ロボホンが会話を代行するロボット婚活パーティを実施 サイバーエージェント「人はロボットを信頼し、意思決定に影響を与える」

2月9日(土)、東京の竹芝にて「ロボットが会話を代行する婚活パーティ in 竹芝」が実施された。その広告発表会が報道関係者向けに開催され、現場を模したデモンストレーションと成果発表、知見の共有が行われた。

自分のプロフィールを話してくれるロボットをはさんで向かい合う男女(デモ)



ロボットが会話を代行する婚活パーティとは

ロボットが会話を代行する婚活パーティとは、結婚を希望する男女に出会いの機会を提供する、いわゆる婚活パーティなのだが、対になった男女はひと言も会話せず、シャープのモバイル型ロボット「RoBoHoN」(ロボホン)が自分のプロフィールを代弁して事項紹介と会話を代行くれるという点が通常のパーティと大きく異なる点だ。

当日の実際の様子(主催者提供)

ホームページには下記のように記載がある。

今まで体験したことのない婚活パーティーに参加してみませんか?
自分のプロフィールをもとに、ロボットがあなたの分身となって会話をしてくれます。
目の前に相手がいるのに、ロボット同士が会話をしている不思議な体験。
本人同士が会話するより、お互いが理解できて上手くいくかも!?
緊張して上手く話せない!などコミュニケーションが少し苦手な方も安心して参加できる婚活パーティーです。

参加条件
・男性25歳~39歳、女性25歳~39歳
・独身の方
・申込時にプロフィール項目に入力した方
・当日に顔写真付の本人確認書類をご提示いただける方
・日本語で日常会話に支障なくコミュニケーション出来る方
・注意および禁止事項を守れる方
参加費用
2,000円
(当日はホテルのルームサービスのワンドリンクが付いています)
開催場所
ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ スペシャルルーム

主催者はCiP協議会、協力企業として、JTB、アルベログランデ、サイバーエージェント(特別協力)、シャープ(特別協力)。

サイバーエージェントは、人工知能一般社技術の研究開発組織「AI Lab」が担当した。また、CiP協議会は、東京都竹芝地区を「デジタル×コンテンツ」産業集積の拠点として形成すべく設立された一般社団法人。

■ロボホンによるロボット婚活パーティ(実際の映像)


14組が参加し、うち4組がカップル成立

当日は、公募から一般の参加者が32名がエントリー。二部構成で、第一部がロボットによる会話のみ(人同士の会話は一切しない)、16名が参加した。第二部はロボットによる会話の後で人同士が会話する構成で、病欠などもあって12名の参加となった。結果として、一部が2組、二部が2組の合計4組のマッチングが成立した。

当日の実際の様子(主催者提供)

当日の実際の様子(主催者提供)

■ロボット婚活パーティの例(実際の現場想定のデモ)


社会的な課題とロボットが解決する可能性

一般の婚活パーティの場合、自己紹介や自己PRを数人の男女が入れ替わりながら自身で行っていく。その限られた時間の中で、他の同性よりも選ばれるようにPR力を発揮して、コミュニケーションをとっていく必要がある。そのため、会話やコミュニケーションが苦手な参加者は、なかなかカップルになれないという課題がある。


その点、婚活パーティの場合は、初期のコミュニケーションをロボットが代行する。第一部では完全にロボット同士の会話だけでプロフィールを紹介しながら、相手との相性を見極めていく。第二部はロボット同士の自己紹介で得た情報を元に、少し慣れたところで本人同士の会話を進めていこう、という主旨となっている。



あらかじめ自己紹介シナリオを作成

今回のシステムはサイバーエージェントが中心になって、大阪大学の石黒研究室との連携で開発された。石黒研究室はチャットボットやロボットなどによる対話エージェントによる接客の自動化を研究している。今回はAIは使われていないが、今後は人工知能技術の開発組織であるサイバーエージェントの「AI Lab」とAI対話エージェントの自然対話技術の研究開発がロボット婚活にも反映される可能性はあるだろう。


ロボットの自己紹介文は予め回答したアンケートをもとにシナリオが作られていて、ロボホン同士はそれを紹介し合う。事前のアンケートで共通点を発見し、ロボットが会話をする。会話の中に自慢っぽい長所を盛り込んでも、ロボットによる発言だと嫌味に聞こえない利点があると言う。また、直接効きにくい質問もロボットならやりやすいだろうと推測している。


とはいえ、実際にはロボットは相手の話を聞いているわけではなく、タイミングをはかって相づちをうって、自分の話をするという構成になっているが、一見するとロボット同士の会話が繋がっているように感じたり、本人たちにとってはロボットが自分の気持ちを代って発言してくれていると感じることもあるようだ。


実際の現場映像では、複数のロボホンが同時に話しているため、周囲から見ていると会話が聴き取りにくいが、ロボホンは次のような内容で会話を進めている。

■ロボット婚活パーティでのロボホンによる事項紹介の例(デモ)


人はロボットを信頼し、意思決定に影響を与える

今回のシステムを開発したサイバーエージェントによれば「ロボットが本人の情報を使い、適切に対話をすると、人はロボットを信頼し、意思決定に影響を与える」という結果が出たと言う。



「自分のロボットを信頼できたか」という問いに対しては平均で7.14ポイント(9ポイント満点)、「自分のロボットの発言に安心感はあったか」には6.93ポイント、と、自分の分身となるロボットへの参加者の信頼感については好感触だった、と分析している。


また、参加者へのインタビューでは「自分のプロフィールやアピールポイントを正しく相手に伝えてくれたことに信頼ができた」との回答が多く、自分の考えと同じ内容でロボットが話したり、相づちをうつと、ロボットに対して愛着を感じるという意見もあったと言う。この点は、媒介者がロボットならでは反応であり、サイバーエージェントによれば、ディスプレイ(アバター)やアンケートの回答用紙(各自が紙を読む)、テープレコーダーなどでも前もって実験を行ったが、愛着の面ではロボットが一番だったとしている。

インタビューでは、ほかに「通常の婚活パーティはたくさん話すと疲れるが、ロボット婚活パーティは疲れない。また、興味あることを勝手に話してくれるのがよかった。」「会話が時間内にしっかり終わるのがいい」「勝手に話してくれるので、何を聞こうか困ることがなかった。」「ロボットの会話から(実際の会話で)質問がしやすい」「名前を言ってくれた時が「私のことを話してくれるんだな」と信頼した」「喋る必要がないので、聞くことに集中して理解することができる。それが心理的に楽」と、いった意見もあった。

■ロボット婚活パーティ 参加者インタビュー(主催者提供)

なお、相手を選ぶ要素として、外見だけでなく、ロボット同士の会話も大きかったこともアンケートで解ったと言う。参加者は見た目より、会話の内容を重視する人も多い。

マッチング相手を選ぶ際に影響した要素を「ロボット同士の会話内容」と「外見の印象」の2軸で調査したところ、いずれにおいても「ロボット同士の会話内容」がマッチング相手を選ぶ際に影響度が高いという結果となった

同社は、今回の知見として「自分のプロフィール情報を反映した内容をエージェントが話すことで、「対話エージェントに対する信頼の醸成に繋がる可能性がある」と結んだ。また、今後は自然な会話を自動生成する自然言語処理の技術や、最適な相槌パターンや返答を行う会話の選択アルゴリズムの開発など、AI技術を組合せて活用していく。それによって、より高い「対話エージェントへの信頼感の醸成」を目指していくことができると考えている、とした。

実際に婚活に苦心している人たちがロボットの支援によって、カップルの誕生が促進されるならば、今後も活用の幅を広げていって欲しい、と感じた。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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