学習指導要綱の理科に対応するもの。「Robo Blocks」がこれに対応した機能追加を行う。
WEB APIとの連携
「Robo Blocks」にWEB APIと連携した機能を実装する。これによって、例えば、外部の天気予報情報提供サイトから情報を取得して、それに対応してPepperに会話させることなどができる。また、ネットワーク上のコンテンツとの情報のやりとりや双方向での利活用を前提にしたプログラミングが可能となる。これは中学校新学習指導要綱の技術・家庭科に対応するもの。
JavaScriptに対応
「Robo Blocks」がJavaScriptに対応し、独自のブロック作成やコード作成による表示が可能になる。また、効率的にプログラミングのために「ブロック定義(関数)」や「リスト(配列)」などの新ブロックも追加される。
Pepperと大型ディスプレイとの連携
Pepperのタブレットと同じ表示を大きな外部ディスプレイで表示することが可能になる。
「Robo Blocks スクールテンプレート」の提供
「Robo Blocks スクールテンプレート」の提供も行われる。教員が子ども達との授業の中でテンプレート化したものを共有できるようにする。
ソフトバンクが「Pepper 社会貢献プログラム」に参加している学校に対して、授業実施後のアンケートをとったところ、生徒からは「Pepperがいることで授業に興味が持てた」との回答が94%、「Pepperを活用した他の授業も受けてみたい」との回答が93%だった。
また、教師の回答は(Pepperを活用した授業は)「児童・生徒の意欲と積極性を引き出す」が88%となった。
これらの回答を受けて、Pepperをプログラミング教育以外にも活用する方法を充実させる意向だ。そのひとつとして「Robo Blocks スクールテンプレート」を位置づける。これは、教員や子どもたちとの Pepper を介した授業中のやりとりをテンプレート化したもので、他の教員が誰でも簡単に利活用できるようにかることで、Pepperをプログラミング教育の授業以外にも活用することを促進する。
テンプレートは「アイスブレイク」として「自己紹介」、「メインコンテンツ」として「ディスカッション」、そのあと「二択クイズ」を経て「まとめ」など、組み合わせで授業が構成できるようになる予定。例としては下記の通り。
授業の流れを含めてテンプレート化されているので、テキストの一部を追加したり改変するだけで、容易に活用できるとしている。
約20種類のテンプレートを展開する予定で、その第一弾として、スマートフォンやSNSを利用する際のマナーやモラルをテンプレート化した「情報モラル」を3月末に提供する。
教師用指導書の改訂と専用テキストの拡充
Robo Blocksアップデートに伴い、教師用指導書や児童生徒用ワークシートなどの改訂も予定されている。民間の学習塾やプログラミング教室でも活用できる教育用ツールを用意していく考えだ。
民間プログラミング教室や学習塾などで要望が多かった専用テキストを新たに開発する。このテキストは、講座でそのまま使えるパッケージ教材で、現場指導者の授業の準備や実施における負担を軽減し、より多くの子どもたちがプログラミング教育を学べる環境づくりをサポートする。改訂版の教師用指導書と専用テキストも、2019年3月末に提供予定。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。